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民泊投資のリスクとデメリット|規制強化後に確認したい4つの構造的リスク

民泊をめぐる規制強化のニュースが相次いでいます。新宿区では住宅地での民泊営業を原則禁止する方針が示され、京都市でも立地規制や常駐義務を含む新たなルールが議論されています。大阪市では特区民泊の新規受付が終了しました。

こうした状況を受けて、「今から民泊投資をして大丈夫なのか」「民泊投資にはどんなリスクがあるのか」と考える投資家・事業者の方も増えています。

この記事では、「清掃が大変」「家具が壊れる」といった運営上の話ではなく、民泊を長期の投資・宿泊事業として見たときに、どこに構造的なリスクがあるのかを、宿泊施設を開発・運営する立場から整理します。

※本記事は2026年9月末時点で確認できる観光庁・自治体の公表資料や報道をもとにしています。検討中の制度は今後変わる可能性があります。

民泊市場は伸びている。それでも廃止は多い

観光庁によると、住宅宿泊事業法に基づく累計届出件数は67,932件。そのうち24,895件がすでに廃止され、現存する届出住宅は43,037件です(2026年9月15日時点)。累計に対する廃止の割合は約36.6%になります。廃止には旅館業への転換なども含まれますが、入れ替わりがかなり大きな市場であることは確かです。

一方で需要は伸びています。2026年6〜7月の延べ宿泊者数は約163万人泊で、前年同期比131.2%。日本人の利用も42.5%を占めています。

利用者は増えている。それでも廃止は多く、都市部では規制も強まっている。民泊投資を考えるなら、まずこの少し特殊な市場構造を理解しておく必要があります。規制が強まっている背景は「民泊規制はなぜ強化されている?新宿区の数字で読み解く都市型民泊の転換点」で詳しく解説しています。

リスク1:規制の変更が既存の施設にも及ぶ

不動産投資は通常、10年、20年という時間軸で考えます。その前提となる事業ルールが途中で大きく変わる可能性があることは、投資家にとって重いリスクです。

投資した時点では合法だった。届出もした。設備投資もした。問題なく何年か営業した。それでも条例が変われば、営業日数や運営条件が変わる可能性があります。新宿区では既存施設にも猶予期間を置いて新しい規制を適用する方向が示され、京都市でも既存事業者を含めたルールが議論されています。

さらに民泊は、規制強化に反対する立場の人が事業者本人に偏りやすいという特徴があります。苦情対応の負担を抱える行政、規制を歓迎する近隣住民、競合関係にあるホテル・旅館。社会的な支持を得にくい業態であることは、長期投資では無視しにくい要素です。

実際、弊社グループが管理に関わっていたリゾートマンションでも、大きな問題が起きる前の段階から民泊を禁止する管理規約の改正が議論され、最終的には全棟で民泊を禁止する方向で改定されました。民泊という業態そのものへの警戒から、ルールが先に変わることもあるのです。

リスク2:180日の上限が「再投資できない体質」をつくる

住宅宿泊事業法の民泊は、年間180日までしか営業できません。これは「売上をつくれる日数が少ない」というデメリットとして説明されることが多いのですが、本当に大きな問題は別のところにあります。

固定費を増やして競争力を高めることが難しいという点です。ホテルや旅館は365日の営業を前提に、人材、マーケティング、設備、予約・顧客管理システム、自社予約の仕組みへ継続的に投資できます。一方で営業日数が半分なら、同じ固定費をかけたときの1日あたりの負担はホテルより重くなります。

その結果、無人運営を増やす、広告費を抑える、設備投資を最低限にする、集客をOTAに任せる、という省コスト型の経営になりがちです。短期的には合理的ですが、競合するホテルは365日の売上を元手にその逆を行っています。市場の競争が高度になるほど、この投資の差はじわじわと効いてきます。

Airbnb一本足打法になりやすい

民泊ではAirbnbを中心に集客している事業者が多く見られます。Airbnb自体は非常に強い販売チャネルですが、問題は売上の大部分を一つの販路に頼ることです。販路を分散するには、サイトコントローラーや自社サイト、広告、SNSなどへの投資が必要になります。ところが固定費を増やしにくいので販売への投資もしにくく、結果として一つのOTAへの依存度が高くなる。宿泊商品だけでなく、営業構造そのものが弱くなりやすいのです。

リスク3:低単価の都市型民泊は物価高に弱い

宿泊業では、宿泊単価を確保できるかどうかが利益構造を大きく左右します。人件費、清掃費、リネン、水道光熱費、修繕費など、運営コストは上がり続けています。

低価格を武器にした施設は、コストが上がっても簡単には料金に転嫁できません。価格を上げれば需要が落ち、価格を据え置けば利益率が下がる。特に都市部の低単価民泊は、ホテルとの価格競争をしながら、上昇する運営コストも吸収しなければなりません。

