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ホテルコンセプト事例大全|開発・経営で差をつける最新アイデア集

「次に泊まるなら、どんなホテルにしてみたい?」

そう尋ねられたとき、昔なら「温泉があるか」「立地が便利か」などが答えの中心だったかもしれませんが、今は違います。ホテルは単なる宿泊の器ではなく、“物語や体験の舞台”に進化しました。

SNSでの拡散、非日常の体験、そして自己表現の場――こうした要素が、旅行者の心を動かしています。

本記事では、以下4つのカテゴリごとに、特徴・ターゲット・希少性、さらに「開発のしやすさ」という観点を加えて整理します。

高級・専門特化モデルペット
・ 個人・ライフスタイル
・ 地域・観光統合型
・ ウェルネス・リトリート

経営者や投資家が「どこから着手するべきか」を判断する指針として活用してください。

目次

高級・専門特化モデル

1. 超級のオーベルジュモデル(食事特化・ジビエ系)

・特徴:食を滞在の主役に据え、ジビエや地産地消を前面に出す。
・ターゲット:美食家、食文化に関心のある富裕層。
・希少性:料理自体を“観光資源”とする宿は限定的。
・開発のしやすさ:食材調達やシェフ確保に高い専門性が必要で難易度は高め。ただし既存旅館のリニューアルからの転換は比較的可能。
・事例:レヴォ(富山)、TAPKOP(北海道)、比良山荘(滋賀)、MOKU ISESHIMA(三重)など。

▶レヴォ(富山)

▶TAPKOP(北海道)

▶比良山荘(滋賀県)

2. 超アッパーヴィラモデル(シェア別荘系)

・特徴:高級ヴィラを共同所有、資産性と利用を両立。
・ターゲット:富裕層、投資家、別荘志向層。
・希少性:日本市場ではまだ限られた事例のみ。
・開発のしやすさ:不動産法規、所有権設計が複雑で難度は高い。ただし土地取得後の建築自由度は高く、収益モデルも明確。年間売上4000万円前後の事例も多数。
・事例:レジデンスヴィラ河口湖LAGO、ヴィラZenithなど。

レジデンスヴィラ河口湖LAGO

VILLA ZENITH

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3. アパートメントホテル(長期滞在型)

・特徴:キッチン・洗濯設備を備え居住性を重視。
・ターゲット:ワーケーション層、訪日外国人、長期ビジネス客。
・希少性:短期滞在が主流の日本ではまだ少数派。
・開発のしやすさ:マンション型物件を改装すれば比較的容易。都市部では競合も増えてきたが、地方観光地ではブルーオーシャン。多人数の隠れたニーズを奪取している成功事例あり。
・事例:霞ヶ関キャピタルが展開する「FAV HOTEL」など。

4. ドッグリゾート/ドッグオーベルジュ

・特徴:大型犬対応、ドッグラン、犬用ディナーを提供。
・ターゲット:愛犬家、富裕層ファミリー。
・希少性:ペット同伴宿は増えているが高級ラインは希少。
・開発のしやすさ:犬連れ需要は旺盛。設備(ドッグラン、水回り)投資が必要だが土地さえ確保できれば実現性は高い。
・事例:グランデオーベルジュ忍野、ヴィラ マキノ、ドッググランピング淡路厚浜。

グランデオーベルジュ忍野

ヴィラ マキノ

ドッググランピング淡路厚浜

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5. お1人様対応ホテル

・特徴:シングル専用、安心とプライベート重視。
・ターゲット:ソロ旅、単身ワーケーション層。
・希少性:「一人で泊まる」ことに特化したホテルはまだ少ない。
・開発のしやすさ:小規模物件でも成り立つ。シングルルームを増やす改修で導入しやすい。
・事例:星野リゾートのホテルブランド「OMO」の 【おひとり様優待】おもたび。(朝食付き) お一人様 : 18,350円(税込)~.。

