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【ホテル再生事例】リノベーションで年商3倍を実現する方法|投資・補助金・設計戦略

〜収益性あるコンセプト設計と投資判断〜

近年、国内のホテル業界では新築開発よりも リニューアル・リノベーション に注目が集まっており、人口減少や建設費高騰を背景に、「既存資産をどう活かすか」が重要なテーマとなっています。

特に収益性のあるコンセプトを打ち出せるかどうかが、投資の成否を大きく左右します。

この記事では、ホテルリノベーションを検討する経営者・開発担当者に向けて以下3点において企画段階で押さえるべきポイントを解説します。

・ 収益性あるコンセプトの条件
・ 実際のリニューアル事例と投資回収の実態
・ 補助金の活用可能性

ホテルリニューアル・リノベーション成功の秘訣【前編】

1. 収益性あるコンセプトの条件

リニューアルや改装を検討する際にまず重要なのは、需給ギャップの有無であり宿泊ニーズが強いが供給が限られている分野は高収益化しやすいと言えます。

例えば、一般的な温泉旅館を改装しても周辺に同業が多ければ価格競争に巻き込まれます。しかし、 ペットツーリズム対応施設のように需給ギャップが大きい分野は、成功すれば稼働率・単価ともに高い成果が期待できます。

特に、 ドッグランを設置できる広い敷地 を持つ物件は有利です。都市近郊や観光地の保養所跡地などは、国立公園や自然公園法の特別地域に指定されていることも多く、大規模に商業施設を建てにくい代わりに余剰敷地を活かしたドッグリゾート化が可能です。

ここからは、リニューアル後の集客に苦戦している事例と再生成功事例を紹介します。

2.【苦戦している事例】富士五湖の和オーベルジュ

一方で、一見ユニークでも需要が少なければ赤字化してしまう例もあります。

人気観光地である富士五湖の保養所をホテルへリフォームした事例です。眺望が良い面を活かし、高級化を目指すためにワンフロア(約200㎡)で1室という大胆な改装計画を立案しました。

ところが、当初、実現可能と思われていた壁面が建物の構造計算に加わっているため、開放感のある客室を作ることが難しくなりました。

そのため、客室が分断された中で再生計画を立案し直すことになり、今、思えば中途半端な計画でリノベーションが進んでしまいました。

海外インバウンドを狙い、サービス面や設備面にはかなり特徴的な内容としていますが、集客状況は苦戦、月商は3部屋合計で200万円前後という状況で推移しています。事業再構築補助金を活用できたため、投資負担は1.2億円ほどでしたが、赤字の月も散発している状況のため、大変効率の悪い投資になってしまった事例です。

3.【再生事例①】京都プレザントホテル

2022年3月、破綻した京都シティホテルを再生した事例もあります。従前は、客室数74室、宴会場や大浴場も備え、ビジネス客や修学旅行に対応していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて21年1月期の年間収入高は約4,800万円に落ち込んでいました。

2023年、建物土地所有オーナーよりご相談を受け、約3億円のリノベーション費用をかけて再生しました。

ターゲット層を国内若年層インバウンドのFIT旅行者に選定し、宴会場はゲームコーナーや漫画コーナーへ、大浴場はリネン室へリフォームし、京都プレザントホテルへと生まれ変わりました。

京都市内はJR京都駅周辺や四条河原町にインバウンド需要が集中している一方、京都プレザントホテルは少し離れた今出川地区にあるため集客しやすい立地とは言えませんでしたが、徐々に認知度が高まり、桜や紅葉のシーズンは月商1,700万円~2,200万円で推移しています。

大浴場や宴会場の運営を行わないことで、宿泊特化型ホテルへ転換、固定費を大幅に抑えた運営で収支は黒字化しています。

4.【再生事例②】レイクサイドテラス琵琶湖

滋賀県では、県職員共済組合の保養所を改修し、 グランピング併設のアウトドアリゾート「レイクサイドテラス琵琶湖」 として再生しました。

総事業費約 6億円(18室)をかけ、以下のポイントで改修を行いました。

【改装のポイント】
・宴会広間を共有ラウンジやライブラリーに転換
・琵琶湖でのSUPやアクティビティを導入
・掘削した天然温泉を各客室に供給
・サウナを一部の客室に導入

結果として、 客単価の大幅アップ に成功し、黒字化を果たしました。団体需要が衰退した保養所でも、個人旅行需要に合わせたリニューアルで再生できることを示す好例です。

5.【再生事例③】グランデオーベルジュリゾート富士忍野

山梨県忍野村では、コロナ禍で閉鎖したホテルをリノベーションし、愛犬家向けの小規模オーベルジュに転換しました。

改装費用:約 2億円
客室数:4室
稼働率:約75%~80%
1室あたり売上高:約3000万円(予想)
投資回収期間:約 5年

小規模ながらも高収益を実現した背景には、ペット同伴需要の強さと、高単価でも稼働が埋まる市場性がありました。これは「収益性あるコンセプト」の典型的な成功例です。

グランデオーベルジュリゾート富士忍野の実績(2025年4月~9月※9月は暫定値)

