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ホテルの経営指標「ADR」とは?平均客室単価の計算式と意味を解説 OCC・RevPARとの関係も

ホテルや旅館の経営を語る上で、知っておくべき指標があります。特に、宿泊業界に関わる方は、収益性を測るうえでADRという言葉は必ず知っておきたい用語であり、金融機関や投資家の方々と対話する際にも必須の用語となります。

この記事では、ADRの定義とその計算式、そしてそれに関連する用語「OCC」「RevPAR」との関係について解説します。

ADRとは

1. ADRの定義

ADR(Average Daily Rate)とは、ホテルや旅館の経営を語る上で欠かせない指標のひとつであり、日本語では「平均客室単価」と呼ばれます。宿泊業界の収益性を測る最も基本的な指標のひとつであり、金融機関や投資家との会話でも必ず登場します。ADRは単純に「1室あたりいくらで売れているか」を表す数字で、ホテル経営の“売上の強さ”を示すベースラインです。

2. ADR(Average Daily Rate)の定義と計算方法

ADRの基本式は次のとおりです。

ADR = 客室売上 ÷ 販売客室数
(例:1日の客室売上1,000万円÷販売客室数1000室=ADRは10,000円=1室あたり平均して1万円で売れた)

ここでの「販売客室数」とは、実際に販売できた客室数を指します。空室や販売停止の部屋は分母に含めません。例えば、1日の客室売上が1,000万円、販売できた部屋数が1,000室なら、ADRは10,000円となります。この場合「平均して1室あたり1万円で売れた」ことを意味します。

このシンプルな数値は、経営者にとって非常に直感的です。「1泊あたりどのくらいの価値を売れているか」をすぐに把握でき、価格戦略やプラン作りの基礎となります。

ADRとOCC・RevPARの関係

ADRは単体で見ても有用ですが、OCC(Occupancy Rate:稼働率) と組み合わせることでより実用的な分析が可能になります。OCCは「販売可能客室に対して実際に何室稼働したか」を示す指標です。

そして、この2つを掛け合わせたのが RevPAR(Revenue Per Available Room:販売可能客室1室あたり収益) です。

・ADR = 平均単価価格の強さ
・OCC = 稼働率利用率
・RevPAR = ADR × OCC
価格と利用率を合わせた収益力
(例:ADR10,000円×OCC70%=RevPAR7,000円)

たとえば、ADRが10,000円で稼働率70%のホテルの場合、RevPARは7,000円となります。これは「1室あたり平均7,000円の収益を生んでいる」ことを意味し、収益力の総合評価に直結します。

つまり、ADRは「価格の強さ」を測る指標であり、OCCは「利用率」、RevPARは「価格と利用率を合わせた収益力」と位置づけられます。この3つの関係を理解することで、経営分析の幅が大きく広がるのです。

ここまではADRの定義と計算方法、そしてOCC・RevPARとの関係を整理しました。

後半は、日本市場におけるADRの推移データを確認しつつ、ADRを高めるための具体的な方法を考えていきます。

日本市場におけるADRの推移

ADRは市場環境に大きく左右されます。直近数年間の日本市場の推移を見てみると、その特徴がよく分かります。

2019年(コロナ前)

インバウンド需要がピークに達し、東京や大阪の都市型ホテルを中心にADRが高騰。平均で18,000円を超える施設も珍しくありませんでした。

2020〜2021年(コロナ禍)

国際的な渡航制限と国内旅行需要の減少で、稼働率とともにADRも大幅に下落。都市部のホテルでは1万円を下回ることも多く、低水準で推移しました。

2022〜2024年(回復期)

Go To再開やインバウンド復調、物価高を背景にADRは回復基調へ。東京のシティホテルでは20,000円台に戻り、沖縄や北海道などリゾート地では繁忙期に40,000円以上を記録する例も出ています。

ADRを高める方法と注意点

ADR改善の方法は、大きく3つに分けられます。

1. 商品戦略

食事付き・アクティビティ付きといった体験価値を組み込んだ高付加価値プランで差別化すると、比較的単価を上げやすいと言えます。また、部屋タイプを細かく設定すると、ADRを高められます。

さらに、最も簡単な方法には、宿泊定員を多く設定するというやり方があります。排水基準など旅館業許可の内容確認が必要ですが、ユーザーは1人当りで予算を考えることが多いので、比較的効果が出やすい方法です。

バケーションレンタルやグランピングなどで成功事例が多く、近年、開発が増えているアパートメントホテルも、このニーズを狙った業態といえます。

企業研修や貸切旅行など、大人数グループのニーズを取り込むプランを設計すると有効でしょう。

2. 販売チャネル戦略

OTA依存を減らし、自社公式サイトからの予約比率を高める方法です。OTA主催のセールに参画することで、割引やポイント経費負担が増加して、経営に苦しんでいる宿泊施設は多いかと思います。

例えばペットを受け入れる客室を設定する、サウナを設置した客室を作るなどタイプを複数に分けることで、愛犬家向けのメディア露出予約ポータルサイト、サウナについても同様、サウナ付ホテルを紹介するメディアポータルサイトに露出することが可能となります。また、会員制度を設けて、特典を付与する方法で、直接販売を強化する方向も効果的です。

OTA依存を減らし、自社公式サイトからの予約比率を高める方法については、以下の記事でも詳しく紹介しています。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

3. 需要予測に基づいた価格設定

レベニューマネジメントシステム(RMS)を導入し、需要予測に基づいて価格を柔軟に変動させる方法が有効です。

仮にシステム導入が難しい場合でも、夏休みや祝前日、土曜日の客室在庫を一度に販売してしまわず、売れ行きに合わせて、少しずつ単価を上げる方法は効果があります。

例えば、夏休みに強い集客力があるプール付きホテルなどでは、夏休みの在庫を一定数、販売せずに9月から販売する方法もあります。弊社グループでも実験したことがありますが、8月の客室在庫を売り止めにして、9月から稼働を高めることで、8月と9月の合計売上が昨年比で15%程度、伸長した事例もあります。

4. ADRの限界と注意点

ADRは便利な指標ですが、単独では限界もあります。例えば、単価を上げても稼働率が下がれば収益は伸びません。したがって、OCCやRevPAR、さらにGOP(営業総利益)やNOI(純営業利益)と組み合わせて評価することが不可欠です。

まとめ

ADRの定義とOCC・RevPARとの関係についてまとめると、以下となります。

・ADRは「販売客室の平均単価」を表す基本KPI
・OCCとの掛け合わせでRevPARを算出し、収益力を総合的に把握できる
・日本市場ではインバウンドやコロナ禍によって大きな変動があった
・改善には「商品戦略」「チャネル戦略」「DX活用」が鍵
・単独ではなく、他指標と組み合わせて総合的に判断すべき

ADRは、ホテル経営を語る上での出発点です。単なる数字の把握にとどまらず、「どう改善し、収益最大化につなげるか」を意識することで、宿泊施設の競争力は大きく高まります。

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