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オーナー必見チェックリスト付|ホテル運営委託のメリット・デメリットと費用相場

ホテルや旅館を所有するオーナーにとって、運営を外部に委託するかどうかは大きな経営判断です。人手不足やノウハウ不足を背景に「ホテル 運営委託 費用」「ホテル 運営代行 メリット デメリット」といった検索ニーズが高まっています。しかし、契約形態や費用体系を正しく理解しなければ、収益性ブランド価値に大きな影響を及ぼします。ここでは実務に基づいて、ホテルの運営委託のメリット・デメリットを整理します。

そもそも、「運営委託」や「運営代行」「業務委託」はどう違うの?と思った方は、以下の記事を参考にしてください。

>>ホテルの運営代行・業務委託・運営委託・運営受託の違いとは?

目次

ホテル運営委託のメリット

1. 損益管理が見える化できる

人件費や食材費など変動費を「委託料」として固定化できるため、PL(損益計算書)の予見性が高まります。黒字保証ではありませんが、キャッシュフロー管理を容易にし、金融機関への説明もしやすくなります。

2. 高度な専門知識・ノウハウを即戦力として活用できる

公式サイトやOTAの最適化、Google広告やSNS広告運用、口コミ改善、食事メニュー開発、原価率管理、人材育成、清掃やメンテナンスまで、多岐にわたるノウハウを即戦力として導入できます。特にマーケティングや集客に強みを持つ受託会社に依頼すれば、売上増加やブランド価値向上につながります。

3. 業務負担を削減し経営戦略判断に注力できる

採用、教育、備品発注、経理処理などの事務業務から解放され、オーナーは投資判断や長期戦略に集中できます。部分委託を組み合わせれば、負担を減らしつつ自社が関わりたい領域を残すことも可能です。

4. 運営委託先とのリスク分担

需要変動やスタッフ退職、オペレーション上の事故など、経営リスクを委託先とシェアできます。BCP(事業継続計画)の観点からも、外部にバックアップ体制を持つ意味は大きいです。

ホテル運営委託のデメリットと対策

1. ブランドやイメージのコントロールが難しい

価格設定やサービス方針の意思決定権が弱まり、オーナーが描くブランドイメージとの齟齬が生じる可能性があります。特に高級宿や特定のコンセプトに特化した宿泊施設では、ブランド整合性が崩れるリスクは無視できません。

2. 委託費用の負担

運営指導で2〜5%支配人派遣で3〜10%フル受託では15〜30%が目安です。小規模施設では30%を超えるケースもあり、民泊代行も20〜30%が一般的です。運営手数料の費用は、売上に対する比率だけでなく、手数料に含まれる内訳(人件費精算、広告費負担の有無など)を確認する必要があります。

3. 運営委託先との相性の問題

顧客ターゲットや単価戦略、食事提供方針が合致しない場合、双方に不満が募りトラブルに発展します。最悪の場合、解約や休業に至るケースもあります。

4. ノウハウが自社に蓄積しない

運営を丸ごと委託すると、改善の知見や人材育成の仕組みが社内に残りません。不振施設となった際に立て直しが遅れたり、委託解除後に自走できないリスクがあります。

5. デメリットを抑えるための実務的工夫

・ 契約前の合意形成

あらかじめ期待するADR、RevPAR、口コミ評価などをKPIとして設定し、数値目標を共有しておく。

・ 契約条件の明文化

解約条項、改善期限、データの帰属(予約・顧客・広告アカウント)を契約書で明確化。

・ スコープ分割

集客や商品企画は自社、清掃やレストランは外注といった形で、コントロール領域を残す。

・ レビュー体制の構築

月次で収支・CPA・顧客満足度を振り返り、改善サイクルを回す仕組みを整える。

ホテル運営委託は、単なる外注ではなく「戦略的パートナーシップ」として捉える必要があります。委託によって得られるメリットと失われるコントロールのバランスを理解し、契約スキームを適切に設計することが、成功と失敗を分ける最大の要因となります。

ホテル運営委託の費用相場と契約形態

ホテル運営委託を検討する際に最も多い質問が「費用はどのくらいかかるのか」という点です。検索でも「ホテル 運営委託 費用」「ホテル 運営代行 相場」といったキーワードが上位に来るほど関心の高いテーマです。

