宿泊施設の差別化ポイントといえば、何を思い浮かべるでしょうか。
料理や温泉、質の高いサービスといった要素が語られることが多いですが、実際にお客様が予約を決める要因の多くは「最初に目にする写真」、つまり外観のデザインにあります。
GoogleやSNSで施設を探すとき、ユーザーは文章よりも画像で判断します。検索トレンドにも「ホテル 外観 写真」「旅館 外観 雰囲気」といったワードが多く見られ、見た目が選定基準になっているのは明らかです。
外観は、単なる建物の表面ではなく「宿泊動機を生む広告資産」と言えます。この視点を持つことが経営者にとって重要です。
この記事では、宿泊施設の外観を収益につなげるコツについて事例をもとに紹介します。
【成功事例】強烈な外観インパクトの宿泊施設
外観のデザイン性が予約を牽引している事例を見てみましょう。まずは国内の事例から紹介します。
1. ヴィラサントリーニ(高知)

高知県の「ヴィラサントリーニ」はエーゲ海風の白壁で他にはない存在感を確立。2005年8月の開業から20年が経過していますが、今も圧倒的な個性で人気の宿泊施設です。羽田空港から高知空港の導線であり、東京から遠方でもわざわざ訪れたくなるインパクトを出せている参考事例と言えるでしょう。
2. 星野リゾート界ポロト(北海道)
星野リゾートの「界ポロト」は、湖畔に溶け込むデザインで唯一無二のブランドを形成。
星野リゾートらしい大胆なデザインであり、旅行者の知名度が高くない白老町に立地しつつも、強烈な存在感を放っています。千歳空港からもアクセスが良く、半導体工場も近隣で整備されたことから白老は今度の注目エリアでもあり、星野社長の先見性を感じられる展開です。将来も同エリアの代表的な宿泊施設であるという圧倒的ポジションはに位置しています。
3. はなをり(神奈川)
箱根「はなをり」は、水盤の上に浮かぶようなテラスがSNSで拡散され、施設名の代名詞になっています。旅行雑誌やWEBサイトでも、この施設の画像が取り上げられることが多く、同施設の認知拡大にかなり貢献していると推定されます。
4. An Eland(和歌山)
南紀白浜にあるグランピング施設「An Eland」は、全室オーシャンビューを売りに外観やロケーションそのものを体験価値に変えています。京阪神の20代~40代の女性のあいだでも「関西のグランピングなら、絶対にここ」と話題に上がることが多く、他のドームテント施設を寄せ付けない高稼働を達成しています。
5. 海外事例―モルディブの水上コテージやベトナム・ハロン湾

海外のモルディブの水上コテージやベトナム・ハロン湾の宮殿風ホテルは、外観のインパクトだけで「行ってみたい」と思わせる代表例です。
こうした事例は、建築デザインがそのまま集客導線に直結することを示しています。
事例の施設の多くは、ロケーション自体が差別化されており、簡単に同様の立地を入手することはできません。また、投資規模も大きく、なかなか参入は難しいでしょう。
そこで、もう少し現実的に取り組めるユニークな業態をご紹介します。
見た目のUSPで圧倒的に集客可能!メガドッグラン宿泊モデル

1,000㎡以上のプライベートドッグランを備えた宿泊施設は、愛犬家にとって圧倒的な差別化要素となります。
実際、犬が自由に走り回れる映像や空撮写真はSNSでの拡散力が非常に高く、予約動機に直結します。特に大型犬や多頭飼いのファミリー層から支持を集め、高稼働率・高単価を実現している事例が多数見られます。外観のインパクトに加え、「犬と泊まる特別体験」を演出できる点が、高収益モデルとして注目される理由です。
愛犬家に特化した宿泊ビジネスについては、以下の記事でも紹介しています。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
>>新規事業に最適!高収益が見込める愛犬家向け宿泊ビジネスの魅力
>>平日集客の突破口は「愛犬」だった ― ドッググランピングで売上170%へ
既存施設のリノベーションにも応用はできる!
ここからは、新築の宿泊施設開発にとどまらず、既存施設の再生やリノベーションにおいても応用できる視点を整理してみます。
新築はゼロからの設計自由度がある一方で、リノベーションは「限られた予算や空間をどう魅力的に生まれ変わらせるか」という工夫が問われます。老朽化した建物でも、デザインの刷新や動線の再設計、照明や家具・設備のアップデートを行うだけで、ターゲット層に響く新しいコンセプトを打ち出すことが可能です。
1. 経営者が考えるべき外観の3つの切り口
外観を差別化の武器に変えるには、以下の3要素を押さえることが有効です。
非日常感を生むデザイン
全面ガラス張りのヴィラや森に浮かぶコテージのように、外観そのものが「日常では味わえない体験」を示す。
SNSで拡散されるランドマーク性
白壁と青いプール、夕日に映える赤屋根など、強烈なビジュアル要素は「写真に残したい」という欲求を喚起。
地域文化を映す外観
古民家を改装した旅館、漁村の赤瓦、雪国の合掌造りなどは「その土地でしか泊まれない宿」としてブランド化に成功しやすい。
この3つの切り口を意識するだけで、外観は単なる見た目から「未来の売上を生む資産」へと変わります。
2. 見た目のデザイン性を広告資産として活かす方法
外観は単なるデザインではなく、マーケティングで使える「最強のビジュアル素材」です。経営者や開発者は、それをいかに集客導線に組み込むかを考える必要があります。
公式サイトのトップを外観の画像や動画でPR
ユーザーは数秒で滞在を判断します。最初に目にする画像が印象的でなければ、離脱率が上がります。
Instagramで四季・昼夜を切り替えて発信
同じ施設でも春の桜、夏の青空、冬の雪化粧などで全く違う魅力を見せられます。四季の変化を取り入れることが、日本の宿にとって最大の武器です。
インフルエンサー投稿の活用
施設紹介よりも「その場にいる体験」を視覚化することが重要。外観は再現性が高く、どのインフルエンサーでも魅力を伝えやすい素材になります。
空撮や画像・動画の統一感での差別化
建物全体を俯瞰するドローン映像は、スケール感と非日常感を打ち出すのに効果的。海辺や湖畔などの立地と組み合わせれば、数秒の映像だけで「行ってみたい」と思ってもらえます。
とはいえ、立地や予算の関係で空撮映えが狙えない施設も多いでしょう。その場合は「複数の画像や動画で統一感を出す」ことが鍵になります。
3. すぐに適用できる!外観のデザイン性を高める工夫

