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旅館の利益率は何%が普通?優良旅館・高級旅館の実例に学ぶ収益アップの法則

旅館経営において「利益率」は避けて通れないテーマです。売上の大小だけでなく、いかに効率よく収益を残すか。その答えは、同じ旅館業でも経営状態によって大きく変わります。ここでは、日本旅館協会(日旅協)が示す全国平均を「標準的な旅館」、そして今回の調査で優れた成績を収めた施設を「優良旅館」と位置付け、両者の違いを比較してみます。

売上効率の差はどこから生まれるか

1. 売上効率の比較

標準的な旅館優良旅館
売上高の平均(宿泊客1人あたり)22,352円25,000円~26,000円
客室1室あたり年間売上高1,000万円前後1,400万円~1,500万円
稼働率(OCC)55%~60%65%~85%
※業界調査データを弊社にて再整理した数値を基準としています

まずは売上効率に注目します。宿泊客1人あたりの売上高は、標準的な旅館が22,352円に対し、優良旅館は25,000円~26,000円が平均値と言われています。
(※業界調査データを弊社にて再整理した数値を基準としています。)

基本宿泊料だけでなく、付帯売上(レストラン利用や館内サービスなど)でプラスアルファを獲得している旅館も多いものの、およそ、3,000円前後の差がついています。

さらに「客室1室あたり年間売上高」を見ると、標準的な旅館は1,000万円前後に対して、優良旅館は1,400万円~1,500万円の水準に達しており、400万円~500万円の差が出ています。
(※弊社ベンチマーク基準。業界調査データを参考に数値を整理しています。)

特に年間2,000万円以上を売り上げる旅館も全体の2割程度存在しており、まさに“優良”と呼べる水準です。

稼働率(OCC)にも明確な違いがあり、標準的な旅館が55%~60%にとどまる一方で、優良旅館は65%~70%。小規模旅館に限れば実に70%~85%と、ほぼ常に客室が埋まっている状態を維持しています。

さらにADR(平均客室単価)は52,000円、RevPAR(客室稼働収入)は35,000円と高水準。特に小規模旅館のRevPARは44,000円と突出しており、「単価の高さ × 稼働率の高さ」が利益率に直結していることが見て取れます。

2. 損益構造の違いを探る

標準的な旅館優良旅館
売上原価率24%20%
人件費率34%32%
償却前営業利益率(GOP)5.6%8.5%~20%
償却前経常利益率10%未満14.5%
※業界調査データを弊社にて再整理した数値を基準としています

売上が増えても、コスト管理が甘ければ利益は残りません。ここでも標準旅館と優良旅館には明確な差が表れています。

売上原価率は標準が24%、優良は20%。食材仕入れやサービス提供の効率化により、原価を約4ポイント抑え込んでいます。さらに人件費率は標準34%に対し、優良32%。労働分配率40%前後を維持しつつ、従業員の配置やオペレーションを最適化していることが伺えます。売上から人件費と食材原価を差し引いたOP率は48%です。

一方で、諸経費率は優良旅館の方が高め(39%)を推移しています。これは、広告宣伝や業務費に積極投資する姿勢の表れですが、それでも最終的な利益率では優良旅館が勝っています。

償却前営業利益率(GOP)は標準が5.6%に対して、優良は8.5%。さらに20%以上を確保する“超優良旅館”も全体の1割程度存在します。経営の巧拙が数字としてはっきり出る部分です。

次に注目すべきは、償却前経常利益率。標準的な旅館では10%未満が多数を占めますが、優良旅館は14.5%。営業外収益を取り込むことで、財務上も安定した黒字経営を実現しています。

3. 高級旅館における利益率の事例(Small Luxuryタイプ 7室の事例)

弊社グループでもSmall Luxuryタイプの高級旅館を運営しています。7室にプライベート温泉、プライベートプールを完備し、ダイニング棟は別に配置。

この高級旅館のADRは、夏季120,000円、冬季は200,000円超となります。冬季の方が稼働率は高く、11月~2月は約85%に達しています。2017年の開業から8年が経過しましたが、毎年、1室あたりの売上高は3,750万円~3,950万円で推移、年商は2.6億円~2.9億円の水準で推移しています。

冬季に食材面(松葉ガニ)でブランディングが進んだことで明確な来訪動機があることが大きく、関東在住の富裕層や台湾人富裕層で満室に近い稼働となっています。

台湾人富裕層に対しては、台湾の旅行代理店8社と提携しており7室全部を貸切で予約受注するケースも少なくありません。

これらの台湾人富裕層向けの旅行代理店は、北陸エリアや京都市の高級宿、外資系ホテルと弊社グループの施設を組み合わせることで、美食をテーマにしたツアーを多く組んでいるため、弊社の施設とニーズが合致したといえるでしょう。