実際の契約形態ごとに、費用の目安と特徴を整理します。

1. 主な契約タイプと費用相場

・ 手数料型(Revenue Share Model)

最も多い方式で、売上に対して手数料を設定します。

運営指導:売上の2〜5%
支配人派遣:売上の3〜10%
フル運営受託:売上の20〜30%(小規模施設では30%超も)
民泊代行:20〜30%が一般的

ここで注意すべきは「売上の80〜90%がオーナー収入になる」わけではないということです。実際は、運営経費(人件費・広告費・消耗品費など)はオーナー負担であり、手数料は運営会社の粗利=マネジメント料という理解が正しいです。

・ 固定料金型(Fixed Fee Model)

売上に関係なく、毎月一定額を支払う方式です。

月額数十万〜数百万円が一般的
部分委託(清掃のみなど)は数万円〜
清掃委託は固定+超過従量制が主流(一定数を超えると追加請求)

運営側は変動コストリスクを負いたくないため、固定報酬を求める傾向があります。特に清掃業務は稼働率に左右されやすいため、このモデルが採用されやすいといえます。

・ 固定+成果報酬型(Hybrid Model)

固定報酬を抑え、その分インセンティブを成果連動で設定します。

固定部分:月額を抑制
成果報酬部分:営業利益(GOP)の20〜30%が目安

オーナー側は下振れリスクを軽減でき、運営会社は収益拡大のインセンティブを得られるため、双方に納得感のある契約形態です。近年増加傾向にあります。

・ 成功報酬型(Performance Model)

売上増加分や、利益改善分に応じて報酬を支払う方式です。

売上増加分の10〜20%が一般的
マーケティング会社や宿泊特化コンサルが運営受託を兼業する場合に採用

サイト制作や広告費を含めるか否かは、契約ごとに異なります。一定期間で黒字化し、その後オーナー直営に切り替える前提の契約もあり、オーナーにとってはリスクを抑えつつ立て直しを図れる点が特徴です。

国内の主要な運営受託会社を40社、掲載していますので、関心のある方は参考にしてください。

2. 2つの契約方式

MC契約(マネジメント・コントラクト)

現在の主流は「MC契約」と呼ばれる形態です。オーナーと運営会社が、コスト・利益を分担しながら運営を進めます。

・ コスト精算

人件費・消耗品・広告費は運営会社が立替え、実費をオーナーに請求します。人件費には手数料を上乗せするケースが多く、水道光熱費はオーナーが直接負担します。食材費やF&B売上については別途取り決めを行います。

・ 成果連動

営業利益(GOP)の20〜30%を変動報酬とし、オーナーと運営会社が同じ方向を向ける仕組みです。

この方式は「丸投げして赤字が続く」という事態を避けやすく、双方のモチベーションを一致させる点で評価されています。

マスターリース契約

MC契約に対して、現在は減少しているのが「マスターリース契約」です。オーナーが建物を貸し出し、運営会社が一定の賃料を保証する方式ですが、建築費高騰の影響で高利回りを保証できる運営会社はほとんどなくなりました。現在は、相続対策や特殊なスキームで限定的に活用される程度です。

4. 規模・業態・エリア別のポイント

運営委託を行う施設の規模や業態、エリアによって、以下のポイントをおさえておきましょう。

・ 小規模(貸別荘、グランピング):清掃や鍵管理を近隣業者に委託するのが現実的
・ 中規模旅館、地方ホテル:MC契約に部分外注を組み合わせ、柔軟に最適化
・ 高級、外資系ホテル:ブランド基準が厳格で、開発初期から委託先を内定させるのが前提
・ 新築 vs 中古再生/相続案件:新築は企画段階から委託先と連動、中古再生は黒字化→内製化を狙う二段構えが有効

ホテル運営委託の費用は、単純な「手数料率」だけでは語れません。契約形態、業務範囲、精算方式、施設規模によって大きく変動します。重要なのは「どこにリスクを負担させるか」「委託後の利益構造が納得できるか」を契約前に明確にしておくことです。

3つの事例でわかるホテル運営委託の実態

運営委託を検討するうえで、契約形態や条件は机上のシミュレーションだけでは見えない部分が多いため、成功・失敗の現場を把握しておく必要があります。

ここでは、成功事例と失敗事例を具体的に紹介します。

1. 成功事例:箱根エリアの中規模ホテル(21室)

