「SNS広告って必要?でもどこから手を付けたら…」――そんな疑問をお持ちのホテル・旅館運営者に向けて、この記事では成果を出すための最短ルートを提示します。
インスタグラムとGoogleの広告戦略に絞り、労力を成果に直結させるための優先順位と実践ポイント、さらにUGCや口コミの活かし方まで紹介します。
まず「何に集中すべきか」を整理する
WEBマーケティングやSNS広告のノウハウを知りたいという声は、ホテルや旅館の現場でとても多く聞かれます。Googleで検索すると、たくさんの記事や解説が見つかりますが、どれも総花的で「結局、何から手をつければいいか分からない」と感じてしまう方も少なくありません。
また、SEO(検索エンジン最適化)やペルソナ設計といったテーマもよく取り上げられますが、実際の現場で使いやすいノウハウになっていないケースも多いように思います。限られた人員と予算で運営している施設にとっては、「優先順位が明確になっていない施策」に時間を割いても成果が見えづらいものです。
そこで、まずはホテルや旅館が「まず集中すべき施策」と「取り組む際の現実的な注意点」を整理していきます。
最短ルートはインスタグラム広告とGoogle広告
小規模から中規模の施設がまず習得すべきなのは、インスタグラム広告とGoogle広告の2つです。
理由はシンプルで、この2つがもっとも売上インパクトを出しやすいからです。
● インスタグラム広告:写真や動画を活用し、旅行気分を刺激できる
● Google広告:旅行を検討している人に検索結果経由でアプローチできる


OTA(楽天トラベルやじゃらんなど)への依存を完全に否定する必要はありませんが、OTAだけでは利益率が圧迫されがちです。そこで、自社で広告運用を覚えていくことが「収益性を高める第一歩」といえるでしょう。
1. SEOやペルソナ設計は優先度が低い
一方で、SEOに力を入れることは施設単体では効果が出にくいのが現実です。
「地名+温泉」「地名+グルメ」などで記事を作成しても、大手OTAが同じテーマで大量の記事を更新し続けているため、検索順位で勝ち続けるのは至難の業です。
また、「ペルソナを考えて宿泊プランを作れ」といった提案もよく目にしますが、BtoBビジネスとは異なり、宿泊業では具体的な個人像を細かく作り込んでも大きな差別化にはつながりにくいのが実情です。
例えば「40代男性・IT企業勤務・Wi-Fi必須」といった設定をしても、今やほとんどのホテルでWi-Fiは当たり前に整備されているため、強みとして訴求するのは難しいでしょう。こうした理由から、限られたリソースをSEOや過度なペルソナ設計に割くよりも、広告の基礎を押さえた方が効果的です。
2. 広告運用でROIを高める鍵はUGCの活用
広告を打つ上で特に成果を上げやすいのが、UGC(User Generated Content:利用者が作ったコンテンツ)を活用した手法です。つまり、宿泊者やインフルエンサーが投稿した写真や動画を、そのまま広告クリエイティブとして活用するというやり方です。
なぜUGCが強いかというと、「実際に体験している様子」が伝わることで、広告を見た人が自分事として想像しやすくなるからです。ホテルが用意した公式写真よりも、利用者目線のリアルな投稿の方が共感を得やすく、クリック率や予約率の向上につながります。
UGC素材を効率的に集めるには、インフルエンサーや宿泊者のネットワークを持つ「UNFEE」への無料登録がおすすめ。
UGC活用の成功事例:アウラテラス茨城の取り組み
具体的な事例として、アウラテラス茨城では夏休みに「小学生以下の宿泊費を無償化する」プランを打ち出しました。ここで活用したのが、子連れインフルエンサーの投稿素材です。
実際に家族で訪れてもらい、子どもがピザづくりを体験する様子や、親子でヨガを楽しむ姿を撮影。その投稿をInstagram広告に展開したところ、1日に15件〜20件の予約が入る成果につながりました。前年同月比で売上が大きく伸びたのは、広告に「リアルな体験の魅力」を組み込んだからです。
