SNS時代の旅行マーケティングにおいて、「旅系インフルエンサー」の存在感は年々増しています。旅行や宿泊に特化した情報を発信し、次の旅行先を探しているフォロワーを多数抱える彼らは、ホテルや旅館にとって非常に効果的な宣伝パートナーになり得ます。
しかし、インフルエンサーであれば誰でも効果的とは限りません。起用方法を誤ると期待する成果が得られないどころか、費用対効果が大きく下がってしまうこともあります。
この記事では、インフルエンサー選びの選定ポイントや優秀なインフルエンサーを効果的に集客へ結びつける実践ノウハウを紹介します。
よくある選定の失敗例
ホテルや旅館がインフルエンサーを選ぶ際、最も多い失敗は「フォロワー数だけで判断する」ことです。
一見フォロワー数の多いアカウントは魅力的に見えますが、必ずしもその人が旅系インフルエンサーとは限りません。
特にトップ層(フォロワー10万〜100万人以上)の中には、旅先ではなく自分自身をコンテンツの中心にしている人が多くいます。フォロワーはその人物のライフスタイルや容姿に惹かれてフォローしているため、ホテルや旅館の情報には関心を持たないケースも少なくありません。その結果、膨大なリーチがあっても、宿泊予約につながる確率は低くなります。
選定で重視すべきポイント
旅系インフルエンサーの起用で重要なのは、「どれだけ多くの人に届くか」ではなく、「どれだけ関心を持つ人に届くか」です。
つまり、認知数よりも「興味・関心層の人数」を優先するという考え方です。
特にチェックしたいのは次のポイントです。
● 宿泊体験を専門的かつリアルに発信しているか
● 写真や動画だけでなく、滞在中の細かな魅力まで言語化しているか
● フォロワーの旅行先選びに影響を与えられるか
こうした視点で見ると、フォロワー数は数千〜数万人規模でも、高い集客効果を発揮するケースが多くあります。
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効果的な施策の方向性
旅系インフルエンサーの活用は、単発の露出だけで終わらせず、予約行動を取る可能性が高い層に情報を継続的に届けることが理想です。
例えば、同じ施設に季節を変えて再訪してもらい、春は桜、夏はアクティビティ、秋は紅葉、冬は温泉というように、季節ごとの異なる魅力を定期的に発信してもらう方法があります。これにより、フォロワーの中で「いつか行きたい」から「次の旅行先はここにしよう」へと意識が変化します。
優秀なインフルエンサーの共通点

予約につながる旅系インフルエンサーの特性をピックアップしてみましょう。
1. 旅行・ホテルへの強い興味と豊富な経験
旅行好きで、自然とホテルや旅の情報を発信し続けている。好きだからこそ続けられ、発信にも説得力が宿っている。
2. フォロワー行動変容への意識の高さ
投稿後に「予約しました!」というコメントが届くとモチベーションが高まるタイプ。有名でないホテルでも、的確な発信で集客効果を生み出せる可能性があります。
3. 撮影と投稿の工夫
高額な機材を使わずとも、スマホだけでも十分なクオリティを実現できる。色味やトーンを統一するためLightroom等で加工する。国内外の人気アカウントから構図や撮影方法を学ぶ勉強熱心なタイプ。
4. 投稿戦略の最適化
アルゴリズム変化を分析し、複数枚投稿から1枚投稿へ切り替えるなど柔軟に対応。
投稿頻度や時間帯も試行錯誤し、閲覧数が伸びやすい朝やお昼休みの時間帯など工夫している。
5. ストーリーズの活用
案件以外でも日常的に滞在先や旅行の様子をストーリーズで発信し、フォロワーの関心を持続。
説明文も詳細に書き、ホテルの魅力を丁寧に伝える姿勢がある。
6. フォロワーとの関係構築
コメントやDMへのリアクションを大切にし、共感ベースのつながりを築く。
ターゲット層に合わせた「いいね」戦略で、新規フォロワーも自然に増やしている。
7. マーケティング視点の理解
自身がマーケティング職でもあるため、保存数やターゲット層の傾向分析などデータにも敏感。
ハッシュタグの活用法や検索導線にも気を配っている。
起用時の3つのポイント
ホテルや旅館が旅系インフルエンサーを起用する際は、次の3点を意識すると成功確率が高まります。
1. フォロワー数ではなく影響力の質を重視する
ターゲット層とインフルエンサーのフォロワー属性が一致しているかを確認します。
2. 継続的な施策設計
季節やイベントごとに複数回発信してもらうことで、興味から予約への移行を促進します。
3. 自由度と環境づくり
発信内容を細かく縛りすぎず、インフルエンサーの個性を活かせる環境を用意します。
旅系インフルエンサーの活用は、単なるSNS露出ではなく、「行きたい」を「行く」に変える力を持っています。優秀なインフルエンサーは、自らの経験や感性をもとに、施設の魅力を自然かつ効果的に伝えることができます。ホテルや旅館がこの力を理解し、適切に起用できれば、集客とブランド価値の両面で大きな成果を得られるでしょう。
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ホテルが参考にすべきインフルエンサーマーケティングの実践ノウハウ
