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人手不足時代の宿泊経営 -大型旅館が再生するための構造改革-

宿泊業界の人手不足が叫ばれるなか、かつて繁栄していた大型旅館やホテルの運営は困難の時代を迎えています。

稼働率が低いにもかかわらず、大量のスタッフがいなければ稼働がまわらない…

そんな低人時利益を解消し、少ない人員で高い利益を得る運営をしなければ、運営継続は難しいでしょう。

この記事では、人手不足時代のいま、大型旅館が成功するための法則について紹介します。

令和時代の成功法則は“少室・高付加価値・高人時利益”

「客室数が多いほど有利」「大規模化こそ成長」――

このような考え方は、かつての高度経済成長期には正しかったかもしれません。

しかし、これからの時代はまったく逆の構造で動き始めています。

人手不足がますます深刻化し、採用コストは上昇。さらに、国内旅行需要の伸び悩みや人口減少が進む中で、“多人数・多業務前提の宿泊モデル”は持続しにくくなっています。

新しい宿泊事業を構想する際に求められるのは、「少ない投入人時で高い生産性を実現するモデル」をどう設計するかです。

弊社グループがご提案している小規模・高単価型の宿泊業態では、1時間あたりの粗利益(人時生産性)が 15,000円前後に達するケースもあります。

年間2,000時間の稼働を想定すれば、1人あたりの粗利益はおよそ3,000万円

旅館業界の基準値として紹介されることが多い5,000円/時間と比べても、約3倍の効率です。一方で、多くの旅館やホテルの人時生産性はどうでしょうか。

人員増加より優先すべき”人時生産性”

多くの旅館が、この「人時生産性」の壁に直面しています。

例えば、伝統的な旅館では稼働時間が集中しやすい構造があります。

チェックイン、夕食、布団敷き、朝食などが同時刻に重なり、短時間に大量のスタッフを必要とします。

この“同時集中型オペレーション”こそが、生産性を下げる最大の要因です。

また、「配膳」「布団敷き」「個別接客」といった手作業中心の“提供型サービス”が多く、その多くが「削ってはいけないもの」と捉えられがちです。

結果として、1組あたりの対応時間が膨張し、稼働率が上がっても利益が残らない“薄利稼働型”の構造に陥ります。

さらに、客室数の多さは必ずしも強みではありません。

清掃・リネン・備品補充といったコストが指数関数的に増加し、稼働率が低くても一定の人件費が発生するため、固定的な労働コストが経営を圧迫します。

保管用在庫も部屋数が多いほどかさむので、資金負担も大きくなります。

こうした背景を踏まえると、「人を増やす前に、人が集中しない設計に変える」ことが重要です。

予約導線の段階から、チェックインや夕食時間を分散させる。布団敷きや配膳など、特定時間に偏る作業をなくす。

これだけで、同じ人員でも大幅に効率が改善されます。

人時生産性を高める旅館の再構築 ― オペレーション再設計と分散化の考え方

ここからは、具体的にどのような方法で人時生産性を向上できるのかを整理します。

1. 同時刻集中のオペレーションを「分散設計」に変える

旅館業の非効率の多くは、「全員が同じ時間に動く仕組み」にあります。

チェックインや夕食、朝食などを一斉に行うと、その時間帯だけスタッフ数が不足し、結果として人を増やすしかなくなります。

例えば、夕食を「17:30/19:30」の二部制にするだけでも、ピーク人時を平準化でき、限られた人員で対応可能になります。このように“稼働を分散させる設計”が現場負荷を減らし、生産性を底上げします。

ある高効率経営で有名なリゾート系ホテルでは、ダイニングの席数は客室数の50%しか用意されていないケースも見かけました。最初から割り切って、生産性を重視している姿勢は人時生産性を重視していると言えます。

2. 食事提供を「選択制」に

すべての宿泊者に懐石料理を提供する必要はありません。一部の宿泊施設でニーズがある連泊プランであっても、2日連続で同じ懐石を提供するわけにはいきませんよね。

「全員夕食付」から「選べる夕食制(軽食・会席・外食)」へと変えることで、オペレーション負荷を大幅に軽減できます。

館内レストラン・冷凍キット・提携レストランなどを組み合わせれば、人時コストを抑えながら体験価値の幅も広がります。

”泊食分離”の発想が生産性向上には欠かせません。

3. “少室・別棟化”で高人時ゾーンを作る

大型旅館の中に、10室程度の別ブランドゾーン(高級仕様や愛犬家対応室など)を設ける方法です。

全館を一度に変えるよりも、一部で高単価モデルを実証したほうが早く成果が見えます。

この少室高単価ゾーンが「高人時利益エリア」として機能し、全体の平均生産性を押し上げます。

4. バックヤード業務の外部化・共同化

朝食準備やごみ回収、電話受付などは、同一エリアの宿同士で共有センターを設けると大幅な省人化が可能です。

「施設単位」ではなく、「地域単位」で効率化する発想が求められます。

宿泊施設の経費効率や利益率を改善する取り組みについては、以下の記事にも詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。

まとめ

宿泊業界は、これまで“稼働率”という指標で競ってきましたが、これからの時代は「人時あたりの利益」で競うべきです。

限られた人員で最大限の付加価値を生み出す宿泊モデルこそ、これからの日本の観光産業を支える鍵になると私たちは考えています。

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