「UGCを広告に活かしたいが、どこから始めればよいか分からない」という方には、弊社による広告運用の伴走支援もご用意しています。素材収集から広告配信、成果の見える化まで一貫しています。
ホテルや旅館にとって、WEBマーケティングの世界にはさまざまな選択肢がありますが、最初に押さえるべきは「インスタグラム広告」と「Google広告」。そして、その広告をより強力にするのはUGCの活用です。
派手な戦略や机上の空論ではなく、現場で実行可能で、実際に予約に直結する施策から取り組むことが、最も効率的な一歩になるはずです。
広告運用のコツ
1. ターゲットを大きく3分類する
WEBマーケティングやSNS広告を考えるとき、最初に悩むのは「誰に向けて発信するか」ではないでしょうか。細かくペルソナを作り込む必要はありませんが、宿泊施設の場合は「大きな分類」で整理しておくと広告設計がスムーズになります。
多くの観光系宿泊施設で効果的なのは、次の3つです。
● ファミリー層(子連れ旅行)
● 女子旅グループ
● 夫婦・カップル層
この3つの分類に沿って、シーズンごとに広告素材を準備していくことが現実的であり、最も効率的なアプローチです。
―ファミリー層向け:体験と安心感が鍵
ファミリー層に向けた広告では、子どもが楽しんでいる様子を伝えることが大切です。
例えば「子どもがプールで遊んでいる」「親子で体験アクティビティを楽しんでいる」といった写真や動画は、親が「自分の子どもも同じように楽しめそう」とイメージしやすく、共感を得やすい素材となります。
また「子ども料金の割引」「小学生以下無料」といった特典も、訴求力が非常に高いです。
実際に、アウラテラス茨城の事例では、子ども無料プランを打ち出した広告が大きな成果を生みました。

―女子旅グループ向け:写真映えと非日常感
女子旅をターゲットにした広告では、「写真映え」と「非日常感」を強調するのが効果的です。
例えば、色鮮やかな料理、夜空に映える露天風呂、自然に囲まれたグランピングテントなど、思わずシェアしたくなるような要素がポイントになります。
広告のクリエイティブには、単なる施設写真ではなく「楽しんでいる人」を映すことが重要です。人物が写っている方が視覚的にイメージしやすく、広告のクリック率も上がる傾向があります。
―夫婦・カップル層向け:特別感と癒し
夫婦やカップルをターゲットにする場合は、「特別感」や「癒しの時間」をテーマにした素材が有効です。
結婚記念日のディナー、プライベートな露天風呂、夜景の見える客室など、「二人だけの時間」を感じさせるビジュアルが響きます。
特にカップル層は「次の記念日に行ってみたい」と思わせるタイミングで広告を出すと効果的です。バレンタイン、ホワイトデー、クリスマスといったイベントに合わせた訴求も検討できます。
2. 余裕をもって広告素材を揃える心がけを
実際のところ、ターゲット分類ごとにシーズンごとの広告素材を揃えるのは簡単ではありません。
インフルエンサーに依頼しても、思ったような写真や動画が撮影できないことはよくありますし、素材を広告に使う許諾が得られないケースもあります。
経験則としては、100人に声をかけて3〜5人が意図通りの素材を提供してくれるという感覚です。思ったよりも歩留まりは低いため、余裕を持った依頼計画が必要です。
3. UGCを広告素材に活かす工夫
素材集めのハードルを下げるためには、宿泊者やインフルエンサーに「広告で使える投稿」を依頼する段階でしっかり伝えることが大切です。
たとえば「子どもがアクティビティを体験している様子」「女子旅で盛り上がっている場面」「カップルで夕日を見ているシーン」といったリクエストをあらかじめ共有しておけば、広告に活用しやすい素材を得られる確率が高まります。
また、許諾についても事前に合意しておくことが欠かせません。「広告に活用してもいい」という一文を入れておくことで、後から困るリスクを減らせます。
広告運用に関するまとめ
広告運用を実際に進める際の「ターゲット分類」と「素材準備」について整理します。
●細かすぎるペルソナ設定よりも、ファミリー・女子旅・夫婦という大きな分類で考える
