ホテルや旅館の集客手法は年々多様化し、OTA(宿泊予約サイト)の手数料の高さや差別化の難しさから「自社サイトからの予約を増やしたい」というニーズが高まっています。
そこで注目されているのが、インフルエンサーを活用した集客施策。
特に、旅行や宿泊に特化した「旅系インフルエンサー」は、広告感を薄めつつ自然な形で施設の魅力を発信できるため、ホテルや旅館にとって非常に有効なパートナーとなると注目されています。
本記事では、ホテルや旅館がインフルエンサーをどのように活用すれば売上・集客向上に結びつけられるのかを、成功している施設の特徴とともに紹介していきます。
インフルエンサーがホテル集客で注目される理由
1. インフルエンサーとは?
「インフルエンサー」とは、単なる情報発信者ではなく、影響を与えるという語源が示すように、フォロワーの感情や行動に直接影響を与える存在です。彼らは日常生活や趣味、専門分野を継続的に発信し、その過程で築いた信頼関係をもとに「この人が勧めるなら体験してみたい」と思わせる力を持っています。
マーケティングの視点でいえば、インフルエンサーは「良質な口コミを持続的に生み出す人」と表現できます。従来の広告は一方的な情報発信に過ぎませんでしたが、インフルエンサーの投稿は“信頼できる友人のおすすめ”に近い感覚で受け取られるため、信頼性と説得力が格段に高いのです。
ホテル集客においては、この「信頼感」が極めて重要です。宿泊という行動は決して安くない消費行動であり、最終的な予約を後押しするのは「安心できる体験談」だからです。
2. フォロワーは宿泊施設にとっての潜在顧客
インフルエンサーのフォロワーは、ホテルや旅館にとって大きな潜在顧客層です。例えば、旅系インフルエンサーが温泉旅館に宿泊し、館内の写真や体験談を投稿した場合、その情報はフォロワーのタイムラインに届くだけでなく、シェアや保存を通じてさらに拡散されます。
広告はターゲットを絞って配信できますが、インフルエンサー投稿は“想定外の層”に届くことが多いのが強みです。友人や家族のシェアによって、まったく新しい顧客層に広がることも珍しくありません。
3. 宿泊施設の魅力を視覚的にアピールできる
宿泊業界の特徴である”視覚的な訴求力”を存分にアピールできる点があります。
例えば以下のような動画や映像を顧客層に届けることができます。
● 心地よい雰囲気を感じられる露天風呂の動画
● 非日常を感じるラグジュアリールームの映像
● 彩り豊かな料理の動画
こうしたコンテンツは、フォロワーに「自分も泊まってみたい」と思わせる効果が高く、結果的に予約へと直結しやすくなります。宿泊業界とインフルエンサーの相性が良いのは、この視覚的インパクトと心理的ハードルの低さが理由です。
ホテル集客に強い3つのインフルエンサー
宿泊施設が起用できるインフルエンサーは、大きく3タイプに分かれます。
1. トップインフルエンサー(フォロワー10万〜100万人以上)
芸能人や著名ブロガーなどで、圧倒的な拡散力を誇ります。ただし、起用コストが高く、フォロワー属性が広すぎるため、ターゲティングの精度は下がる傾向があります。トップインフルエンサーを起用するタイミングとしては、ブランドローンチや新館オープンの話題化など、拡散する情報自体の希少性が高い際に爆発力を活用するのがおすすめです。
2. プロフェッショナル型インフルエンサー
美容・グルメ・旅行など特定分野に特化しており、安定した影響力を持ちます。コンテンツの質が高く、トラベル系インフルエンサーはホテルや旅館の魅力を深く伝える継続施策に向いています。
ビュッフェやインクルーシブサービスを豊富に取り揃えている宿は特に相性が良いです。体験型プランや料理コースなど“深掘り型コンテンツ”に強いインフルエンサーが多いので、新しい宿泊プランの開始や季節の変わり目に宿泊プランが切り替わるタイミングで起用するのがおすすめです。
3. マイクロインフルエンサー(特化型)