6. ライフスタイルホテル

・特徴:音楽・デザイン・食文化などカルチャーを全面に。
・ターゲット:20〜40代都市層、インバウンド観光客。
・希少性:ホテルが“自己表現の場”となる新しい形。
・開発のしやすさ:内装・アート演出で差別化できるため投資額は比較的調整可能。ただし世界観の構築にセンスと運営力が必須。
・事例:アンダーズ東京など。

7. 地域・観光統合型

・特徴:宿泊+街歩き、地域体験をパッケージ化。
・ターゲット:若年観光層、都市観光客。
・希少性:地域全体をブランド化するホテルは少数。
・開発のしやすさ:大規模で難易度は高い。地域・観光統合型ホテルとは、国際会議場、ショッピングモール、エンターテイメント施設、カジノなどが一体となった複合観光施設であるIR(統合型リゾート)を指す場合が多い。

8. 高級グランピング系

・特徴:自然+快適性を両立。アウトドアブームで人気。
・ターゲット:ファミリー、カップル、都市生活者。
・希少性:参入増加で差別化が必要。
・開発のしやすさ:土地活用しやすいが許認可やインフラ整備が課題。低投資でも始められるが高級化路線は難度が上がる。
・事例:KEIKOKU GLAMPING TENT(東京都)、Snow Peak YAKEI SUITE(福岡県)、ドッグヴィラ南房総など。

ドッグヴィラ南房総

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9. 都市型リゾート

・特徴:都市圏でプール・スパを備えリゾート感を演出。
・ターゲット:週末リゾート層、インバウンド富裕層。
・希少性:都市部で非日常を味わえる宿は限られる。
・開発のしやすさ:立地取得が最大の壁。設備投資は大規模だが、需要は安定。
・事例:SORANO HOTEL(東京都立川市)。

▶SORANO HOTEL(東京都立川市)

10. ホテルコンドミニアム

・特徴:分譲販売とホテル利用を両立。
・ターゲット:投資家、セカンドハウス志向層。
・希少性:収益性と不動産性を兼ねるモデル。
・開発のしやすさ:法規制や管理組合形成に高難度。ただし金融機関の理解を得られれば開発余地大。高額不動産の販売ノウハウや提携パートナーの確保が必須。
・事例:VIVOVIVA石垣島(沖縄県)、ブリスティア仙石原(神奈川県)。ブリスティア仙石原は民泊スキームを活用。

11. ブランデッドホテル

・特徴:世界ブランドと提携。高級層を確実に惹きつける。
・ターゲット:ブランド志向層、海外客。
・希少性:ブランド価値で差別化。
・開発のしやすさ:ブランド誘致にハードル高。投資額も大。運営スキームは安定するため参入できれば強力。
・事例:森ビルのブランデッドレジデンス「アマンレジデンス 東京」とラグジュアリーホテル「ジャヌ東京」など。ドバイでは、アルマーニ、ロベルト カヴァリ、フェンディ、ブルガリ、ポルシェ、ベントレー、アストンマーティンなどの高級ブランドが参入している。

12. ウェルネス・リトリート

癒しリトリート(湯治・ウェルネス特化)

・特徴:温泉療法や瞑想、健康志向を前面に。
・ターゲット:中高年層、海外ウェルネス旅行者。
・希少性:医療や健康と結びつけた宿は新潮流。
・開発のしやすさ:温泉資源や医療提携があれば強み。ただし立地選びが最大の条件。
・事例:神戸みなと温泉 蓮(兵庫県)、凛門(神奈川県)。

13. 森林の癒し(サウナ・大自然)

・特徴:森林浴+サウナ。自然との融合。
・ターゲット:サウナ愛好家、自然派層。
・希少性:ウェルネス需要の伸長にマッチ。
・開発のしやすさ:郊外の土地活用に向く。設備導入は比較的容易だが自然環境の保全が必須。
・事例:北こぶし知床 ホテル&リゾート(北海道)、The Hive SAUNA (富山)など。

▶北こぶし知床 ホテル&リゾート(北海道)

▶The Hive SAUNA (富山)

14. コスパ系(価格訴求を実施する中規模~大規模リゾートホテル)