科  目2025.4~2025.9売上比
売上高50,154,639100.0%
売上原価5,711,81111.4%
売上総利益44,442,82888.6%
給与手当5,051,68510.1%
法定福利費651,9381.3%
旅費交通費251,0560.5%
通信費110,1480.2%
消耗品費5,183,66410.3%
水道光熱費3,583,0197.1%
支払手数料3,867,4427.7%
車輛維持費12,1170.0%
地代家賃3,000,0006.0%
租税公課5,4700.0%
減価償却費6,995,70613.9%
雑費122,5350.2%
販売管理費合計28,834,77957.5%
営業利益15,608,04931.1%
GOP(営業利益+減価償却費)22,603,75545.1%

6. 新事業進出補助金の活用で投資リスクを軽減

リニューアル費用を抑えるには、国や自治体の補助制度を活用するのが有効です。

かつては「事業再構築補助金」がホテルリノベーションでも利用されましたが、現在は 「新事業進出補助金」 が後継制度として注目されています。

以下の要件を満たせば採択の可能性があり、数千万円単位の補助金が得られる場合もあります。

・新規分野への事業転換
・地域資源を活かした高付加価値化
・環境・デジタル対応

ホテル改装・改修の予算を組む際には、この制度を織り込むことで資金調達のハードルを下げられます。

7. 企画段階でのチェックポイント

ホテルリニューアルを企画する際には、次の視点で検討すると失敗を避けやすくなります。

・ ターゲット設定は明確か(ファミリー・シニア・愛犬家など)
・ 需給ギャップがある市場か(ペット・ウェルネス・高級志向など)
・ 投資回収のシミュレーションをしているか(ADR×稼働率)
・ 競合との差別化が可能か(独自の強みを打ち出せるか)
・ 補助金や金融機関の理解を得られる計画になっているか

まとめ(前編)

ホテルリノベーションやリニューアルを成功させるためには、単なる改修工事ではなく、収益性のあるコンセプト設計が不可欠です。

忍野村や滋賀県などの成功事例が示すように、以下が黒字化・高収益化の鍵となります。

・ 需給ギャップのある市場を狙うこと
・ ターゲットを明確化すること
・ 投資回収をシミュレーションすること

 後半では、実際の改装・改修の具体的手法や設計ポイント、費用の目安、最新の高級化トレンド に踏み込みます。

ホテルリニューアル・リノベーション成功の秘訣【後編】

〜設計・改装の実務と収益性を高める工事ポイント〜

前編では、ホテルリニューアルの企画段階における 収益性あるコンセプト設計 と成功事例を紹介しました。

後編ではさらに踏み込み、実際のホテル改装・改修の工事方法、予算感、最新トレンドを解説します。単なるリニューアルにとどまらず、高級化・高付加価値化 を実現する具体的なアプローチを整理しました。

1. 客室の改装トレンドと設計の工夫

客室の統合・拡張リノベーション

近年多いのは、複数の客室をひとつにまとめる大規模リノベーションです。

団体旅行が減少傾向にあるため、個人旅行ファミリー需要の増加に合致した改修が求められます。また、広めの客室でプライベート性を高めることで ADR(平均客室単価)を引き上げられます。

和室からモダン和風への改装

従来の大広間や和室を、ベッドを備えたモダン和風デザインへ改修する事例も増えています。

和モダンでも、布団はインバウンド層のウケが悪いケースが多いため避けた方が無難でしょう。また、琉球畳や木材を活かしたインテリアも好まれます。

黒やブラウンのダークトーンを基調にした高級感演出

ダークトーンを基調としたインテリアによって高級感が演出され、単価UPも可能です。実際に、バケーションレンタルで、ホワイト基調とブラック基調ではブラックの方が予約が多く入る傾向にあります。これは、冬季にもダーク基調の方が予約が入りやすいと言えます。

こうした設計は、比較的少額の改装費用でも効果的に高級ホテルのような印象を作れます。

2. 共用部のリニューアルで生まれる付加価値

広間からラウンジ・ライブラリーへ

かつて団体用の大広間として使われていたスペースを、以下のようなコンテンツに転換する事例が増えています。

・ ラウンジ(お菓子や飲み物のインクルーシブサービスを組み合わせると集客力が増す)
・ ライブラリー(高級感を演出する)
・ 子供用プレイルーム(未就学児童を集客できれば、平日稼働が高くなる)
・ 室内ドッグランを設置(ペットホテルとして雨の日も集客可能)

特に、個人旅行者に合わせた共用空間づくりは差別化のポイントになります。

屋外スペースの活用

屋外では、以下のような体験型要素を導入するのが効果的です。

・ ウッドデッキやテラスを新設
・ 焚き火台を置き、アウトドア感を演出
・ スペースがあればドッグラン(1F客室に隣接している場合、個別ドッグランにすると数字が跳ねる)