ここまでは標準的な旅館と優良旅館の「売上効率」と「損益構造」の違いを見てきました。ここからは、経費効率に焦点を当て、標準的な旅館と優良旅館の差をさらに掘り下げ、「利益率を高めるための実践策」を整理します。

宿泊施設の経費効率で利益率が変わる

旅館経営では、客室単価や稼働率だけでなく「どれだけ効率よく経費を使えるか」が収益に直結します。

1. OTA依存度を下げて自社販売比率を高める

例えば、宿泊客1人あたりの送客手数料は平均で1,800円、売上比にして7.5%~8.0%に達します。OTA(宿泊予約サイト)の依存度が高まる中で、この比率は上昇傾向にあります。広告宣伝費も1人あたり450円(2.0%前後)と小さく見えますが、積み重なれば無視できません。

OTA依存度を下げ、自社販売比率を高めることが利益率改善の最大の鍵です。

インフルエンサーマーケティングを活用した「UNFEE Premium」により、公式サイトからの直接予約を伸ばす取り組みを進めています。広告費を単なる支出でなく“投資”として回収できる仕組みを導入することで、OTA手数料に頼らない収益モデルを実現できます。

この仕組みについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

2. 支出を”投資”として長期的な収益につなげる

さらに負担が大きいのが、エネルギー費です。平均で2,000円、売上比10%超という高水準が続いています。光熱費は直接コントロールが難しい部分ですが、省エネ投資や契約見直しで差をつけられる分野とも言えます。修繕費は1人あたり570円(2.3%)で推移しており、老朽施設ほど比率が高まる傾向にあります。

優良旅館はこうした経費を「単に削減する」のではなく、効率的に活かしています。たとえば広告費をOTA手数料に依存せず、自社集客に回す。エネルギー費を下げるだけでなく、環境対応型のPRに結びつける。支出を“投資”として捉える視点が成果を分けています。

3. 小さな高級旅館は高い利益率を実現しやすい

データ調査の結果でも、小規模旅館は「高い稼働率 × 高い単価」で収益差を大きく広げており、経営効率の高さが光ります。

小型の高級宿は、もともと販売客室数が少ないため、希少性が生まれます。

そのため、高い稼働率やADRが間口を絞り込むことで実現しやすくなっていると言えます。

また稼働率が安定することでスタッフの人員管理が実施しやすく人件費率を一定に保てる点や、大手OTAのポイントSALEに頼らなくても客室が埋まることが、高いGOP率の維持につながっています。

4. 高級旅館を軸に食事が魅力のVillaの展開も可能

近年は高級宿の調理機能を活用して、食事提供が可能な高級ヴィラを周辺に展開するケースも出てきています。

高級ヴィラなどの貸別荘業態は、単価が高い割に運営コストが低いため、利益率が圧倒的に高い特徴があります。

例えば、高級宿の稼働が低いタイミングに、冷凍の食事キットを大量に調理しておいてヴィラに送り、ヴィラ側の人件費を抑えながら、高品質な食事提供を行っているケースがあります。また、高級宿の調理人が、直接ヴィラへ仕込みに行って1週間~2週間分の調理を行い、保存したものを提供するオペレーションパターンがあります。

このように高級旅館をセントラルキッチンに見立てる発想は調理現場の理解や努力が必須ですが、うまく機能した場合、かなり高い収益性を全体で獲得することにつながります。

実際にこうした仕組みを持つと、周辺に高級ヴィラを開発・展開する際、大きな相乗効果を生みます。

弊社では食事提供可能なVillaの開発支援を行っており、収益性の高い事業モデルとして注目されています。興味がある方は、ぜひお問い合わせください。

5. 旅館の調査データの活用方法

今回ご紹介したデータは、自社旅館が業界の中でどの位置にいるのかを測る「ベンチマーク」として役立つと思います。

単なる数字の比較に終わらせず、 利益率改善のための具体策(リニューアル投資、運営体制のスリム化、食事提供の効率化、DX活用など) を取り入れていただき、旅館経営を持続可能にしていただきたいと考えています。

ここからは、実際にどのようにして利益率を改善していくかについて紹介します。

旅館の利益率の改善策|優良旅館の取り組みとは?