フォロワー数は3,000〜50,000程度ですが、コミュニティ内で強い信頼を得ています。費用対効果が高く、特定ターゲット層を狙うホテルや旅館に適しています。居住地付近の情報を熱心に発信しているインフルエンサーも多く、地域密着のニーズで大きな成果を生むケースがあります。
また、インフルエンサーとフォロワーの距離感が近く、家族構成や愛犬家か否かなど属性が類似しているケースでは、特定ニーズ(ペット連れ・子連れ旅行など)に合わせた起用で成果が出ることが多々あります。
特に「トラベル系インフルエンサー」と呼ばれる旅行特化型のインフルエンサーは、ホテルや旅館にとって新しいサービス開発につながるケースもありますので、接点を持つことがおすすめです。
彼らは自身を主役にするのではなく、旅や施設そのものを魅力的に見せることを得意としており、結果として宿泊予約につながる投稿や新サービス、新プランを生み出すことにつながることもあります。
特徴的なサービスやコンセプトを広く発信していくことで、宿の業績を根本的に変える大きな集客効果を生む可能性があります。
インフルエンサーマーケティング成功のカギ
ホテル、旅館におけるインフルエンサーマーケティングの成功のカギは、以下の3つを一貫して行うことです。
・ターゲット顧客を明確にする
・適切なインフルエンサーを選ぶ
・予約までの導線をきちんと設計する
ここからは、これらを成功につなげるための戦略を整理していきます。
1. ターゲット層に合ったインフルエンサーを選ぶ
ホテルや旅館がまず考えるべきは「誰に来てほしいか」という点です。
【ターゲットで選ぶインフルエンサー例】
● 20〜30代女性を狙う場合 → 美容やライフスタイルを得意とする旅系インフルエンサー
● ファミリー層を増やしたい場合 → 子育て世代に支持されるファミリー系インフルエンサー
● カップル需要を伸ばしたい場合 → デートや旅行をテーマに活動するインフルエンサー
単にフォロワー数が多い人を起用するのではなく、 フォロワー属性が施設のターゲットと重なるかどうか が成果を分けるポイントです。
ただ、適切なインフルエンサーを探すのは簡単ではありません。
私たちが運営する UNFEE では、旅系・ライフスタイル系など厳選した審査を通過したインフルエンサーだけを無料で探せます。

2. SNSと予約サイトをつなぐ導線をシームレスに設計する
インフルエンサーの投稿を見て「泊まってみたい」と思っても、予約ページまでの導線が複雑だと機会を逃してしまいます。
● Instagram投稿には公式サイトリンクを設置できないため、宿の公式Instagramアカウントを載せる
● ストーリーズに宿泊公式サイトのリンクを貼り付ける(リンクスタンプを1つだけ設置できます)
● フォロワー限定プランを用意して、直接予約を促進する
このように SNSから予約までをシームレスにつなぐ工夫が、成果を最大化する重要なポイントです。
3. 単発施策ではなく継続的な露出を狙う
インフルエンサー施策は即効性がある反面、効果は数日で途切れがちです。売上に直結するためには、 継続的な発信が必要です。
継続的に発信するために、以下の工夫をしてみると良いでしょう。
● 季節ごとの魅力(桜、紅葉、イルミネーションなど)を発信してもらう
● 広告素材としての2次活用を承諾してもらい、Google広告やメタ広告に活用する
● 長期的なアンバサダー契約で、定期的に施設を紹介してもらう
繰り返し登場することで「本当にお気に入りの場所なのだ」という信頼感が生まれ、予約への転換率が高まります。
4. 成果を測定し改善する仕組みを整える
インフルエンサー施策は「やりっぱなし」にしてはいけません。成果を数値で測定し、次回以降に改善を加えることで投資対効果が最大化します。
【成果を測定するべきもの】
● 投稿後の公式サイト訪問数
● キャンペーンコード利用件数
● 実際の宿泊予約数や売上の増加率
特に旅系インフルエンサーは「予約行動」に直結しやすいため、効果を追跡可能な形にしておくことが重要です。