・特徴:低価格、必要十分な機能に特化。
・ターゲット:ビジネス層、若年層、節約志向層。
・希少性:市場は大きいが差別化は難しい。
・開発のしやすさ:既存ビジネスホテル改装で参入可能。収益モデルは安定。シニアやファミリー層など幅広く対応できるため、運営受託が得意な会社に事例が多い。
事例:リブマックスリゾートや共立リゾート系列のラビスタシリーズなど。旅館タイプでは大江戸温泉物語グループなど。

15. スモールラグジュアリー

・特徴:少室数で高単価。隠れ家感を演出。
・ターゲット:富裕層カップル、記念日利用。
・希少性:予約困難性自体がブランド化。
・開発のしやすさ:小規模物件でも成り立ち、資金力が限られる事業者にも可能性あり。ただしオペレーション力が必須。
事例:御所別墅(兵庫)、富士青藍(静岡)、仙石原古今(神奈川)、草津温泉 炯-kei-(群馬)、THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島(三重)、天橋立離宮 星音(京都)など。 

▶天橋立離宮 星音(京都)

テクノロジー活用型

続いて、テクノロジー活用型/サステナビリティ型/趣味・体験特化型を取り上げ、未来志向のホテル開発の可能性を掘り下げます。

10年前には想像もしなかったホテルが、次々に開発されています。

顔認証でチェックインするホテル、NFTで宿泊権を販売するホテル、そして宿泊そのものを“泊まれる美術館”や“音楽スタジオ”に変えてしまうホテル。これらは「未来の話」ではなく、すでに一部で現実に稼働しています。

旅行者の期待は「便利さ」と「新しい体験」の両輪で高まり続けています。開発者にとっては、テクノロジーとサステナブルをどう取り入れるかが、今後の競争を左右する要因となるでしょう。

1. スマートホテル(顔認証・ロボット接客)

・特徴:非接触チェックイン、AIチャットでの案内、ロボットによるルームサービス。
・ターゲット:若年層、訪日観光客、最新技術を体験したい層。
・希少性:日本らしい技術力を体験できる観光資源。
・開発のしやすさ:既存ホテルでもシステム導入は可能。投資額は大きくないが、機器の維持・人材教育が課題。
・事例:HISグループが展開する「変なホテル」など。

2. キャッシュレスホテル(完全無人決済)

・特徴:無人運営、チェックインから決済までキャッシュレスで完結。
・ターゲット:ミレニアル世代、Z世代、効率重視の出張客。
・希少性:人手不足対策としても注目されるモデル。
・開発のしやすさ:フロント業務をデジタル化すれば導入可能。小規模ホテルや新築アパート型物件から参入しやすい。

中規模ホテルから民泊や貸別荘まで事例が多い。

3. メタバース連動ホテル(NFT会員権・バーチャル体験販売)

・特徴:宿泊権をNFTで販売、バーチャル空間で事前体験。
・ターゲット:デジタルネイティブ、海外富裕層、投資層。
・希少性:世界的にもまだ事例が少なく、実験的。
・開発のしやすさ:初期投資は小さくても可能だが、ブロックチェーン知識とITパートナーが不可欠。
・事例:ヒルトングループは、Paris Hiltonとコラボした「Slivingland」、マリオットグループが「Marriott Bonvoy」を人気ゲームFortnite内にて事前体験できるプログラムを運用中。
国内事例では、大阪・十三のホテルプラザオーサカがフォートナイトを活用して、ホテル内の施設をモデルとした独自のメタバース空間を制作している。

サステナビリティ・エシカル型

1. ゼロエネルギーホテル(ZEB)

・特徴:再生可能エネルギーを活用し、消費エネルギーをゼロに。
・ターゲット:環境意識の高い層、欧米インバウンド客、企業研修需要。
・希少性:ESG投資やSDGs需要の高まりで価値急上昇。
・開発のしやすさ:開発コストが通常施設よりも高くなる。補助金・助成金を活用できるケースもある。
・事例:株式会社ARTHは電気と水を自然の力だけで100%自給する完全オフグリッド型モジュール「WEAZER(ウェザー)』を西伊豆に展開している。