旅系インフルエンサーの活用は、単発の露出ではなく、中長期的に予約増加やブランド価値向上につなげるための戦略的取り組みが必要です。ここでは、ホテルや旅館が実務で参考にできる選定基準、運用方法、そして成果を最大化するための工夫をまとめます。
【選定】ターゲットに刺さるインフルエンサー選定基準
最も重要なのはフォロワー属性と施設のターゲット層が一致しているかです。
例えば、首都圏在住の20〜30代女性旅行者を集客したい場合、同年代かつ国内旅行を積極的に発信しているインフルエンサーが最適です。フォロワーの年齢層・性別・居住地・興味関心を分析し、自社の狙う顧客層とどれだけ重なるかを見極めましょう。
フォロワー数が多くても、ターゲットがずれていれば効果は半減します。「有名だから」ではなく「その施設の潜在顧客に強く刺さるか」を基準にすることが肝心です。
【コンテンツ作り1】UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
インフルエンサーが生み出すコンテンツはもちろん重要ですが、実際の宿泊者が投稿する写真や動画も強力な資産になります。
こうしたUGCを公式アカウントやWebサイトに掲載することで、「リアルなお客様の声」として信頼性と説得力が高まります。
例として、Instagramで特定のハッシュタグを設定し、宿泊者に投稿を促すキャンペーンを行えば、コンテンツの量も増え、施設の露出が自然に拡大します。
【コンテンツ作り2】消費者目線のコンテンツ
写真や映像は美しさだけでなく、「自分が泊まったらどう感じるか」を想起させることが重要です。
客室や食事、アクティビティの紹介だけでなく、チェックインから滞在中の動線、過ごし方のモデルケースをストーリーとして発信すれば、フォロワーは具体的に自分の旅をイメージできます。
また、館内の隠れた魅力やスタッフのホスピタリティなど、公式サイトには載らない情報を発信することで差別化できます。
【SNS運用1】エンゲージメントの数値評価
フォロワー数はあくまで目安にすぎません。本当に効果的な発信者かどうかは、いいね率・コメント率・やり取りの深さで判断します。
● 平均エンゲージメント率(いいね+コメント)÷フォロワー数
● 投稿後のコメントへの返信率
● 保存数やシェア数(旅行意欲の高さを示す指標)
これらを定期的にチェックし、次回のキャスティングや契約更新の判断材料とします。
【SNS運用2】目的に応じたSNSアカウントの運用方針
ホテルのSNS運用は大きく2つの方向性に分かれます。
● ブランディング重視型
世界観やブランドストーリーを統一し、写真・動画のトーンや色味を揃えて投稿。高級ホテルやリゾートに多く、長期的なファン作りを目的とします。
● 販促重視型
キャンペーンや宿泊プランの情報を中心に、短期的な予約促進を狙う手法。クチコミ型発信やUGCの積極活用が有効です。
どちらを優先するかを明確にし、コンテンツ制作やインフルエンサーの選定基準に反映させることで、戦略のブレを防げます。
【SNS運用3】運用アウトソースの活用
SNS運営は日々の投稿だけでなく、企画、キャスティング、撮影、分析と幅広い業務が必要です。社内で完結させるのが難しい場合は、実績のあるSNS運営代行やマーケティング会社に任せるのも有効です。
KPI(重要業績評価指標)を予約数や公式サイトへの流入数に設定し、成果が数値で見える形にして委託することで、投資対効果を明確にできます。
【SNSの更なる活用】OTA依存脱却の動線設計
多くのホテルが抱える課題が、OTA(オンライン旅行代理店)への依存です。
インフルエンサー施策を行う際は、SNSから公式サイト→直接予約への流れをコンテンツ内で自然に誘導しましょう。
例えば、ストーリーズにリンクスタンプを貼り、「フォロワー限定プラン」や「SNS限定割引コード」を設置すれば、公式予約のインセンティブになります。
【SNS運用の効率化】プロモーションのDX化
インフルエンサーへの依頼数によっては業務効率の改善も必要になります。インフルエンサーのキャスティング、投稿依頼、効果測定までをワンストップで管理できるツールやプラットフォームの導入を検討しましょう。これにより、複数のインフルエンサー施策を同時に走らせても、管理や分析の負担が軽減されます。
また、AI分析を活用すれば、投稿ごとの反応傾向やコンテンツタイプ別の予約誘導率を可視化でき、次回施策の改善に役立ちます。
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まとめ
旅系インフルエンサー施策の成否は、「誰に発信してもらうか」「どんな導線で予約につなげるか」で決まります。
フォロワー数という表面的な数字ではなく、属性やエンゲージメントの質に目を向け、UGCやブランディング戦略と組み合わせることで、OTA依存から脱却し、直接予約比率を高めることが可能です。
ホテルや旅館がこの考え方を取り入れれば、SNS施策は単なる広告ではなく、持続的に稼ぐ集客資産に育っていくでしょう。
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