開業直後、集客が伸びず赤字が続いていたホテルです。Googleの口コミは3.2点に低迷し、宿泊者からの不満も多く寄せられていました。そこでマーケティングに強い運営受託会社に委託を決定。

まずはモニタープランを実施し、受託会社の社員や関係者が試泊を繰り返しました。その過程で設備不具合やサービス面の課題を洗い出し、改善を進めました。その結果、口コミ点数は半年で3.2から4.0へ改善しました。

同時にターゲット層を見直し、愛犬家向けに一部客室を改修。ドッグランを整備し、差別化を図りました。あわせて公式サイトも刷新し、SNS広告・Google広告を積極的に投下。

この複数の取り組みにより、売上は前年比220〜300%増を達成し、冬季は月商2,000万円を突破しました。その後、スタッフをオーナー企業へ転籍させ、運営の内製化を実現。委託から直営への移行が、スムーズに行われた好例です。

2. 成功事例:京都市内のバジェットホテル(70室)

駅から遠く、以前のオペレーターは修学旅行団体を中心に運営。しかし単価が低く、食事提供や大浴場運営の効率が悪く、赤字が常態化していました。さらにコロナ禍で運営会社が破綻し、家賃収入がゼロに。

オーナーは大手オペレーターに商談を持ちかけましたが、旧耐震建物である点がネックで断られ続けました。そこで、マーケティング機能を持つ運営受託会社に相談。彼らは訪日個人旅行者向けに業態転換を提案し、条件付きで受託。

この受託会社は3億円のリノベーションを自己負担し、各客室にシャワーブースを新設。大浴場は廃止し倉庫に転用、食堂はボードゲームや漫画を楽しめるラウンジに改装しました。さらにフリードリンクを導入し、若年層をターゲットに再構築。SNS広告海外OTAを積極活用し、集客を立て直しました。さらに、近隣大学生をアルバイト採用して清掃・フロント業務を内製化することで、コストも最適化することが叶いました。こちらも、黒字転換を果たした成功例といえます。

3. 失敗事例:関西の観光都市に建設された小規模ホテル(17室)

2019年に約8億円を投資して建設した新築ホテル。オーナーはマスターリース契約を結び、月額200万円の家賃収入を見込んでいました。しかし運営会社がコロナ禍で経営破綻し、家賃収入はゼロに。

その後オーナーが自社運営に切り替えましたが、実態は月商100万円程度しかなく、賃料水準に遠く及びませんでした。共用スペースが少なく差別化要素に乏しいため、閑散期には1泊4000円という低価格販売を余儀なくされました。

これは、金融機関への返済運営赤字が同時に発生し、出口戦略を失った失敗事例です。このケースでは「利回りを付けて転売すればよい」という安易な計画のまま、見通しが甘い状態でスタートしたことが失敗の原因でした。運営収支を軽視していたため、想定外のリスクが顕在化した典型例と言えます。

4. 事例から学べるポイント

・口コミ改善:点数が3点台前半では集客が難しいため、4.0以上を目指すことが立て直しの第一歩。
・ターゲットの再定義:愛犬家向けや若者層など、具体的な顧客セグメントを絞ることで施設価値を高められる。
・オペレーター選定:大手は小規模案件や旧耐震物件を敬遠しがち。実績や専門性のある中堅会社が現実的。
・マスターリースのリスク:固定賃料保証に依存すると、市況悪化やオペレーター破綻時に打撃が大きい。

ホテル運営委託の事例は「成功すると売上2〜3倍、失敗すると即座に赤字と資金繰り破綻」という両極端な結果を生みます。どちらに転ぶかは、契約条件や運営力だけでなく、施設の商品力(改修・ターゲット設定)集客戦略によって変わるといえます。

ホテル運営委託の今後の展望と注意点

1. 運営委託市場の拡大と変化

ホテル・旅館業界では、人手不足、建築費・人件費の高騰、観光需要の変動といった課題が深刻化しているため、今後はますます運営委託(運営受託・運営代行)のニーズが拡大すると見込まれています。