▶WEAZER(南伊豆)

2. 地産地消型ホテル

・特徴:地域農家や漁師と提携し、食材・体験を提供。
・ターゲット:食文化志向の旅行者、地方観光客。
・希少性:地域振興と宿泊の両立。観光資源化も可能。
・開発のしやすさ:既存宿泊施設でも取り組めるため難易度は低い。地域連携が成功のカギ。
・事例:香川県三豊市の「UDON HOUSE うどんハウス」や奈良県山添村の「ume, yamazoe」など地域一体となった施設事例がある。

3. リジェネラティブホテル(森林再生と連動)

・特徴:宿泊費の一部を森林保全や再生に活用。
・ターゲット:エシカル志向の旅行者、海外富裕層。
・希少性:サステナブルを超えた「再生」型ホテルは先進的。
・開発のしやすさ:資金的な負担は大きくないが、ストーリー作りと透明性の確保が必須。
・事例:TRUNK HOTEL(東京都)では、インテリアやベッドには間伐材を使用、シャンプーやボディウォッシュはエコサート認証の100%オーガニック。ハンガーやトイレのサニタリーボックスには、鉄くずをリサイクルした材料を使用している。サブスク別荘を手掛けるSANUは宿泊費の一部を森林保全に活用すると謳っている。

体験型ホテル

テクノロジー活用や環境配慮をコンセプトにしたホテルが注目を集める一方で、「体験そのもの」を宿泊の価値に変えるコンセプトも広がっています。芸術や音楽、スポーツ、釣り、クラフトなど、趣味や文化を軸にしたホテルは、旅行の目的そのものとなり、差別化と高付加価値化を実現しやすいモデルです。

1. アートホテル(泊まれる美術館)

・特徴:客室や館内全体がアート作品。
・ターゲット:アートファン、感度の高い若者、インバウンド層。
・希少性:宿泊体験=芸術鑑賞という独自の市場。
・開発のしやすさ:既存ホテルのリノベーションでアート導入可能。アーティストとの協業が重要。
・事例:ベネッセハウス(香川県・直島)やDDD HOTEL(東京・馬喰町)、BnA_WALL(東京・日本橋)など。

2. 音楽ホテル

・特徴:レコードルーム、スタジオ、ライブ設備を備える。
・ターゲット:音楽ファン、フェス参加者、若者グループ。
・希少性:音楽を目的とした宿泊は国内外でまだ希少。
・開発のしやすさ:防音設備など投資負担はあるが、ライブハウスとの複合運営で収益多角化が可能。
・事例:箱根七瀬では土曜日に館内でクラシック演奏を実施。他にはレコードBARを併設したHotel Times 8B 三宮(兵庫県)など。

3. スポーツホテル

・特徴:サイクル拠点、スキー直結、eスポーツ専用など。
・ターゲット:アスリート、趣味層。
・希少性:体験型旅行市場に直結。
・開発のしやすさ:立地依存が強い。既存リゾート地では比較的導入しやすいが、都市型は差別化必須。

合宿など団体割引プランを持つ宿泊施設。スポーツ公園内やスキー合宿に対応した廉価なホテルが多い。eスポーツ専用が楽しめるホテルも増加している。

4. フィッシングリゾート

・特徴:桟橋や専用船、釣った魚をその場で調理可能。
・ターゲット:釣りファン、富裕層アウトドア客。
・希少性:体験+グルメの融合は他に少ない。
・開発のしやすさ:海・湖・川沿いでの立地条件が必須。自然環境保全との両立が課題。
・事例:座敷から魚が釣れる海上料亭 海楽園(三重県)やホテルニューアカオ(静岡県)など。淡水魚であれば釣堀がある「釣り宿 長者屋敷(山形県)」など。

5. クラフトホテル

・特徴:陶芸・木工・ワークショップを宿泊と融合。
・ターゲット:ものづくり好き、文化体験層。
・希少性:宿泊×工芸の特化モデルはまだ希少。
・開発のしやすさ:廃校や古民家をリノベして導入しやすい。小規模スタート可能。
・事例:美濃和紙の職人体験ができる「NIPPONIA 美濃商家町(岐阜県)」やアトリエで器作りが体験できるatelier O-HUIS(アトリエ オーハウス 愛媛県)など。

