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グランピング集客 成功と失敗の決定的な差とは|経営者・M&A投資家が見るべきポイント

グランピング市場は成長を続けていますが、「集客できる施設」と「集客できない施設」の差は年々拡大しています。週末は埋まるのに平日は空室だらけ、口コミ低評価で予約が激減、M&Aで買収しても再生できず撤退…。一方で、収益を安定的に伸ばし続ける成功事例も存在します。

では、両者を分ける決定的な要因は何でしょうか?

この記事では、グランピングの集客に成功する施設に共通する条件と、失敗施設に陥りやすい落とし穴について事例を交えて解説します。経営層・担当者・投資家それぞれに必要な視点を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

着眼点①ドームテントブームの同質化による限界や口コミ対応の重要性

1. ドームテントバブルと同質化の限界

かつて「集客できるグランピング施設」の代名詞だったのはドームテントでした。非日常感と快適さを兼ね備え、多くの成功事例を生み出しましたが、過剰な供給が進んだ結果、同質化による差別化の限界が訪れています。

弊社グループのグランドーム京都天橋立も、日本初期のドームテント施設として開業当初は高収益モデルでしたが、現在では売上が漸減しています。その理由は、より集客力の高い淡路島琵琶湖に同型施設が増え、競合が激化した結果、天橋立は「価格が安いから選ばれる施設」となり、利益率が下がっています。

この事例が示すのは、設備の流行に依存しただけでは長期的に収益は維持できないという現実です。開発やM&Aで投資判断を行う際には、単なる立地や施設タイプだけでなく、差別化できる体験設計やターゲット戦略があるかどうかを見極める必要があります。

2. 口コミを制する施設は集客も成功する

集客できる施設とできない施設を分ける最大の要因のひとつが、口コミです。どれほど知名度がある施設でも、低評価口コミが目立てば最終的に予約は入りません。特にグランピングは客室数が少なく、投稿件数が限られるため、一件の低評価が収益に直結する大きなリスクとなります。

悪い口コミを放置すれば必ず売上は落ちていきます。一方で、良い口コミを蓄積できている施設は安定的に集客でき、利益を伸ばすことが可能です。これはM&Aの際に軽視されがちですが、実際には口コミこそが重要な集客資産です。

さらに、クチコミが荒れている施設でも「リブランド」や運営改善で成功する事例があります。買収後に口コミ対応を徹底し、広告戦略を組み直した結果、利益率を回復させたケースも少なくありません。M&A投資家にとっては、失敗施設に見える物件がむしろ“高収益に転換できる余地”を秘めている場合があるのです。

3. 清潔感を欠いた施設は淘汰される

口コミで最も影響力が大きいのは「清潔感」です。ドームテントのカバーが汚れていたり、ウッドデッキが剥げていたりすれば、マイナス評価の写真と共に拡散され、集客失敗につながります。

弊社グループの事例でも、施設長や現場スタッフのマインド次第で清掃やメンテナンスの徹底度合いに差があり、それが売上に直結しています。逆に清潔感を維持できる施設は高評価を積み重ね、安定的に集客と利益を確保できています。

ドームテントのカバー交換は1棟あたり40〜60万円、目安は3シーズン。初期投資は3〜5年で回収できる収益モデルであるにもかかわらず、メンテナンスを怠れば投資回収が破綻する失敗事例も多く見られます。清潔感を守ることは集客戦略であると同時に、利益計画を守るための必須条件なのです。

着眼点②ターゲット設定と情報発信力の有無

ここからはさらに踏み込み、ターゲット設定情報発信力の有無が「集客成功」と「集客失敗」を分ける決定的な要因であることを具体的な事例とともに紹介します。

これは現場の集客担当者にとって改善のヒントとなるだけでなく、M&Aや新規開発を検討する経営層にとっても「投資して利益を生む施設をどう見極めるか」の判断基準になります。

1. ターゲットを理解できない施設は集客に失敗する

グランピング施設の集客で最大の失敗パターンは「誰を狙うのかが不明確」なことです。

ただ写真映えする画像を並べただけでは、平日稼働は改善しません。OTA(楽天トラベル、じゃらん等)に掲載するだけでは、客室数の少ないグランピング施設はランキング上位に表示されず、結果的に認知されず終わります。

一方で、ターゲットを明確にして平日需要を掘り起こしている施設は高収益を維持しています。

成人女性グループに特化して「平日割プラン+SNS映えスイーツ」を展開している施設は、稼働率を安定化させ口コミ拡散にも成功しています。未就学児ママ層に向けて「日帰り+子ども向け体験プログラム」を打ち出した事例では、集客に加え新たな収益源を創出し、利益率が向上しました。このように、ターゲットがどんな過ごし方を求めているのかを明確にすることで、確実に収益につながるプラン設計ができるようになります。

集客成功施設が狙っている平日ターゲットは、以下のニーズをもった3つの層が挙げられます。

● 成人女性グループ:価格に敏感で、SNS映えする施設を利用したい
● 未就学児ママ層:都市近郊立地で車が無くてもアクセスしたいor送迎付き、日帰りで気軽にママ友と利用したい
● シニア層:春休みの3世代旅行に利用したい、混雑を避けてアクティブにも過ごしたい

これらの層を理解し、収益につながるプラン設計ができるかどうかで、集客の成功と失敗がはっきり分かれます。平日の集客にもっと力を入れたいと思った方は、以下の記事も参考にしてみてください。

2. 情報発信力が収益の差を生む

集客できない施設の多くは「情報発信量」が圧倒的に不足しています。

インスタグラム運用を始めたものの、単体施設ではネタ切れを起こし、すぐに更新が止まってしまう。情報発信力が不足していると、大手OTAの影響で土日や繁忙期の予約は埋まっても、肝心の利益を左右する平日の集客にはつながりません。