焚き火や星空観賞など、ちょっとしたアウトドアの体験型要素を組み込むことで、SNS映えと口コミ拡散効果を狙えます。

3. 温泉・サウナによる高級化戦略

・ 客室温泉(1部の客室でも導入できれば、ブランド化は進めやすい)
・ 客室温泉付きにすれば客単価が2割以上上昇する例も多い
・ 検索キーワードやOTAの検索条件の「客室温泉付き」に対応でき、集客の間口が広がる
・ 貸切風呂(設計上、客室温泉が難しい場合に検討。大浴場より水光熱費が抑えやすい)
・ サウナの導入(アウトドア系であれば薪ストーブ系サウナがヒットしやすい)
・ サウナで集客の間口を広げる(「サウナイキタイ」などのメディアへの露出で認知度UP)

個別の温泉風呂や貸切風呂を導入するリノベーションは、近年の代表的な高級化手法です。

温泉については、濃縮技術を研究している企業があるため、今後は導入のハードルが下がる可能性が高いと言えます。サウナは特森林や湖畔など自然立地との相性が良いため、郊外型施設では検討する価値があります。温泉もサウナも冬季集客に武器になるので、冬季の集客が弱くなるエリアでは検討価値が高いと言えます。

4. 料理・ソフトコンテンツの改修

建物の改装に加えて、料理やサービス内容を見直すことで大きな収益改善につながります。

・ 【効果大】昭和的な会席スタイル→イノベーティブ系料理へ変更
・ 食器や盛り付けスタイルを一新(画像には徹底的にこだわる。専門家へ依頼するとベター)
・ 地産地消のストーリー性を打ち出す(カニや牡蠣など目玉になる食材があればコンテンツ化する)
・ 地域文化体験を宿泊プランに組み込むと、SNSでの拡散効果や差別化に有効
・ ペット対応する場合、ペットの食事やアメニティを追加(愛犬の誕生日などアニバーサリーニーズが実は多い)

上記のような取り組みで、ハードとソフトを一体化してリニューアルすることで、収益性の高い「体験型ホテル」へと進化します。

5. 工事費用と予算感の目安

ホテルのリノベーションには、幅広い費用レンジがあります。

・ 超小規模改修(家具、照明器具、床面の剥離コーティングなど):数百万円規模
・ 小規模改装(和室からベッド化・内装更新):数千万円規模
・ 客室統合・貸切り風呂導入:1億〜2億円規模
・ 全館大規模改修(温泉掘削・新棟追加含む):数億〜10億円規模

再生事例で紹介したグランデオーベルジュリゾート富士忍野の改装費用は約2億円であり、投資回収は約5年と見込んでいます。リフォーム費用には、既存建物の解体工事費を約2,000万円含んでいます。

そして、滋賀県のレイクサイドテラス琵琶湖の総事業費は約6億円でした。ホテル用の客室は10部屋から5部屋にリノベーションしており費用は約1.5億円かかりました。そして、既存コテージの改修やグランピングの新設で約4.5億円を追加投資しています。投資回収期間は土地取得費も事業費に含んでいるため、約8年を見込んでいます。

このように、規模、コンセプト、不動産条件により、投資額と回収期間は大きく変わる ため、事業計画を精緻に作る必要があります。

6. 補助金と資金調達の工夫

現在は「新事業進出補助金」がリノベーション資金に活用可能です。

・新しい市場ニーズに応える改修
・地域資源活用や観光振興
・デジタル・環境対応
・金融機関との連携
・投資回収シミュレーションを具体的に提示

弊社グループでも認定支援機関の資格を持つ㈱グランシーズが新事業進出補助金の申請について上記のようなサポートを実施しております。ご関心があれば、お問い合わせください。

7. チェックリスト:リニューアルで失敗しないために

最後に、リニューアルで失敗しないために以下の項目を確認してみましょう。

・ 改修目的は「高級化」か「収益安定化」か?
・ ターゲット(ファミリー、シニア、ペット、富裕層)は明確か?
・ 客室設計に一貫性があるか?
・ 共用部に新しい価値を与えられているか?
・ 温泉・サウナなど「高単価要素」を導入しているか?
・ 料理やサービス内容も刷新しているか?
・ 投資回収シミュレーションを行っているか?
・ 補助金や融資を活用しているか?

まとめ(後編)

ホテルリノベーション・リニューアルを成功させる鍵は、設計と工事の段階でどれだけ収益性を意識できるか にあります。

・ 客室の統合や和モダン化で単価を高める
・ 共用部のリニューアルで体験価値を追加する
・ 温泉・サウナ・料理の刷新で「高級ホテル」路線へ導く
・ 補助金や資金調達を活用して投資リスクを軽減する

単なる改修ではなく、「収益性を最大化するリノベーション」こそが、今後のホテル経営の成否を分けるポイントです。

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