5. 成功している宿泊施設に共通するポイントとは
実際にインフルエンサー施策で成果を出しているホテルや旅館には、いくつかの共通点があります。
● ターゲットが明確:「誰に泊まってほしいか」がはっきりしている
● フォロワー属性が顧客層と一致:相性の良いインフルエンサーを選んでいる
● 予約導線がスムーズ:投稿から数クリックで予約が完了する
● 短期ではなく長期施策:複数回発信で信頼性を高めている
● データを基に改善:「やりっぱなし」にせず効果検証を行っている
● 投稿素材について各種デジタル広告への2次活用や同時実施を行っている
これらの積み重ねが「継続的に集客できるSNS運用」へとつながっています。
インフルエンサーを招致・活用するときの注意点と工夫
インフルエンサーをホテルや旅館に招致する施策は、集客や売上に即効性を発揮する一方、準備不足や進め方の誤りによって成果が限定的になってしまうケースも少なくありません。ここでは、実務の現場でよく起きる課題と、その改善方法を整理します。
1. 「わざわざ行く理由」をインフルエンサーに示す
インフルエンサーは、自らのフォロワーに「誇れる体験」を届けたいと考えています。そのため施設側は「この場所に行く価値」を明確に示す必要があります。
● 都市部のホテルなら → 建築デザイン、シグネチャーレストラン、ラウンジ体験
● 地方の旅館なら → 温泉、自然環境、地域ならではのアクティビティ
単なる宿泊提供だけではなく、食事・体験・景観を組み合わせた総合的な価値を打ち出すことで、発信の幅が広がり、フォロワーへの訴求力も高まります。
2. 撮影環境の整備と事前配慮がコンテンツの質を左右する
インフルエンサーは限られた滞在時間の中で多くのコンテンツを撮影する必要があるため、施設側が事前に撮影環境を整えておくとより質の良い写真や動画が期待できます。
● レストランでの座席移動の可否
● 三脚やジンバル使用の可否
● 撮影可能エリアの明示(他の宿泊客への配慮を含む)
こうした情報をあらかじめ共有しておくと、当日のストレスを減らし、結果として共感性の高い発信につながります。
さらに、演出を過剰に押し付けるよりも、偶然性や自然体を大切にできる環境を整える方が、フォロワーに響く投稿が生まれやすいのです。
3. 投稿内容は「体験型」を意識する
近年のSNSでは、インフルエンサー本人を前面に押し出すよりも、「宿泊体験そのもの」を強調したコンテンツの方が良い反応が得られます。
● 客室の雰囲気やベッドでのリラックスシーン
● 地元食材を活かした夕食や朝食の紹介
● 温泉や館内ラウンジでの過ごし方
● 周辺観光と組み合わせた滞在プラン
このように施設が主役になる発信は、フォロワーに具体的な宿泊イメージを描かせ、「次の旅行はここに泊まろう」と行動につながります。
4. スケジュール設計は余裕を持たせる
インフルエンサーの滞在は、撮影と編集で想像以上に時間を消費します。スケジュールを詰め込みすぎると、疲労やストレスでコンテンツの質が下がることもあります。
● チェックイン直後に撮影時間を確保する
● アクティビティを詰め込みすぎず、休憩を挟む
● 自由時間を残して自然な発信を促す
こうした工夫が、結果的に質の高いコンテンツ制作につながります。
また、長距離移動や専門性の高い発信を依頼する場合は、宿泊提供だけでなく交通費や報酬を用意することも検討しましょう。これにより、モチベーションと公平性を担保できます。
5. コミュニケーションと信頼構築が成功のカギ
インフルエンサー施策は「一度きりの取引」ではなく、長期的な信頼関係を築く意識が欠かせません。
● 採用・不採用の連絡は迅速に行う
● 投稿条件や期待する内容は事前に明確に共有する
● 滞在時には歓迎の意を示す(ウェルカムカードやメッセージなど)
こうした細やかな対応は、インフルエンサーに「このホテルを紹介できてよかった」と感じてもらえるきっかけになります。結果として、自然で熱量の高い発信に結びつくのです。