逆に、WEB広告戦略を導入した施設は収益を伸ばしています。ターゲットに合わせたクリエイティブを設計し、口コミ改善と連動させることで「売れる広告運用」を実現。結果として、土日や祝前日の在庫は即完売となり、さらに平日の集客にも成功したため、年間を通じて安定した利益を確保しています。

このように、情報発信力は単なるPRではなく、経営の収益モデルを安定させる必須要素なのです。

3. M&A投資で注目すべき「情報発信の有無」

M&Aでグランピング施設を評価する際、一般的には立地設備規模ばかりが注目されがちです。しかし、情報発信の仕組みを持っているかどうかは、その後の収益性を大きく左右します。

情報発信に失敗している施設は、一見すると「集客できない赤字物件」に見えます。しかし実際には、ターゲット設定を明確化し、広告口コミ管理の体制を整えることで高収益施設へ再生できる余地を持っています。これはM&Aにおける“リターンの種”とも言える部分であり、買収後の成功事例も存在するため必ずしも将来性が無いとは言えないでしょう。

成功するグランピング施設の条件とは

ここからは、実際に「集客できる施設」が備えている条件を整理し、M&Aや新規開発の判断に活かせる指標を紹介します。これは現場の担当者にとっては改善の実務ヒントであり、経営層にとっては投資の成否を左右するポイントです。

成功する施設の条件① 清潔感とメンテナンス

集客を大きく左右する口コミ。弊社がその口コミを分析した結果わかったのは、最も多くの低評価理由は「清掃不足」や「劣化した設備」でした。

グランピングは自然環境と直結するため、ウッドデッキの剥がれやドームテントの汚れはすぐに目立ってしまいます。その現状がSNSで拡散されれば、予約が激減してしまいます。

逆に、清潔感を徹底して維持する施設は収益を安定化させ、リピーター比率も高いのが特徴です。ドームテントのカバー交換(1棟40〜60万円)を3年ごとに実施している施設は、口コミ点数を高く保ち、結果として利益率も改善していきます。

M&Aの観点では、メンテナンスを怠った赤字施設は一見「失敗事例」に見えますが、リブランド+徹底改修で高収益施設に再生するチャンスがあります。投資家にとっては利益改善の余地が大きい案件とも言えるでしょう。

成功する施設の条件② 平日集客を戦略化してプラン設計

グランピング施設の成否を分けるのは先ほども紹介したように「平日の需要をどう確保するか」です。

成功する施設は、平日に動ける特定層をターゲットとして以下のように明確にプラン設計をしています。

● 成人女性グループ : SNS映えする平日限定プラン、女子会向きのスイーツプラン など
● 未就学児ママ層 :都市近郊の日帰りプラン、子どもが思い切り体を動かせる体験プラン など
● シニア層 :春休みの三世代旅行応援プラン、健康を意識したアクティビティ付きプラン など

この3層を意識的に取り込むことで、平日の売上を下支えし、年間収益を安定化できます。逆に、平日需要を軽視すると、閑散期の稼働率が低迷し、固定費を回収できずに経営が行き詰まるのです。

成功する施設の条件③デメリットを打ち消す成功パターン

都市近郊に立地する施設は、アクセスの良さを武器に平日集客で有利ですが、都市から距離がある地方型施設は、同じ戦略では競争に勝てません。その場合は方向性を明確に絞り込む必要があります。

成功するパターンとしては下記のような方向性があります。

● 愛犬家対応に特化:大型ドッグランや愛犬用メニューを用意し、リピーター化を促進
● 食事提供に振り切る:地元食材を使った会席料理やシェフ常駐のダイニングで「泊まる+食べる」体験を強化
● アクティビティ特化:釣り・カヌー・星空観察・ワークショップなど体験価値で差別化
● 部屋数を抑えて高単価化:少数精鋭のラグジュアリー型にシフトし、客単価と利益率を最大化

このように、立地条件に応じて集客戦略を大胆に変えることが、M&Aや新規開発で成功する施設の条件となるのです。

成功する施設の条件④ 集客チャネルの多層化

「OTAに載せれば集客できる」という考えはすでに古いモデルです。成功施設は以下のチャネルを組み合わせています。

● WEB広告(即効性があり、費用対効果が高い)
● インフルエンサー活用(口コミ拡散と広告素材化)
● SEO+サテライトサイト戦略(検索流入の土台作り)
● SNS広告(特にInstagramで20〜30代女性層を狙う)
● グランピングに特化したポータルサイトや支援会社と契約する

この多層的な施策により、土日のみならず平日・閑散期の集客も安定化し、結果として収益性の高い経営モデルを確立しています。

M&Aでは、このような「広告運用や情報発信の仕組み」を持つ施設は、単に建物や土地以上の価値を持ちます。まさに「見えない集客資産」が企業価値を押し上げるのです。

まとめ ― 収益を生む施設は「集客できる条件」を備えている

最後に、「集客できる施設」と「集客できない施設」の差を改めて整理します。

● 口コミ管理を徹底し、清潔感を維持しているか
● 平日需要を意識し、具体的ターゲットに施策を打てているか
● 情報発信力を持ち、OTA依存から脱却しているか
● 収益性を改善できる仕組み(広告運用・再訪促進)を備えているか

経営層にとっては、M&Aや新規開発を検討する際の成功・失敗の分岐点になります。現場担当者にとっては、日々の集客改善と利益最大化のためのチェックリストです。

グランピング市場は今後も成長が期待されますが、同質化の波に埋もれる施設と、収益を伸ばす施設の差はますます広がるでしょう。集客できる施設の条件を理解し、実践することこそが、成功への最短ルートなのです。

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