6. コリビングホテル

・特徴:ワーケーションや長期滞在を前提に、住むように泊まれる設計。共有スペースでの交流を重視。
・ターゲット:フリーランス、デジタルノマド、若年層。
・希少性:宿泊を“コミュニティ形成の場”とするモデルは少数。
・開発のしやすさ:既存宿泊施設をリノベして導入可能。稼働率を安定させやすい。
・事例:COGO TENNOJI(大阪)、lyf天神福岡など。

7. シェアオフィス併設ホテル

・特徴:宿泊+オフィスを融合し、出張や研修利用に対応。
・ターゲット:ビジネス層、スタートアップチーム。
・希少性:働き方改革とリンクし、新しい法人需要を開拓。
・開発のしやすさ:都市部のビジネスホテルを改修すれば導入可能。ITインフラ整備が必須。
・事例:Andwork(東京)、hotel it.(大阪)など。

8. ゲーミフィケーションホテル

・特徴:謎解きやストーリー仕立てを宿泊に組み込み、遊び心を前面に。
・ターゲット:若者グループ、カップル、エンタメ志向層。
・希少性:体験×宿泊を融合させたユニークさで話題性抜群。
・開発のしやすさ:内装・演出の工夫で小規模施設でも展開可能。アイデア勝負で参入障壁は低い。
・事例:MIMARU大阪 難波STATION、京都プレザントホテルなど。大型のリゾートホテルや温泉旅館でも事例が複数。みなかみホテルジュラクなど。

▶京都プレザントホテル

9. 鉄道をテーマにしたホテル

・特徴:駅舎や廃線を宿泊施設に転換。
・ターゲット:鉄道ファン、国内観光客。
・希少性:地域再生+ユニーク体験の融合。
・開発のしやすさ:自治体協力を得られれば比較的可能性あり。
・事例:NIPPONIA HOTEL 高野山など。ホテルグランヴィア大阪など、都市型ホテルで鉄道をコンセプトにした限定客室の事例もある。

10. 泊まれる映画館をコンセプトにしたホテル

・特徴:ホテル全体を「映画館」コンセプトに設計。大スクリーンを備えた共用シアタールーム、あるいは客室内に専用シアター設備
・ターゲット:映画ファン、インバウンド層(日本アニメや邦画ファン)
・希少性:日本では「泊まれる映画館」はほとんど存在せず、極めて珍しい
・開発のしやすさ:既存ホテルの一部を防音施工し、シアター設備を入れれば比較的容易。実際の映画館を再利用して宿泊できる施設も存在。
・事例:兵庫県豊岡市の映画館に宿泊できるTOYS(トーイズ)。

11. 泊まれる古民家をコンセプトにしたホテル

・特徴:築50年~100年以上の古民家をリノベーションして宿泊可能にした施設。
・ターゲット:インバウンド富裕層(欧米中心に「日本の伝統家屋体験」を求める層)。
・希少性:古民家活用自体は全国に広がっているが、本格的にラグジュアリーホテル水準にリノベした事例はまだ少ない。
・開発のしやすさ:既存古民家を活用できるので、土地取得コストが低い。ただし耐震補強・消防基準・断熱改修などのコストが高くなる場合がある。補助金・助成金(空き家再生・文化財活用)を活用すれば収益性を高めやすい。
・事例:NIPPONIAシリーズなど。

12. 宿坊

・特徴:寺院や神社の敷地内で宿泊できる施設。座禅・写経・写仏・精進料理など、宗教体験とセットになっている。
・ターゲット:インバウンド観光客や国内のスピリチュアル志向層。企業研修に活用されるケースもある。
・希少性:全国的に「宿坊」は一定数、存在。(高野山・善光寺・比叡山・身延山など)
・開発のしやすさ:既存の寺院と提携する場合は、施設改修だけで運営可能。許認可は宗教法人側が主体になるため、一般ホテルより調整が複雑。
・事例:覚林坊(山梨・身延山)など

