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ホテル利益率は30%も可能?改善ポイントと実践アイデア

ホテルの利益率は平均わずか5〜10%。

人件費・光熱費・OTA手数料に押しつぶされ、多くの施設が「稼働率が上がっても利益が残らない」という悪循環に陥っています。

しかし一方で、30%近い利益率を叩き出すホテルも存在します。両者を分ける違いは何でしょうか?

実は、利益率改善のヒントは「業態特性」に隠れています。主に、スタッフ数を抑えても運営できるビジネスホテル、グランピング、貸別荘、コテージなどは、構造的に利益率を高めやすい業態と言えます。

なかでも、代表的なのがアパホテルです。国内最大級のビジネスホテルチェーンとして知られる同社の利益率は、30%を超える水準に達していると言われています。

こうした高収益の裏側には、単に規模のメリットだけでなく、「運営の仕組み化」が存在します。

本記事では、数社の利益率改善事例を見ながら、宿泊施設が利益を上げる方法について紹介します。

”食事提供の仕組み化”が利益率を押し上げる

ホテル経営で大きな比重を占めるのが「食事提供コスト」です。調理スタッフの人件費、厨房設備の維持費、原材料費…。これらをすべて一から賄おうとすると、規模の小さい宿泊施設ほど採算が合わなくなります。

そこで注目されているのが「セントラルキッチン」の活用です。星野リゾートも千葉県に拠点を持ち、一部の宿泊施設に冷凍の半製品を送る仕組みを整えています。弊社グループでも、高級宿業態の厨房で仕込んだ料理を冷凍・半加工の状態で各施設に供給し、現地では簡単な仕上げのみで提供する形を導入しました。

この方法により、現地に料理人を常駐させる必要がないうえに提供する料理のクオリティを一定水準に保てるようになりました。貸別荘やグランピングでは、BBQニーズ以外の「2人客」や「少人数旅行」の需要を取りこぼしがちですが、こうした仕組みを導入することで食事付きプランの幅を広がり、稼働率向上と収益性アップを同時に実現しています。このモデルで運営受託(MC方式)も行っていますが、オーナー企業様には高い収益性で大変喜んでいただいています。

また、アパホテルのように1階部分をテナント化し、飲食店やカフェを誘致する形も利益率改善につながる典型例です。駅近など立地に恵まれた施設では、飲食店側が出店を希望するため賃料収入を得られ、自前で食事提供コストを抱える必要がなくなります。

”三大コスト部門をそぎ落とす”戦略

ホテル経営で特にコストを圧迫するのが「レストラン」「宴会場」「大浴場」という三大部門です。人件費だけでなく、清掃や光熱費、修繕費が積み上がり、稼働率が低迷すると一気に赤字に転落するリスクをはらんでいます。

近年では、こうした付帯施設をあえて持たないホテルが増加しています。その背景には、人手不足の深刻化、婚礼需要の縮小、そしてコロナ禍での宴会需要の急減といった業界トレンドの変化があります。「宴会もレストランも大浴場も持たない」という選択肢が、結果的に利益率改善につながっています。

【事例あり】”コスト構造を大胆に刷新”で利益率改善

ここで、弊社グループが運営を引き継いだ京都市内のホテルの事例をご紹介します。かつては修学旅行の受け入れを主軸としていましたホテルですが低単価が続き、厨房や大浴場の維持コストに耐えられず赤字が慢性化。ついにはオペレーターが撤退し、破綻してしまいました。

その後、弊社はホテル所有者から運営委託の相談を受け、再建に乗り出しました。まず立地の弱点を踏まえ、家賃の減額に合意をいただきました。さらに約3億円を投じて全室をリノベーションし、レストランと大浴場は廃止。代わりにゲームコーナーを導入しました。

その結果、改装後は20%台の稼働率でも損益分岐点を超えられる収益構造に転換。京都特有のハイシーズン(春の桜、秋の紅葉)では一定の利益を確保できるようになりました。

この事例が示すのは、「コスト構造を大胆に見直すアイデア」で、利益率改善の突破口が開けるという点です。

ここまでは「業態特性」や「三大コスト部門の削減」を切り口に、ホテル利益率改善のポイントを紹介しました。

ここからはさらに踏み込み、リノベーションによる高付加価値化戦略、光熱費や固定費の削減施策、そして今後の市場環境を踏まえた「利益率改善の未来像」を掘り下げていきます。

高付加価値化リノベーションの動き

近年、多くのホテルや旅館が「リノベーション+高級化」の方向に舵を切っています。単に老朽化した建物を改装するだけでなく、客室数をあえて減らし、グレード感を引き上げるという戦略です。

背景には、人手不足とインフレトレンドがあります。客室数を減らせば清掃やフロント業務の負担が軽減され、人件費削減が可能です。その一方で、残した客室を「高付加価値化」することで宿泊単価を大幅に引き上げ、総売上を維持・拡大できます。こうした「選択と集中」の動きは全国的に広がりを見せています。