インフルエンサー施策で継続的に成果を得るには
1. インフルエンサー招致は共同プロジェクトという感覚が大事
インフルエンサー招致を「宿泊提供と投稿依頼」という単純な取引と捉えると、成果は限定的になります。本来は、ホテルや旅館とインフルエンサーが協力して魅力を発信する共同プロジェクトとして進めるべきです。
● 施設の魅力を引き出すプラン設計
● 撮影しやすい環境づくり、宿スタッフの理解
● 体験型コンテンツの強化
● 信頼関係に基づいた長期的な関係構築
これらを丁寧に行うことで、SNSでの話題化だけでなく、実際の予約や売上増加につながります。
2. インフルエンサーで “ 資産を増やす ” という発想
インフルエンサーを起用してSNSに投稿してもらう──これだけで終わらせるのは非常にもったいない活用法です。旅系インフルエンサーが撮影した写真や動画は、リアルで共感性が高く、宿泊施設の強力な資産となります。
ここからは、この資産を二次活用して売上を最大化する術を紹介します。
● インフルエンサー投稿の二次活用でブランド力を強化
インフルエンサーの投稿は、一般的な広告素材よりも「実体験に基づいたリアルさ」があるため、消費者の心を動かす力があります。これを二次利用することで、施設の訴求力を高められます。
公式サイトや予約メール・会員向けニュースレターなど、インフルエンサーの声を“お客様の声”として公式サイトに掲載することで、広告よりも長期的に信頼を積み上げられます。
● 公式サイトTOPや、予約ページに掲載
公式サイトのTOPや宿泊プランの紹介ページや予約サイトにインフルエンサーが撮影した写真を使用することで、利用者目線のリアルな雰囲気を伝えられます。公式サイトのTOPページにプラグインなどを活用すれば、インフルエンサーが撮影した動画を流すことも可能です。
その動画によって盛況感を演出できたり、ユーザーのサイトの滞在時間を伸ばしたりすることもできます。
● 公式SNSでの再発信
インフルエンサー投稿をリポストし、自社アカウントからも発信することで、相乗効果が期待できます。
● パンフレットや館内ディスプレイに活用
印刷物や館内のデジタルサイネージに展開すれば、来館者へのブランディング効果も高まります。
このように、投稿素材を「広告素材」として資産化することで、施策の費用対効果が格段に向上します。
3. 季節・イベントごとの継続施策でブランドを育てる
インフルエンサー施策を単発で終わらせるのではなく、以下のように季節やイベントごとに継続的に展開することがブランド力を高める鍵です。
- 春 → 花見や温泉を組み合わせた滞在プラン
- 夏 → プールや海水浴を絡めたアクティビティ
- 秋 → 紅葉や食の魅力を活かしたグルメプラン
- 冬 → イルミネーションやクリスマスイベント




こうした四季折々の魅力を旅系インフルエンサーに発信してもらうことで、年間を通じた認知向上と集客効果を積み重ねることができます。
インフルエンサー施策は、単に投稿を依頼するだけではなく、施設の強みをどのように伝え、どのように予約につなげるかを設計することが成果の分かれ道になります。
まとめ
インフルエンサー施策は、取り組み方次第で大きな成果につながる一方、最初の一歩を踏み出すのが難しいのも事実です。
まずは小さく試してみることが、次の成果につながります。
私たちが運営する UNFEE では、厳選されたインフルエンサーを無料で探せますので、気軽に情報収集の場としてご活用ください。
また、最近はインフルエンサーの投稿素材などを活かしたUGC型広告クリエイティブで大きな成果を上げる事例も増えています。
広告展開の実践方法については別記事「SNS広告戦略編」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。













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