覚林坊(山梨・身延山)

13. 泊まれる城をコンセプトにしたホテル

・特徴:城や城郭を改修して宿泊可能にした施設。外観は歴史的建造物を維持、内部は快適なホテル仕様に改装。
・ターゲット:海外富裕層(日本文化体験を求める層)、歴史好き・城マニア層。
・希少性:日本国内には泊まれる城は少ない
・開発のしやすさ:既存城郭を改修する場合:文化財保護法・耐震・消防規制が課題で難易度は高い。
・事例:「大洲城キャッスルステイ」は、1日1組限定、2名で1泊100万円。

14. 海外体験をテーマにしたホテル

・特徴:デザイン・食・サービスを特定の国や地域になぞらえ、「擬似トリップ体験」を提供。
・ターゲット:海外文化への関心が高い層やSNS映えする宿泊施設を好む層。
・希少性:事例が少なく、希少性は高い。話題になりやすく開業当初の集客効果がある。
・開発のしやすさ:専門的なデザインや設計が必要なため、難易度は高い。
・事例:モンゴルをテーマにしたモンゴリアビレッジ テンゲル(栃木)、エーゲ海に浮かぶ絶景の島を再現したヴィラサントリーニ(高知)、中世英国の世界をコンセプトにしたブリティッシュ・ヒルズ(福島)など。

15. バー・ホテル(泊まれるバー)

・特徴:チェックイン18時~/チェックアウト14時など、独特な時間設計。数百種類のアルコールメニュー。
・ターゲット:バー好きの大人世代(30〜50代)、カップル・夫婦による記念日などの利用想定。
・希少性:宿泊業界全体でも類例が少なく高い独自性がある。
・開発のしやすさ:バーテンダーの確保や酒類原価管理が課題となる。
・事例:bar hotel箱根香山。ワイナリー併設型ホテルも同様のニーズを捉えている。

特定の顧客にターゲットを絞ったホテル

趣味や文化を切り口にしたホテルが体験価値で差別化を進める一方、近年は特定の顧客層に深く寄り添う宿泊モデルも広がっています。安心感や多様性への配慮といった観点は、旅行者の選択理由として大きな比重を占めるようになり、女性専用やLGBTQフレンドリーなど、明確なターゲットを意識したホテルの開発が注目されています。

1. 女性専用ホテル

・特徴:女性向けセキュリティ、美容設備、アメニティ充実。
・ターゲット:女子旅、単身女性。
・希少性:安心+美容を両立する宿はニッチながら需要増。
・開発のしやすさ:都市型小規模ホテルで導入しやすい。
・事例:翠蝶館(北海道)、姫宿花かざし(愛知)、染物と宿の中島屋(熊本)など。

2. LGBTQフレンドリーホテル

・特徴:コミュニティイベントや文化理解を前提にした運営。
・ターゲット:LGBTQ層、海外観光客。
・希少性:多様性配慮型ホテルは海外では進んでいるが日本では希少。
・開発のしやすさ:運営方針とマーケティング次第。設備的ハードルは低い。
・事例:CEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉ(東京)、マリオット・インターナショナルのラグジュアリー・ライフスタイルホテルブランド「W大阪」など。

まとめ

近年のホテルは、温泉や立地だけでなく「食」「ライフスタイル」「ペット」「ウェルネス」など、幅広い価値の切り口で注目を集めています。高級ヴィラや古民家、宿坊、体験特化型の施設など、選択肢は多岐にわたり、それぞれに特徴や課題があります。

開発や経営にあたっては、自社の強みや地域性を踏まえ、無理のない形で取り組みやすいモデルを選ぶことが、長期的な成果につながると考えられます。

本稿でご紹介したホテルコンセプト事例は、あくまで一例に過ぎません。実際の開発や運営にあたっては、地域性や事業者ごとの強みに応じて適切なモデルを選択することが重要かと思います。本記事が少しでも企画や検討の参考になれば幸いです。

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