実際に利益率を改善するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。現場で実行可能な6つの具体策を紹介します。

1. 設備投資・リニューアルで「ネット映え」を確保

コロナ禍以降、OTAやSNSを経由した予約比率が急増しており、施設の「写真映え」「動画映え」がより集客に強く影響を及ぼすようになりました。例えば、以下のようなリニューアルや転換をすると効果が期待できるでしょう。

・ ニーズが減少した宴会場 → 個室風のレストラン会場にリニューアル
・ 低稼働の売店 → アメニティバーに転換
・ 和室はベッドとソファを導入し、床を張り替えてインバウンド対策を行い、清潔感を演出
・ 露天風呂付き客室を導入(1室数百万円の投資でも回収は早い)

特に訪日外国人の多くは、布団で寝ることに抵抗感を持っています。旅館の外観や内装は和風が好まれることも多いですが、就寝の際はベッドが好まれます。また、日本人旅行者でも生活の洋式化が進んでいるので日本人の利用が多い施設でも良い反応を得られるでしょう。

また、露天風呂付客室はそれなりの設備投資が必要になりますが、一部の客室でも導入することで宿全体のイメージアップにつながります。画像や動画を公式サイトのTOPに配置すると、よりクオリティの高い旅館として印象付けられるでしょう。

2. 運営体制のスリム化

利益率改善の重要ポイントに「人件費のコントロール」があります。

宿のコンセプトにも依りますが、旧態依然の「30名体制の20室旅館」といった客室数よりも人員数が多い運営体制では、よほどの高級宿でなければ利益は出ません。

ADRが5万円前後~6万円前後であれば、支配人1名+アルバイト主体で運営した方が賢明です。

フロントの説明をマニュアル化して、非正規の社員でも対応できるようにすると良いでしょう。

また、人手がかからないクラフトビールサーバーやお菓子バーなどのセルフ型のサービスを導入することで、無料のインクルーシブサービスを訴求でき、集客力を改善できます。

無料サービスはSNSに投稿されることも多いため、部分的であっても導入すると集客効果につながります。

3. 食事提供の効率化

食事は旅館の魅力そのものですが、同時にコストの重荷にもなります。

外部仕入れから完全自社化し、提携レストラン依存から脱却して自社調理システムを構築するなど、運営を内製化して効率化する成功事例も少なくありません。

また、優れた料理人が在籍しているのであれば、大量に仕込みをして真空調理で保存する方法などでオペレーションコストを引き下げつつ、クオリティ改善が可能なケースもあります。

意識の低い現場スタッフは、人手不足を低品質な冷凍仕入で対応する方向に判断しがちです。結果的にクチコミが荒れることになり、旅館経営を悪化させることにつながっていきます。

「味は落とさず、コストだけ削減」することを絶対的なルールとしましょう。

4. 原価・人件費の徹底管理

「GOP20%必達」を逆算すると、OP(売上から人件費と食材費を差し引いた指標)は50〜60%に設計するのが理想的です。

毎日原価率を確認し、翌日改善できるサイクルを構築することが望まれます。タイムリーに原価率を把握するためには、発注ベースで管理することがポイントです。また、人件費はあらかじめ稼働客室数と出勤人数の目安を決めておくと、予約状況を見て適切なシフト組が叶います。

「後から帳簿で振り返る」のではなく、「毎日修正できる体制」が収益の分岐点です。

5. DX・システム活用で固定費削減

システムのデジタル化は、単なる効率化にとどまらず利益率を左右する武器になります。

クラウド会計(マネーフォワード)などを使って経理作業勤怠管理をクラウド化することで、人件費を日次で把握できます。また、受発注システム(BtoBプラットフォーム)で請求書処理を自動化したり、ネットバンキングと会計ソフトを連携させることで、入力業務をゼロ化していくことで、本社コストも低減できます。

「紙の帳簿+二重入力」体制では、高稼働でも利益は残りにくいため、できるだけ早く改善しましょう。

6. サービスの品質とコストのバランス調整

旅館の経営は「満足度を下げずにコストを削減できるか」につきます。

客室単価の高さにもよりますが、料理中心の旅館なら「原価25%~30%」に設定し、人件費を25%未満に抑えることが重要です。高級な食材を使うことで、原価率が30%を超えるのであれば、人件費が15%~20%に収まるような販売単価を通していくように調整します。人件費を押えるのではなく、収める客単価マーケティングを模索することが重要です。

「高級旅館なので従業員多めで満足度を担保したい」という風土の宿は工夫が足りていないことが多く、利益率低下リスクの認識が甘いケースが多いです。売上が高い割に利益が出ていない場合、この風土に執着していないか客観視してみてください。

必要以上の常勤雇用は避け、繁閑に応じてシフトを柔軟に設計することが重要です。

まとめ|利益率改善は“仕組み化”で決まる

標準旅館と優良旅館の差は、単なる立地や規模の差ではありません。

「仕組みで人件費と原価をコントロールし、DXで効率化を進める」 ことが、稼働率や単価の差を利益に直結します。

この改善策を自社にどう落とし込むかが、これからの旅館経営の分かれ道です。

OTA依存を減らし、収益性の高い宿泊モデルを構築するには、単なるコスト削減ではなく「販売チャネル」と「商品設計」の両立が不可欠です。

弊社では、インフルエンサーマーケティングを活用した UNFEE Premium による直販強化や、Villa開発支援 を通じて、旅館・ホテルの利益率改善を支援しています。

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