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天橋立ナイトウォークが教えてくれた、“夜の観光”が地域を変える力

おもしろいデータを見つけたので、今回はその紹介と今後の活用について紹介します。

題材は、2022年秋に宮津市で行われた「天橋立ナイトウォーク」

夜間の観光需要を生み出し、滞在時間を延ばすことを目的に実施された実証事業です。

夜の天橋立を歩くという実験「宮津天橋立ナイトウォーク」

この実証事業はコロナ禍の影響が薄まりつつあった3年前に実施されたものです。

目的は、「夜に楽しめる体験をつくり、宿泊を促進すること」

実施期間は2022年10月14日~2022年11月13日の約1か月間。

天橋立駅周辺から大天橋、天橋立神社にかけて、ライトアップ・プロジェクションマッピング・サウンド演出を組み合わせた参加型×鑑賞型の無料イベントが開催されました。

1. 地方観光地に共通する課題解消に向けたイベント

宮津市は、地方観光地に共通する以下の課題を抱えていました。

・ 観光消費額・宿泊客数の伸び悩み
・ 「通過型観光」への陥り
・ 夜に楽しめる場の不足
・ 宿に泊まっても「夜にやることがない」

そんな声を変えようと、地域ぐるみで挑戦した取り組みでした。

2. イベントでわかった”SNS映え”より重要なこと

この事業では、明確な数字の成果が出ました。

【主な実績データ】
・ 参加者数:1,758人(目標1,000人/達成率175%)
・ 市外参加者比率:91.5%
・ 宮津市内宿泊率:83%
・ 満足度:80%以上(非日常・癒し・絆が主要要因)

特に注目すべきは、開催時期が観光の閑散期(10月中旬〜11月中旬)だった点です。

データでは土曜日に偏りが見られましたが、オフシーズン集客に効果があったことを示しています。

アンケート結果からは、公共交通利用の割合が高かったことも分かりました。シニア層の参加率が一定数あったことが要因と考えられます。

参加者は「SNS映え」よりも、“心の充足感”や“非日常性”を重視。

提灯の貸出体験も好評で、有料化すれば500円程度の価値を感じると答えた人も多くいました。

3. 成果と課題 ― 続ける仕組みがあるか

成果面では、行政・観光事業者・クリエイターの連携が功を奏し、集客に効果があった点で成果があると言えます。

一方で、こうした実証事業が抱える共通課題も浮かび上がりました。

それは「やって終わりになりやすい」という構造的な問題です。

実際、現在では天橋立砂浜ライトアップを除き、継続的な夜間イベントは行われていません。

この成果をどう継続させ、地域経済につなげていくか――

“イベント × 飲食 × 体験 × プロモーション”を一体化させ、夜の経済(ナイトエコノミー)として自走できる仕組みが必要です。

観光が少ない時期に「灯りを絶やさない発想」を持つことが、地域観光の生命線になると思います。

広域型かつ長期運用可能なナイトイベントが有利

1. 3,000万円投じて失敗したイルミネーション事例

私たちも、グランピング施設の開発・運営を通じて同じ課題を感じています。

たとえば、富士河口湖で約3,000万円を投じたイルミネーション投資は、「単体では予約動機に結びつきにくい」という反省がありました。

GV河口湖
※集客に結びつかない投資だった可能性

単施設ではなく、広域型のナイトコンテンツとして展開する必要があるのです。

宮津市の実証事業では、来訪者の居住地分析広報施策も詳細に整理されていました。

これを応用すれば、弊社が運営する京都・天橋立エリアにある100棟以上の宿泊施設を横断する夜のプログラムとして再構築できるかもしれません。

テレビやSNSで話題化できれば、冬季の集客にも波及するでしょう。

2. サステナブルなライトアップイベント事例

このような取組みを続けるには、ランニングコストを抑える工夫も必要です。

参考になるのが、湘南のイルミネーションイベント「湘南の宝石」

ここでは植物発電ボタニカルライトという技術を活用し、電源を使わず植物の生命エネルギーで光を灯しました。

蛍のような柔らかい光が人々を癒し、環境負荷の少ないサステナブルな演出として注目されました。

こうした技術を取り入れれば、「夜の演出」にも持続可能性を持たせることができます。

文化 × 食 × 夜を結ぶナイトエコノミーへ

天橋立があるエリア・京都丹後には酒蔵が多く、日本酒クラフトウイスキーをテーマにしたナイトイベントとの親和性が高い地域です。

外国人旅行者にとっても、日本酒は人気の文化コンテンツの一つ。酒と光を組み合わせた夜のイベントは、インバウンド誘致の起爆剤になり得ます。

さらに、イチゴ狩りや果実系カクテルづくりなど、省人化しながら映える夜の体験を設計すれば、SNSや口コミサイトでの話題化も狙えます。

天橋立ウォークでは、約60%の参加者が近隣で宿泊しましたが、40%程度の方は日帰りだったそうです。お酒をテーマにした企画も織り交ぜることで、宿泊率をもっと高められる可能性もあります。

まとめ― 続けることが“観光”を変える

「天橋立ナイトウォーク」は、夜間観光が地域を動かす可能性を数字で証明した事例でした。

しかし、本当の価値は“結果”ではなく、“続ける仕組み”を生み出せるかどうかにあります。

夜の観光は、地域を動かす「新しい灯り」になるかもしれません。私たちもその灯りを絶やさないよう、次の実験を続けていきたいと思います。

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