旅行者がホテルや旅館を選ぶ際、今や口コミを確認するのは当たり前の行動になりました。
Googleマップの評価やOTAのレビューは、宿泊施設の料金や立地と同じくらい、あるいはそれ以上に強い影響を持ちます。特にGoogleでは、星評価が4.0と4.5では大きな差があり、4.5以上を維持できる施設は安心して選ばれる傾向があります。
また、インバウンド市場では、TripAdvisorのランキングが予約数を大きく左右します。特に海外からの旅行者は「ランキング上位=信頼できる宿」と捉える傾向が強いため、露出度そのものが集客効果を生みます。
今回は、ホテル・旅館の口コミ対策について紹介します。
口コミ対策の3つのポイント
口コミ対策で重要なポイントは、以下の3つです。
● 定期的に新しい口コミを集める(鮮度が評価に反映される)
● 宿泊者に写真投稿を依頼し、リアルな体験を発信してもらう
● ネガティブな口コミにも誠実に返信して改善姿勢を示す
1. ポジティブな口コミ集めは継続的に
ホテル・旅館の口コミ対策は、良い口コミが何件か集まったら終了ではありません。そのため、短期間に一気に口コミを集めるよりも、継続的にポジティブな声を積み重ねる方がアルゴリズム上有利です。
そして口コミは単に点数の高低だけではなく「直近の声」が重視されることも特徴です。過去に低評価があっても、最近の口コミで改善が見られれば予約をためらわない層も多く、継続的に前向きな投稿を積み重ねることが重要です。
2. 写真投稿でリアルな体験イメージに写真投稿を依頼

印象に残る口コミは、写真+文章のセットです。
宿泊施設のHPに載っていない写真を見ることができるほか、具体的な体験と感情を伝える口コミは、読者に自分が体験したときのことをイメージしやすく、「自分も体験したい」と思ってもらえます。
ネガティブ口コミへの対処法
1. ネガティブを信頼に変えるには
ネガティブな口コミは避けられませんが、適切に対応することで信頼を損なわず、むしろ高めることも可能です。
実際に旅行者は「問題があったかどうか」よりも「問題にどう対応したか」を重視します。そのため、クチコミ返信の定型文を用意しておくと効果的です。
清掃に関する指摘への返信例:
「この度は清掃面でご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。担当チームと改善策を共有し、再発防止に努めております。」
接客への不満への返信例:
「スタッフ対応に関するご指摘を真摯に受け止め、今後の研修に反映してまいります。貴重なご意見をありがとうございます。」
こうした誠実な返信は、不満の緩和だけでなく、第三者に「信頼できる施設」という印象を与える効果もあります。
続いては、悪質口コミへの削除申請や、削除できない口コミを信頼構築に変える方法、さらにデータ分析を活用した改善サイクルについて解説します。
2. 悪質な口コミをされた場合
悪質な虚偽口コミを削除依頼の方法

口コミの中には「実際に宿泊していない」「虚偽の内容」「誹謗中傷目的」といった悪質なものも存在します。こうした投稿は適切に処理しなければ、施設の信頼を不当に損なう可能性があります。
削除申請の方法はプラットフォームごとに異なります。
● Google:ガイドライン違反として報告
● TripAdvisor:管理画面から不適切レビューを通報
● OTA:サポート窓口に証拠を提出し削除依頼
ただし、削除が認められるのは規約違反の場合に限られます。それ以外は、事実を丁寧に補足する返信が最善策になります。
悪質な虚偽口コミを削除依頼した事例
茨城県の施設では、開業前に「接客が最悪」と虚偽の口コミを投稿されましたが、Googleに削除申請し無事に削除されました。また、関西の高級旅館では「レストランの入り口に灰皿が設置されている」と誤った口コミに対して事実誤認である旨を説明し、OTA側で削除が認められたケースもあります。
悪質な口コミの削除申請が通らなかった場合
削除できない口コミでも、対応次第で信頼構築の機会に変えられます。
● 丁寧な謝罪と改善策の提示
● 他の旅行者が安心できる具体的取り組みを発信
● 改善状況をSNSや公式サイトで共有し透明性を示す
これにより「問題が起きてもきちんと対応する施設」という印象を与え、安心感につながります。
実際、ある消費者調査のデータでは、ネガティブなクチコミを確認した場合でも、下記のような印象を持った際は予約をすると回答しているユーザーも多いと報告されています。
● 宿泊施設からの丁寧な返信があり、誠実な対応が感じられた場合
● ネガティブな内容が最近の口コミでは改善されているように感じた場合
● 他の口コミの評価が全体的に高かった場合など
口コミ対策と現場の人材マネジメント
口コミは単なる声の集まりではなく改善のヒントであり、口コミ改善の本質は「現場の改善サイクル」にあります。
● ネガティブ口コミが出た場合、原因スタッフを特定する
● 同じスタッフが繰り返し問題を起こしていないか確認する
● クチコミ対応や改善状況を人事評価に反映させる
大規模なホテル事業者の中には、口コミに特化した施設長会議を定期的に開催し、横断的に情報共有している事例もあります。
スタッフに過度なプレッシャーを与えるのは逆効果ですが、「口コミ改善は自分たちの成果に直結する」と認識してもらうことは意識向上につながります。
このように、ポジティブな口コミはマーケティングに転用し、ネガティブな声は改善の起点にすることで、集客と品質向上を同時に実現できます。
口コミ管理ツールの導入も検討を
宿泊施設にはGoogle、TripAdvisor、OTA、SNSなどさまざまな経路から口コミが寄せられます。これを手作業で確認し続けるのは難しく、見落としや対応遅れはブランド毀損につながりかねません。
そのため有効なのが「口コミ管理ツール」の導入です。複数サイトの口コミを一括管理でき、新規投稿の通知を受け取って即座に対応できるほか、AI分析によって清掃・食事・接客などをカテゴリーごとに分析し、ネガティブ要素や改善点を自動で抽出できます。
クチコミ管理ツールの導入は、飲食業界で先行して進んでいます。今後、宿泊業界も導入の流れが進むでしょう。
特に多店舗展開するホテルやチェーン事業者にとっては、こうしたツールを活用することで口コミ対応のスピードを大幅に向上でき、収益へのインパクトも大きくなります。
ある温泉旅館では、口コミ管理ツールを導入した結果、返信スピードが改善に改善され、スタッフの意識改革が進み、結果として評価点数も上昇、予約数増加につながっている事例もあります。
まとめ
● 悪質口コミは削除申請、それ以外は誠実な返信で対応
● ネガティブ口コミを「改善姿勢の証」として信頼に変える
● 人材評価や会議体で口コミを組織運営に組み込む
● データ分析を通じて改善サイクルを回し、口コミを資産化する
口コミ管理は仕組み化すれば負担なく継続でき、改善と集客の両立が可能になります。現場スタッフ一人ひとりの対応が、最終的には施設全体のブランド価値を押し上げる力となります。














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