1. 【リノベーション事例】レイクサイドテラス琵琶湖

客室を減らし、高付加価値化を目指した弊社グループの事例を紹介します。

滋賀県の共済組合が保有する憩いの里(湖西)は10室のホテル棟、6室のコテージ棟、テニスコートで構成されている施設でしたが、利用者の減少に伴い、閉鎖されました。その後、弊社グループで同施設を譲り受け、ホテル棟は5室へリニューアル、コテージ棟もプライベートプールを設置して3室へリノベーションしました。

またテニスコート部分はグランピング施設を整備し、全15室の施設へリニューアルしました。

リノベーションの結果、滋賀県高島市でも屈指の人気施設となり、2024年度には年商2.5億円、さらに2025年度8月には、月間売上高が4500万円を超えるなど、年間売上は3億円を超えるペースで推移しています。

元々ロケーションに優れていた点や現場スタッフのモチベーションが高いことが奏功しており、クチコミやSNSでの拡散を通じて好調な運営状況を維持しています。

また、経費の削減というテーマからは少し離れますが、ホテルや旅館の遊休地に貸別荘やグランピングを整備する戦略は、大きく利益を伸ばす策となるケースが多いと言えます。

Villaやグランピングを運営するための人件費といった固定費を増やさずに売上高を伸ばせるため、GOP率50%超のグランピングや貸別荘へ成長するケースがあります。

敷地に余裕がある場合は、ぜひ検討してみてください。弊社グループでもヴィラやグランピングの開発支援を無償で行っているため、興味がある方はご相談ください。

2. 観光庁の地域観光魅力向上事業の活用も

リノベーションについては、観光庁が進める「地域観光魅力向上事業」の活用も進んでいます。

これはエリア単位での大規模なリノベーションに補助金を投じ、地域全体の宿泊単価を引き上げる試みであり、有名温泉地や観光誘致に熱心な自治体の多くが採択されています。施設単体ではなく「エリア全体での利益率改善」に繋がりつつあると言えます。

水道代・光熱費だけじゃない!OTAを含む”固定費の見直し”を

1. 水道代・光熱費への対策

固定費削減の分野で近年、課題となっているのが「水道代削減」であり、地方のホテルでは井戸を利用して上下水道料金を抑えるケースが出てきています。上下水道料金は今後、人口減少と自治体財政の悪化により上昇が見込まれています。そのため、水道料金の見直しは長期的なコストリスクに備えた取り組みといえるでしょう。

また、照明のLED化空調システムの効率化再生可能エネルギーの導入なども広がっています。これらは導入時に一定の投資が必要ですが、施設の環境対応がブランディングにつながる側面もあるため、長期的に利益率を押し上げる効果がある「固定費改善施策」です。

2. NHK受信料カットと付加価値サービスの転換

意外と見過ごされがちなコスト項目として「NHK受信料」があります。全客室にテレビを設置しているホテルでは、その負担額は年間で数百万円単位に達することもあります。

観光系業態であれば「契約不要」と判断し、代替サービスを導入するホテルも増えてきました。例えば、テレビを廃止してNetflixAmazon Prime Videoを導入するケースです。これによりNHK受信料のコストカットが可能になるだけでなく、「最新の映画やドラマを楽しめる」という付加価値をゲストに提供できる点でも効果があります。

単なるコスト削減ではなく「コスト削減 × 付加価値創出」という二重の効果を得られます。

3. 直接販売によるOTAへの支払手数料の削減

自社公式サイトからの直接販売を強化することで、OTAに払う高額な手数料を削減し、利益率の改善と収益の安定化につなげることが可能です。

最も効果が上がりやすい方法はInstagramやGoogleなどの広告運用に取り組むことです。

インフルエンサーやモニターが撮影した有人素材を活用した広告は効果が高く、弊社でもその手法によるマーケティング支援を実施しています。

施設の強みや特徴を反映した広告クリエイティブを用意するには、ある程度の知見やコツが必要になります。興味がある方は、下記の記事も参考にしてみてください。

\自社に合った広告運用やインフルエンサー活用を相談するなら/

まとめ

ここまで見てきたように、ホテルの利益率改善には大きく分けて以下の3つの策が有効です。

・業態特性を活かす: 小規模スタッフ運営、テナント導入、セントラルキッチン活用など
・余分なコスト構造を削ぎ落とす:三大コスト部門(レストラン・宴会・大浴場)の縮小や廃止
・高付加価値化と固定費削減の両立:リノベーションによる単価アップ+NHK受信料や水道光熱費の削減

これらを同時並行で進めることで、施設の構造そのものが「利益を生みやすい体質」へと変わります。

そして未来に向けて重要なのは、単にコストを減らすだけではなく「削減した分をゲスト満足度につながる投資へ回す」ことです。Netflix導入やゲームコーナーの設置のように、ゲストが喜ぶ体験に置き換えられるかどうかが、最終的に稼働率と利益率を両立させるポイントになります。

ホテル業界は今、人手不足やインフレ、エネルギーコストの上昇といった逆風の真っただ中にありますが、上記の取り組みを組み合わせることで、利益率改善が期待できます。

ホテル経営における利益率改善は、5年先・10年先の成長戦略を描くための最も重要なテーマです。

この記事が皆様の経営に少しでも参考になれば幸いです。

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