ただし、単なる「コスト削減型アウトソーシング」から「戦略的パートナーシップ」へと進化しており、委託の在り方は大きく変化しています。

2. MC契約がますます主流に

従来多かったマスターリース方式(オペレーターが家賃を保証し運営)は、建築費の高騰や需要変動のリスクにより成立が難しくなっています。

代わって増えているのが 、先述したオーナーと運営会社が、コスト・利益を分担しながら運営を進めるMC契約(マネジメント・コントラクト) です。

人件費・消耗品費・広告費などはオーナー負担または実費精算する形態のほか、オペレーターは運営ノウハウを提供することで得られた営業利益(GOP)の20〜30%を成果報酬として受け取る”成果報酬組み合わせ型”も増えています。

この形態は、オーナーと運営会社が「同じ船に乗る」関係を築ける点で合理的です。今後、標準的な契約形態となるでしょう。

3. 小規模施設は委託範囲を細かく設計しよう

貸別荘やグランピングなどの小規模施設は、大手オペレーターから敬遠されるケースが多く、近隣の清掃会社や小規模運営会社に部分委託する形が現実的です。

・清掃、鍵管理、予約代行などを分割して外注
・集客はオーナー主導、オペレーションを部分委託するハイブリッド方式
・固定報酬+従量課金の組み合わせが主流

規模が小さいほど、収益構造を見誤ると赤字に直結してしまうため、委託範囲を細かく設計することが肝要です。

4. 中規模ホテル・旅館は段階的委託を

地方都市や観光地にある20〜100室規模の施設は、今後も運営委託ニーズが大きいセグメントです。

・ 口コミ改善・販促強化を通じた立て直し案件
・ リノベーション+ブランド再設計を含めた再生型の委託
・ オーナーが最終的に内製化を目指す“段階的委託”

成功事例でも見たように、まずは委託によって黒字化し、その後オーナーが運営ノウハウを取り戻す流れは今後さらに広がると考えられます。

5. 高級リゾート・外資系案件はブランド・フランチャイズ契約へ

高級ホテルや外資系ブランドを伴う案件では、委託ではなくブランド・フランチャイズ契約の色が強まります。

・ ブランド基準(客室仕様・サービスマニュアル・デザイン要件)が厳格
・ 委託先は開発段階から決定済みで、途中から探す余地はほぼなし
・ オーナーに求められるのはブランドを選び、投資収益を確保する視点

中小規模のオーナーが参入しづらい領域であり、近年は建築費高騰を受けて大手デベロッパーが「新しい宿泊業態モデルを探す」動きが強まっています。

6. 運営委託に依存しすぎない視点も重要

今後の市場では、「丸投げ型」の運営委託は成立しにくくなると予想されます。

理由は以下の通りです。

・運営委託会社は引く手あまたで、条件の悪い案件には応じない
・人手不足により、オペレーター自身が案件を選ぶ立場にある
・商品力のない施設は、委託をしても再建できず、運営受託会社も受けない

したがって、オーナー側も 施設の商品力(客室・動線・体験・食事の魅力)と集客戦略(直販比率・口コミ改善・広告活用) を磨き上げることが前提となります。

まとめ

ホテルの運営委託についてまとめると、以下4つの点をおさえておきましょう。

・ 運営委託市場は今後も拡大するが、質的な選別が進む
・ 主流は MC契約(成果報酬型) に移行
・ 小規模施設は部分委託・近隣型、中規模は再生型、高級はブランド型へと棲み分け
・ 丸投げ依存はリスクが高く、オーナー自身が商品力と集客力を備えることが不可欠

ホテル運営委託は、単なる外注ではなく 「戦略的パートナーシップ」 の時代に入りました。オーナーと運営会社が互いに学び合い、利益を分かち合う体制を築くことが、今後の成功のカギとなります。

Check!ホテル運営委託 適正チェックリスト

実際に運営委託を検討されている方は、以下の適正チェックリストをしてみてください。「はい」が多いほど、運営委託を検討すべきと言えます。

    ■ 判定ガイド

    「はい」が0〜1個:現状は自走可能。ただし部分委託や専門コンサル導入で改善余地あり。
    「はい」が2〜3個:運営委託の検討段階。相見積もりやシミュレーションでリスクを確認。
    「はい」が4〜5個:早期に運営委託先の検討を推奨。現状維持では資金繰りリスクが高まる可能性。

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