●各分類に合った「楽しそうな人物の映像」を用意する
●素材を集める際は事前の依頼内容や許諾を明確にしておく
こうした取り組みを続けることで、インスタグラムやGoogle広告の効果が大きく変わってきます。
広告の成果を左右する「口コミ」の存在
WEB広告やSNS広告に力を入れても、最後の段階でお客様が必ず確認するのが「口コミ」です。
GoogleマップやOTAのレビューは、予約を決定づける重要な要素です。どんなに魅力的な広告を見て「泊まってみたい」と思っても、口コミ点数が3点台だと一気に不安が高まり、予約をやめてしまうケースが少なくありません。
つまり、同じ広告を配信していても口コミ評価の高い施設と低い施設では、予約転換率に大きな差が出ます。広告だけを改善しても、口コミの問題が残っているとROI(投資対効果)が思うように伸びないのです。
1. 低評価口コミが与える影響
3点台の施設がなぜ広告効果を落としてしまうのか。その理由はシンプルです。
ユーザーは「良い口コミ」よりも「悪い口コミ」の方を強く記憶する傾向があります。特に旅行という非日常にお金を使う際には、「失敗したくない」という心理が強く働きます。
そのため、いくつか低評価が混じっているだけで、「せっかく行こうと思ったのに不安になった」と判断され、予約ボタンを押す前に離脱してしまうのです。
広告は「興味を持ってもらうきっかけ」を作りますが、最終的なクロージングを左右するのは口コミといっても過言ではありません。
口コミ対策については、別記事「ホテル口コミ戦略最前線」で詳しく解説しています。口コミ依頼の工夫や低評価対応の具体例を知りたい方はぜひご覧ください。
>>ホテル口コミ戦略の記事はこちら
2. 普段からできる口コミ対策
口コミの評価を高めるために、日常的にできる工夫としては、次のようなものがあります。
● 宿泊後のフォロー:チェックアウト時に「もしよろしければ口コミの投稿をお願いします」と一言添える
● QRコードの設置:客室やフロントに口コミ投稿ページへ簡単にアクセスできるQRコードを掲示する
● ポジティブ体験の直後に依頼:例えば、夕食後に「お食事はいかがでしたか? よろしければぜひ感想を」と声をかける
こうした小さな働きかけが積み重なることで、自然とポジティブな口コミが増えていきます。
3. 低評価口コミへの向き合い方
低評価が入った場合も放置せず、返信をきちんと行うことで、他のユーザーに誠実な印象を与えることができます。
例えば――
「ご指摘ありがとうございます。清掃の件はすぐに改善に取り組みます」
「お食事の量についてご期待に沿えず申し訳ございません。次回はボリューム調整ができるプランをご案内できればと思います」
といったように、改善姿勢を示すだけで「この施設は真剣に向き合っている」と伝わります。結果として、多少の低評価があっても安心して予約を検討してもらえるようになります。
4. 長期的に広告効果を維持し繁盛施設へと成長する循環サイクル
WEB広告やSNS広告は、打ち出した瞬間に成果が出やすい施策ですが、長期的に成果を維持するには「口コミ改善」とセットで取り組むことが欠かせません。
● 広告で新しい顧客を獲得する
● 実際に泊まってもらい、満足度を高める
● 良い口コミを蓄積していく
● 次の広告配信の成果をさらに高める
という循環を作ることが、広告投資を最大化するための仕組みになります。
広告効果を左右する「口コミ」まとめ
広告効果を大きく左右する「口コミ」について解説しました。
● Google口コミやOTAレビューは最終的な予約を決める要因
● 低評価口コミは広告のROIを大きく下げる
● 普段から口コミ依頼を工夫し、投稿しやすい環境を整える
● 低評価への返信は誠実に行い、改善姿勢を見せる
広告だけに注力しても、口コミが弱ければ結果は伸びにくいものです。広告と口コミ対策を一体的に進めることで、短期的な集客と長期的な信頼の両方を手に入れることができるはずです。
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