日本のリゾート地は、近年オーストラリアやシンガポールを中心とする外国人投資家から熱視線を浴びています。
円安による割安感、日本の法制度の安定性、そして世界的に認知されるスキー・リゾートや南国リゾートのブランド力が背景にあります。
その中でも特に注目度が高まっているのが、白馬・妙高・富良野・宮古島の4エリアです。ニセコに続く「第二の世界的リゾート」を目指し、外資系ラグジュアリーホテルやコンドミニアムの建設ラッシュが続いています。
この記事では、4つのエリアの現状と不動産会社や宿泊業者が外国人投資需要をビジネスチャンスに変える方法について紹介します。
外国人投資家が注目する4エリア
1. 妙高|シンガポール資本が仕掛ける2000億円級リゾート開発

新潟県の妙高高原は豪雪地帯として知られ、年間降雪量は16メートルを超えます。ここに今、シンガポールの元政府系投資ファンドGIC日本支社代表を務めたケン・チャン氏が率いる、ペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG) が大規模投資を行っています。
PCGは2019年の設立以来、円安を追い風に妙高周辺の土地を買い進め、2026年までに高級ホテルや従業員用住宅を整備する計画を発表しました。投資総額は約14億ドル(約2,080億円)規模にのぼり、日本のリゾート開発としては過去最大級のプロジェクトの一つといえます。
チャン氏は「このプロジェクトはかばんに入れてシンガポールに持ち帰ることはできない。これは恒久的なものだ」と語り、地域密着型の長期投資姿勢を強調しています。背景には、日本文化への理解の深さや、地元経済人との強固な人脈があります。
投資資金の調達においても、海外機関投資家・個人投資家・日本の銀行や地銀をバランスよく組み入れることで、安定した資本基盤を築いています。こうした信頼性が、妙高を「第二のニセコ」に押し上げる推進力になっています。
2. 白馬|ブランド力と地価上昇で国際的投資対象に

長野県白馬村は、1998年長野冬季五輪を契機に国際的に知られるようになったスキーリゾートです。シンガポール資本による高級ホテルやコンドミニアムが続々と開業し、2024年には商業地価格が前年比30%超の上昇を記録しました。
白馬が注目される理由は、豊富なスキー資源に加え、「国際ブランド」としての知名度、そして相対的な不動産価格の割安感です。欧米やオーストラリアの投資家にとっては「世界的に知られるリゾートをリーズナブルに所有できる」ことが大きな魅力となっています。
3. 富良野|二毛作型リゾートとして安定収益

北海道富良野は、冬のスキー、夏のラベンダー畑という「二毛作型リゾート」として注目されています。香港やシンガポール資本によるホテル・コンドミニアムが完売する事例も相次ぎ、通年での観光需要を背景に投資が拡大しています。
特に2億円超の分譲物件が短期間で完売した事例は、富裕層投資家の購買力と、日本リゾート不動産の割安感を象徴するものです。
4. 宮古島|外資ホテルラッシュでリゾートブランド化

沖縄・宮古島では、ヒルトン、ローズウッドなど世界的ブランドが続々進出し、住宅地価格の上昇率は全国トップクラスを記録。透明度の高い海と3時間以内のアクセスが評価され、シンガポールや香港の富裕層にとって「アジア圏で手に届く南国リゾート」として位置づけられています。
白馬・妙高・富良野・宮古島は、それぞれに特徴を持ちながらも、共通して 「外資資本が地域ブランドを押し上げ、不動産価格を牽引している」 という点で一致しています。特に妙高では、シンガポール資本による2000億円規模の投資が進行しており、今後の日本リゾート市場を大きく変える可能性を秘めています。
後半は、こうした外国人投資需要を不動産会社や宿泊業者がどのようにビジネスチャンスとして取り込むべきか、具体的な新規事業の方向性を検討します。
不動産会社や宿泊業者が外国人投資需要をビジネスチャンスに変えるには

