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客室数を減らして価値を上げる!グランピング集客の逆転発想

グランピング市場はこの数年で急速に拡大しました。SNSやメディアでも「映える宿泊体験」として取り上げられる機会が増え、キャンプ初心者やファミリー層、カップルを中心に一大ブームを築いたのは周知の通りです。

しかし、その一方で課題も表面化しています。新たにヴィラタイプや貸別荘などバケーションレンタル系の施設が次々と増え、古参のグランピング施設が苦戦する状況が目立つようになってきました。

経営が立ち行かなくなりM&A案件に出る施設や、リノベーションを検討せざるを得ない施設も増加しています。競争が激化する中で、単純に「安さ」で勝負するだけでは淘汰されてしまいます。ここで必要になるのが「数を減らして価値を上げる」という逆転の発想です。

今回は、このグランピング集客を成功させる「数を減らす」取り組みについて紹介します。

グランピングの高規格化・高級化が進む背景

近年のグランピング業界を見渡すと、高規格化・高級化の流れが明確になってきています。以下のように、従来の「テント泊にちょっとした家具や設備を入れた形」では、もはや差別化が難しい状況です。

● 客室に個別の風呂やトイレがない施設は論外と見なされる
● 簡易的なアウトドア体験ではなく、「快適で非日常的なラグジュアリー空間」が求められる
● ハード面で見劣りする施設は競争から取り残される

こうした潮流の中で、既存の施設が生き残るためには、リニューアル予算を投下して滞在環境の質を上げる必要があります。そして、多くの場合に行き着くのが「客室数を減らして高付加価値化する」戦略です。

客室数を減らすことが有効な理由

「客室数を減らす=収益性が落ちるのでは?」と考えがちですが、実際には逆です。

例えば、10室の低価格施設よりも、5室の高付加価値施設の方が稼働率・客単価・口コミ評価の面で優位に立つといったケースが増えているのです。

● 清掃・人件費・光熱費などの固定費を削減できる
● 少数精鋭だからこそ細やかなサービス提供が可能
● 宿泊体験の希少性が増し、価格競争に巻き込まれにくい

この「小さくして強くなる」流れは、ホテル業界でも同じ傾向が見られ、グランピングでも確実にトレンドとなりつつあります。

高付加価値化のカギは「風呂」と「サウナ」

1. 天然温泉とサウナを整備すれば最強の武器に

高付加価値化するうえで特に重要なのが、風呂とサウナです。それぞれ以下のポイントをおさえておきましょう。

● 風呂(SPA)の強化

・天然温泉は最高の武器になる
・最近では、配管工事をしなくても温泉を濃縮して提供できる技術を持つ会社も登場
・温泉が難しい場合は、地元ハーブを用いたバスソルトや自然素材の入浴剤で「グランピングらしさ」を演出

● サウナの導入

・サウナブームを背景に「サウナ特化型グランピング」も出てきている
・バレルサウナの導入だけでも稼働率は向上
・水風呂やサウナ仕様にこだわれば、冬季の集客にも強くなる

実際に弊社グループでも、外国人旅行者が多い富士五湖エリアで和(日本建築)をモチーフにしたサウナ併設型バケーションレンタルを開発中です。サウナがインバウンドにどの程度受け入れられるかは未知数ですが、結果を検証しながら、データが出次第このサイトでも共有していきます。

2. 冬季集客にも大きく影響する「お風呂とサウナ」

ほとんどのグランピング経営者が抱える共通の課題が、冬季の稼働率低下です。夏や秋には自然体験やBBQで高い需要を獲得できても、冬になると需要が激減する…このギャップを埋めるのが、温泉とサウナです。

テントサウナ程度の簡易設備でも、冬の稼働率が上がった事例あるため導入の価値はあります。また、「サウナイキタイ」「ニフティ温泉」といったポータルサイトに掲載するだけで、新しい集客導線が増えることがあります。

このように、風呂やサウナは単なる「付加設備」ではなく、冬の売上を支える武器になるのです。

外国人富裕層の集客をどう取り込むか?

忘れてはならないのが、インバウンド集客です。富士五湖鳥取では、すでにグランピング施設でも外国人富裕層向けの成功事例が出ています。

アジア系旅行者が多い地域では高単価化は難しいものの、冬季集客に成功しているケースがあります。また、欧米豪旅行者が多い富士五湖などでは、高単価販売+オフシーズン稼働が実現しており、その結果営業利益率の高維持・経営の安定へとつながっています。

ターゲット別に考える!グランピング集客成功のシナリオ

グランピング市場における競争は年々激しくなっています。その中で生き残るためには、「誰をターゲットにするか」を明確にし、その層に合わせた差別化を行うことが不可欠です。ここでは、ターゲット別に成功しやすい戦略をご紹介します。