一方で、大人数で泊まれる一棟貸しは事情が違います。一棟8万円でも8人で泊まれば1人あたり1万円。施設側は高い単価を確保しながら、利用者には割安感を出せます。「民泊は儲からない」と一括りにするのではなく、180日の上限を受けながら、低単価で、コスト上昇に弱いモデルが厳しいということです。

「年間数百万円の売上」は宿泊業の物差しでは小さい

民泊の成功事例では、年間数百万円の売上や高い利回りが紹介されることがあります。180日の上限の中では十分な数字なのでしょう。ただ、宿泊業全体の物差しで見ると、ホテル・旅館で1室あたり年間数千万円を売る施設もあれば、グランピングで1棟あたり年間2,000万円前後を売ることも珍しくありません。

民泊投資では「利回り何%」が注目されがちですが、宿泊事業として見るなら、年間いくら売り、いくら粗利をつくり、そこからどれだけ次の投資に回せるのかも重要です。

リスク4:運営会社がいなくなったとき、何が残るか

新宿区の民泊は、法人による届出が81.1%、共同住宅が90.8%、賃借物件が75.9%を占めています(2026年3月31日時点)。都市型民泊は、物件の所有者、投資家、運営会社、管理会社がそれぞれ別というケースが少なくありません。

ここで重要なのが、誰がどのリスクを負っているかです。所有者が不動産を取得し、民泊向けに改装し、運営会社に任せる場合、運営会社は契約内容によっては撤退できます。一方、所有者には物件と改装費、借入が残ります。「プロに運営を任せているから安心」と「投資として安全」は別の話です。

実際に、宿泊需要の強い地域で施設を取得し、運営後に売却するモデルで1件目は大きな利益を出したものの、2件目で運営会社が倒産したという例を聞いたことがあります。施設の月商が約100万円に対し、運営会社が負担していた賃料は約200万円。長く続けられる収支ではありませんでした。運営会社がいなくなった後、新しい運営会社はなかなか見つからず、収益性の低い施設という実績があるため売却も難しい。所有者の手元には、長期の借入と古くなっていく建物が残りました。

「ダメなら賃貸に戻す」だけでは不十分

「うまくいかなければ通常の賃貸に戻せる」という考え方もあります。物件によってはそれで問題ありません。ただし、リノベーションや家具・家電、消防設備、スマートロックなどに投じた資金まで回収できるとは限りません。確認すべきなのは、賃貸に戻せるかどうかだけでなく、民泊のために投じた資金をどこまで回収できるのか、運営会社がいなくなっても不動産単体で価値が残るのかです。

民泊投資の前に確認したいチェックリスト

想定利回りそのものより、その数字を成り立たせている前提条件を確認することが大切です。

☐ 現在の営業日数が続くことを前提にしていないか
☐ 自治体の条例が変わったとき、既存施設にも適用される可能性を検討したか
☐ 人件費や清掃費の上昇をどこまで見込んでいるか
☐ 特定のOTAへの依存度はどの程度か
☐ 運営会社との契約はいつまで続き、規制変更時に解除できる条件になっていないか
☐ 運営会社が撤退したとき、誰が損失を負担するのか
☐ 通常賃貸に戻した場合の家賃、売却価値、旅館業への転換の可能性を確認したか
☐ マンションの場合、管理規約で民泊が禁止される可能性はないか

まとめ ― 民泊投資は「高利回りの不動産」ではなく事業投資

民泊そのものに需要がなくなるとは考えにくく、利用者も増えています。ただし、同じ「民泊」でも事業の強さはかなり違います。高い一棟単価を取れる大人数向けの施設、旅館業への転換余地がある物件、一般賃貸としても価値がある物件、複数の販売チャネルを持つ施設は、住宅宿泊事業だけに頼る低単価モデルとはリスクの質が違います。

民泊投資は、宿泊事業の経営リスク、行政の規制リスク、不動産の資産リスクを同時に負う投資です。だからこそ、「今の条件でいくら儲かるか」だけでなく、次の2つを想定利回りより先に確認することをおすすめします。

● 営業日数が変わっても、コストが上がっても、販売チャネルが変わっても事業を続けられるか
● 運営会社がいなくなった場合でも、物件単体で価値が残るか

民泊に需要があることと、民泊投資が安全であることは別の話です。この区別が、これからますます重要になります。

弊社グループでは、一棟貸しヴィラやグランピング、ホテル・旅館などの宿泊施設の開発・運営に携わっています。民泊からの業態転換や、宿泊事業への投資をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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