1. 外国人投資家が求める条件
外国人投資家は、日本リゾートに対して下記のように「資産性」と「体験性」を同時に求めています。
・ 安心できる所有権と法制度:所有権が明確で、安定的に保有できることが前提。
・ 即収益型投資:購入後すぐに稼働できる「ターンキー型宿泊施設」が好まれる。
・ ブランド価値:ラグジュアリーホテルや国際的ブランドとの連携で資産価値を高めたい。
・ 地域共生:地元住民との摩擦を避け、ESG投資としての価値も重視。
2. 国内事業者にチャンスがある新規事業の具体例
外国人投資家の関心が高まる一方で、国内事業者にとっては新たな収益機会も広がっています。
ここでは、具体的に取り組みやすい4つの方向性を紹介します。
1. 運営代行・管理サービス
外国人投資家にとって最大の不安は「運営体制」です。
遠隔地からの管理や人材確保にはハードルがあり、信頼できる日本の運営パートナーを求める声は年々増えています。
宿泊施設の運営代行や別荘管理を請け負うことで、管理費や手数料を安定的に確保できるモデルが成立します。
特に地方では、既存の清掃・メンテナンス網を活かしてスケールできる余地があります。
2. ラグジュアリーホテルのM&A仲介
地方では後継者不足により、売却を検討する旅館・ホテルも少なくありません。
こうした施設を外国人投資家に仲介し、リノベーションや再ブランド化までを一貫して支援すれば、仲介手数料に加えて設計・改修受託などの二次収益も生まれます。
単なる「物件売買」ではなく、「資産価値を再設計するM&A仲介」として付加価値を高めることが重要です。
3. 投資視察ツアー(インバウンドDMCとの連携)
富良野や宮古島のように観光資源の豊かな地域では、不動産視察に観光体験を組み合わせた「投資視察ツアー」も注目されています。
現地の文化や自然に触れる体験を通じて、投資対象への理解を深めてもらう仕組みです。
これは旅行会社やDMCと連携することで、単なる販売ではなく「体験型投資提案」として高単価化が可能になります。
4. 地域共生型開発コンサルティング
今後、外資系投資が進む中で最も求められるのが「地域との共生」です。
単なる通訳ではなく、文化的背景まで理解した“地域の翻訳者”として、地元ルールや景観規制を丁寧に外国人投資家に説明できる事業者の存在は貴重です。
行政や住民との調整を含めた「共生型コンサルティング」は、開発を円滑に進めるための重要な橋渡し役となります。
この4分野はいずれも、すでに日本の宿泊・不動産事業者が持つ強みを活かせる領域です。
運営ノウハウ、地域ネットワーク、現場の実行力を組み合わせることで、外資投資を「地域価値の再生」へとつなげていくことができます。
まとめ 新潟・妙高のプロジェクトから学べること
PCGの妙高投資は「長期視点での地域ブランド化」です。単なる短期投資ではなく、ホテル建設や従業員住宅整備などを含む包括的な開発は、地域経済を底上げするモデルとなり得ます。
こうした投資家との協働の中で、不動産会社や観光業者は「地元と外資をつなぐ橋渡し役」としての立場を確立できる可能性があります。
白馬・妙高・富良野・宮古島は、外資投資によって急速にブランド価値が高まるエリアと考えられます。
不動産事業者にとっては、運営代行・M&A仲介・投資ツアー・地域共生コンサルなど、さまざまな収益モデルが成立する可能性があります。
特に妙高で進行する 2000億円級のシンガポール資本プロジェクトは、日本リゾート市場が次の段階へ進む象徴的な事例です。今後10年、日本リゾートは「資産+体験+共生」を兼ね備えた持続可能な投資対象へと変貌していくでしょう。
外資資本の流入は、地方にとってリスクではなくチャンスでもあります。
ヒノトアでは、こうした動きを地域の活性化と事業者の収益化の両立につなげるためのモデル設計を行っています。
今後も「海外投資×地方リゾート」の最前線を追っていきます。














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