1. 自然と文化の掛け合わせを好むインバウンド観光客 ― 「泊まる+自然体験」グランピング

日本政府の訪日客誘致政策により、地方観光需要は拡大傾向にあります。特に欧米豪の富裕層旅行者は、自然と文化を掛け合わせた体験を好む傾向が強いため、グランピングと相性が良いといえます。

そして、インバウンドは平日に動ける層が多いため、平日の集客を上げたい施設にとってもメリットが大きく稼働の底上げに直結します。

成功パターンとは

インバウンド集客を成功させるには、自然体験を組み合わせた高単価パッケージ(例:漁体験+料理体験、サイクリング+温泉)などSNSで映えるコンテンツを用意することで、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の自然拡大が期待できます。その結果クチコミが集まり、トリップアドバイザーなどで上位表示されやすくなります。

マーケティングチャネル①OTA(Booking.com, Expedia, Agoda)での露出を強化する

・ Agoda : アジア圏に強い
・Booking.com : 欧米豪、とくにオーストラリア富裕層に人気

マーケティングチャネル②現地SNSを活用する

中国の観光客を集中的に集客したい場合は、中国で多く利用されている多機能アプリ「WeChat」や、ソーシャルコマースプラットフォームで「RED(小紅書)」、そして、今や世界中で多用されているショート動画アプリ「TikTok」での宣伝が有効です。

マーケティングチャネル③DMCと連携する

インバウンド観光客を確実に集客したい場合は、DMC(現地ランドオペレーター)と連携することで、海外旅行代理店経由の販路を確保できます。弊社には、実際に海外代理店とコネクションをもち、海外の富裕層をターゲットにしたツアーを展開している関連会社があります。

興味がある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。

2. 都市部近郊 ― 「宿泊+食体験」グランピング

グランピングと食事は相性が良く、差別化の余地も大きい分野です。特に都市部近郊では、食材本来の美味しさを楽しむ食事に惹かれる方が多いため、充実した食体験を全面に打ち出すことでリピーターになってくれる方も少なくありません。

例えば、以下のような食体験を提供すると効果的です。

・ 地元食材を使った会席料理やライブキッチンを提供すれば、非日常感が一気に高まる。
・ BBQやダッチオーブンといったグランピング定番料理に加え、シェフ常駐型で高級感を演出する手もある。
・ 宿泊収益に加えて飲食収益を上乗せできるため、利益率改善に直結する。

3. ファミリー&インバウンド観光客 ― 「泊まる+アクティビティ体験」グランピング

特に、ファミリーインバウンド旅行者に強いのが、アクティビティ体験です。

例えば、釣りやカヌー、星空観察、陶芸体験、農業体験など、地域の強みを活かした体験コンテンツを用意し、「泊まる」だけではなく「体験」を付与することで、単価アップが可能です。ファミリーには、「子供に成功体験をさせてあげたい」「子供に初めての体験をさせてあげたい」といったニーズにマッチするアクティビティが有効でしょう。

さらに、未就学児を持つファミリー層には「無料体験」があると、よりSNSで拡散されやすく効果的です。

成功している施設の多くは、体験の順序撮影スポットを工夫し、SNS投稿につながる導線を設計しているので、どんなアクティビティを提供するか、そしてどのような見せ方をすれば良いかを戦略的に考えましょう。

4. 都市在住の富裕層 ― ラグジュアリー志向のグランピング

都市近郊で広い敷地を確保できる場合、客室数を減らしてラグジュアリー型にシフトする戦略も有効です。

部屋数を少なくすることで1室あたりのプライベート感を強調し、プライベートプールや専用サウナ付きグランピング棟など、明確な差別化を図ると成功確率が高まります。

客単価を大きく引き上げることで、客室数減少を売上でカバーできるため固定費が下がり、利益率が改善される傾向があります。

インバウンド観光客に有効な施策

多くの施設で課題になるのは、平日の稼働率です。休日や連休は自然と埋まりますが、平日はどうしても稼働が下がります。

その点、インバウンド客は「曜日に縛られず旅行できる層」が多いため、平日稼働を埋める最有力ターゲットとなるため、以下の取り組みをすると良いでしょう。

・ 多言語対応(案内看板・予約サイト・スタッフ)
・ 空港、駅からの送迎サービス
・ 「次に行きたい観光スポット」への柔軟な移動サポート

これらを整備することで、グランピング×インバウンドという高収益モデルが成立します。

”客室数を減らす”戦略はM&Aにも有効

ここからは、最近増えているグランピングのM&Aについて紹介します。

1. M&A再生成功の秘訣は「愛犬」と「平日」 の集客 

グランピング施設の運営は、立地や設備だけでなく「どのターゲットにどう価値を提供するか」が成功と失敗を分ける要素です。特に競争激化が進む中、既存施設の再生やM&A、新規参入の判断には明確な視点が必要です。ここでは、成功のカギとなる実践戦略を整理します。