施設名サインの設置
建物の前にシンプルかつ印象的なロゴ看板を設けることで、写真や動画の中心にブランドを映し込めます。
植栽とライトアップ
玄関周りに個性的な植栽を配置し、夜にはライトで演出。昼夜で表情を変えることで、素材のバリエーションが増えます。
部分的な壁面リフォーム
外壁全体を変える必要はなく、一部に異素材や特徴的な色を取り入れ、ライトアップで際立たせれば低コストで強い印象を与えられます。
館内ロビーやモニュメントの活用
外観だけに頼らず、館内に特徴的な装飾やモニュメントを設置。館内外を含めた統一デザインとすることで「洗練された宿」の印象を作れます。
このように見た目のデザインについて「一枚の圧倒的な空撮」で勝負するのではなく、複数の視点から積み重ねる総合力で評価を高めることが可能です。
4. 外観デザインの強化は予約率に直結する
宿泊予約の決定は「写真の第一印象」で大きく左右されます。OTAやGoogleマップ、Instagramなど、ユーザーが最初に接触するのは文章ではなく画像です。そのため外観デザインの強化は、直接的に予約率向上へつながります。
特に、外観写真や映像は「保存」「シェア」「比較検討」の段階で効力を発揮します。競合施設と並んで検索されたとき、外観にインパクトがある宿ほど「ここに泊まりたい」と思わせる確率が高いのです。
5. 予約率に影響が大きい強化ポイント5選

経営者が優先的に取り組むべきは次の5つです。
ライトアップ演出(夜の見た目を強化)
夜の写真は非日常感を強く演出できます。昼間は普通に見える建物でも、ライトアップすれば「リゾート」「隠れ家」に変わります。SNSでも拡散されやすく、Googleマップの写真でも差別化が可能です。
アプローチデザイン(玄関までの道や演出)
到着前の数メートルで印象は決まります。石畳、灯籠、植栽などを加えるだけで「ここを選んで正解」と思わせ、口コミ満足度にも直結します。
季節感の装飾(四季で変わる外観)
桜、紅葉、雪化粧といった四季の演出はリピート意欲を高める最大要素です。SNSでも「秋の紅葉が美しかった」「冬のイルミネーションが印象的」と語られやすく、集客資産になります。
写真スポット化(SNS投稿を意識した設計)
外観を背景にベンチや額縁を設置するだけで「ここで写真を撮りたい」と思わせられます。保存数が増えれば将来の予約ストックを生み、広告にも活用できます。
地域性を反映したデザイン(その土地らしさ)
瓦屋根や木格子、地元作家のアートなど「ここでしか味わえない雰囲気」を加えると、比較検討時に選ばれやすくなります。特にインバウンド客にとっては「地域文化を体感できる宿」が強い予約動機になります。
経営者&施設開発者向けチェックリスト
すぐに実践できる外観強化のチェックポイントを整理しました。ぜひ、自社は「売上を生む資産」なのかを判断してみてください。
まとめ ― 見た目は未来の予約を生む資産
ホテルや旅館の見た目は「ただの建物」ではなく、宿泊施設の未来を左右する広告資産です。
非日常感・SNS映え・地域性を組み込めば、外観そのものがUSPとなり、競合との差別化を長期的に支える武器になります。
外観を「建物の見た目」から「売上を生む資産」へと昇華させられれば、長期的に安定した経営が可能となります。
OTAやGoogleマップ、Instagramで選ばれる時代だからこそ、この視点の重要性が増しています。













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