地方では経営が立ち行かなくなり、売却やM&A対象となるグランピング施設が増えています。しかし、立地や設備だけで買収判断をすると失敗するケースが多いのも事実です。

よくある失敗例は「立地が良い」「部屋数が多い」という表面的な条件で買収。その後、集客設計やリブランド戦略が欠け、再生できず撤退するというパターンです。

成功するポイントは、下記の3つです。

・ リブランド+徹底改修(清掃・メンテナンス・デザイン刷新)。
・ 広告戦略の再構築(SNS広告+口コミ二次利用)。
・ 平日需要を狙ったプラン設定で安定した稼働を確保。

いずれも客室を減らすことを前提に考えると初期投資を抑えることにつながり、対策が見えやすくなります。特に「客室を間引いて高付加価値化」するリニューアルは、付加価値をつけるメリットに加え、固定費の削減にもつながるため利益率改善しやすく、M&A案件でも再生成功例が出ています。

2. 【愛犬】部屋を減らしてドッグランに転換

もしインバウンド誘客が難しい場合、愛犬家対応に特化したグランピングは非常に有効な戦略です。

客室を間引くことで、ドッグランが確保できるケースなどに有効で下記を意識するとよいでしょう。

・ プライベートドッグランや大型ドッグラン、犬用プールを設置。
・ 愛犬用コース料理やアメニティを充実。
・ 「犬連れで旅行できるなら高単価でも払う」層をターゲットに。

愛犬家向けグランピングはリピート率が高く、安定的な売上基盤になる点や、他施設との差別化できて競合が少ないため、ブルーオーシャン市場で戦える点で成功しやすいといえます。

実際に、プライベートドッグラン付きグランピングは全国的にまだ0.3%程度しか存在しておらず、希少性の高さが強い集客力につながっています。

ドッググランピングに興味がある方は、以下の記事で詳しく紹介しているのでぜひ読んでみてください。

3. 部屋数を増やすより特定のターゲットに響く取り組みを

外国人富裕層や愛犬家に特化できない場合でも特定の層に響くコンテンツを拡充すると、結果的に部屋数を増やすよりも経費が抑えられ、利益率が高くなる傾向があります。

未就学児童のママ層

ファミリー層のなかでも未就学児童の母親にターゲットを当てると良いでしょう。それは、未就学児童のママ層は平日に動きやすく、ママ友と一緒に子育てをしながら非日常観を楽しみたいと願う方が多いためです。

例えば、ピザ作り、スモーク体験、農業収穫体験といった子供に新しい体験をさせられるコンテンツが無料でできると喜ばれます。こういったコンテンツはSNSでも拡散されやすく、利用した方が自然と施設を宣伝してくれるため更なる集客へつながります。

他にも、併せて下記のような取り組みを実施すると成功確率が高まります。

・ 都市近郊施設なら「日帰りや送迎付きプラン」を実施して新規開拓力を上げる
・ 授乳室・キッズスペースがある点や清潔感をアピールして安心感を与える
・ 育児系インフルエンサーやコミュニティで口コミを拡散するマーケティング策を実施

未就学児のママ層の集客に注力したいと思ったら、以下の記事も参考にしてみてください。

成人女性グループ

また、成人女性グループも平日に来てくれる重要なターゲット層です。映える空間・料理・特典を用意して「女子旅専用感」を演出することで、施設の魅力を高まります。例えば、アメニティBARや野菜の取り放題、マシュマロ&焚火体験、冬はホットワインなどを展開すると、冬季や平日の安定稼働につながります。

さらに、この成人女性のグループもSNSのユーザーが大半ですので、InstagramやTikTokでの拡散力を活かし、稼働を底上げしていくマーケティング策がおすすめです。

まとめ

宿泊施設の競争力を左右するのは、客室数ではありません。スーパーマーケットやドラッグストアのようにお店の大きさが品ぞろえに直結する小売業とは集客構造が異なります。客室数が少なくなることで、従来では対応できなかったサービスが可能になったり、人気が出てくると施設の希少性が高まり、客室単価も上げられます。

ビジネスホテルなどは価格比較されやすいですが、グランピングは高規格、サービス力、コンテンツの多さによって、集客力を調整できるため、価格設定の自由度は高いです。

施設の希少性を高めるには、「誰に来てもらうか」を明確にし、その層が感動する体験や特典を徹底的に磨くこと、そして稼働が落ちやすい平日の集客に注力することが重要です。

具体的なポイントは、以下の4点です。

・ 愛犬家対応でブルーオーシャンを攻める
・ 食事で差別化してリピーターを確保する
・ アクティビティを強化してファミリー層に訴求する
・ インバウンドで平日稼働を支える

グランピング業界は競争激化で淘汰が進んでいますが、裏を返せば「戦略次第で再生や逆転が可能」な市場でもあります。

本記事が集客に悩む施設も再び競争力を取り戻し、持続的に利益を確保できる施設へと生まれ変わるためのヒントになればと願っています。

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