一棟貸しヴィラや高級別荘を開発するとき、限られた予算をどこに投じるのかは、事業の成否を大きく左右します。客室数を増やして収益性を高めるのか。設備の豪華さで差別化するのか。それとも、その土地でしか得られない価値に投資するのか。
弊社グループは、河口湖、淡路島、箱根などで、1棟あたり2億〜3億円規模のヴィラ・別荘を開発してきました。この記事では、一棟貸しヴィラや高級別荘の開発を検討している事業者・投資家の皆様に向けて、3つのプロジェクトで何を優先し、何をあえて選ばなかったのかをご紹介します。
共通する考え方:「利益を最大化する建物」より「選ばれ続ける滞在価値」
3つのプロジェクトに共通しているのは、豪華さを競うのではなく、その場所で過ごす時間そのものが旅の目的になることを目指した点です。
宿泊需要の強いエリアには、今後もホテルや宿泊施設が増えていきます。そこで他社と同じような施設をつくっても、いずれ価格競争に巻き込まれます。だからこそ、その土地だからこそ実現できる価値に投資し、何年経っても選ばれ続ける施設にすることを優先しました。
事例1:Residence Villa 河口湖LAGO ― 小さなホテルではなく一棟貸しを選んだ


収益性だけなら、3室の小さなホテルの方が有利だった
河口湖のLAGOを計画したとき、当初は3室ほどの小さなホテルをつくる案もありました。客室数が多い方が収益を上げやすく、運営方法も一般的です。事業性だけを考えれば、1棟に約3億円を投じる一棟貸しはリスクが高いかもしれません。
しかし図面を何度も見返すうちに、「小さなホテルは周辺にもたくさんある。今から同じような施設をつくる意味があるのか」と考えるようになりました。そこで、周辺にない滞在価値をつくるために、一棟貸しのヴィラを選びました。
別荘の設計基準を取り入れる
敷地面積は約1,770㎡、建物面積は約344㎡と、河口湖エリアでも最大級の規模です。ただ、単に大きな建物をつくったわけではありません。軽井沢などの大型別荘を参考にし、大型別荘を分譲している不動産会社の経営者からも話を聞きながら、リビングの広さなどの設計基準を定めました。
● リビングは約90㎡。旅行中に最も長く過ごす場所はリビングだから
● ベッドルーム3室で、複数家族や三世代でもプライバシーを保てる
● 出張シェフを招けるプライベートダイニング
● 富士山を望む2階の書斎(建築効率よりも景色を優先した)
● プライベートサウナ、プール、天然温泉
河口湖の湖畔は自然公園法の特別地域に指定され、建ぺい率やセットバックに規制があります。開放感のある建築を実現するには、一定の広さと、開口部を広く取れる土地の形状が必要でした。土地の条件が、建物の設計の自由度を決めるのです。
事例2:Residence Villa 淡路VISTA ― 「海が見える」より「誰にも見られない」


求めたのは、プライベート性の高い土地
淡路島のVISTAは、総事業費2億円以上のオーシャンビュー別荘です。重視したのは、単に海が見えることではありませんでした。テラスでも、プライベートプールでも、サウナ後の外気浴でも、周囲の視線を気にせず過ごせる場所であることです。
探し続けて出会った土地は、両隣から覗き込まれにくく、道路より一段低い位置にあるため、通行する車からの視線や騒音も感じにくい場所でした。海が見える土地は日本各地にありますが、このプライベート性は簡単には手に入りません。
顧客の声から生まれた「愛犬家向けの最高峰の別荘」

VISTAは、弊社グループの会員制サービス「Grande」の会員様の声をもとに企画しました。会員様と接する中で感じたのが、愛犬家の割合の高さです。「旅行も別荘も、家族である愛犬と一緒に楽しみたい」。そのニーズに応えるため、プライベートドッグランを備え、愛犬と快適に過ごせる設計にしました。
さらに、姉妹施設の「Residence Villa 淡路MARE & ANNEX」と一体で運営し、隣接するレストランも利用できるようにしています。地方では愛犬と一緒に食事ができるレストランがまだ多くありません。宿泊だけでなく食事の時間まで含めて解決することも、この開発の大きなテーマでした。
事例3:Residence Villa 箱根仙石原CALM ― 建物より先に「土地」を選ぶ


別荘の価値は、建物だけでは決まらない
箱根仙石原のCALMは、約1,986㎡(約600坪)の敷地に1棟だけを建てるプロジェクトです。敷地の三方向は自然に囲まれ、周囲からの視線を感じにくく、敷地内にはきれいな沢が流れています。春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季の変化を何度訪れても楽しめる場所です。
どんな景色を眺められるのか、どんな空気が流れているのか。長く利用するほど、その土地の魅力が満足感につながっていきます。だからこそ、建物よりも先に土地を何より大切に考えました。
天候に左右されない設備と、愛犬と食事ができる環境
建物は鉄骨造2階建て、延床面積約363㎡。約6.2mの吹き抜けと、高さ約3.4mの大開口サッシで、室内にいながら森の中にいるような感覚を味わえます。
● 源泉かけ流しの天然温泉
● プライベートサウナと室内温水プール(冬でも天候を気にせず楽しめる)
● 出張シェフを招けるプライベートダイニング
● ワインセラーと書斎
箱根には魅力的なレストランがたくさんありますが、愛犬と一緒に利用できるお店はまだ多くありません。だからこそ、ヴィラの中で食事を楽しめる環境を重視しました。
シェア別荘という仕組みで、高額な別荘を「合理的に」持つ
VISTAとCALMは、1棟を18組のオーナーで共有するシェア別荘として企画しています。2億円を超える別荘を個人で所有すると、利用するのは週末や長期休暇が中心でも、固定資産税や維持管理費、清掃、庭の手入れの負担が続きます。シェア別荘であれば、維持管理は運営会社が担い、オーナーは到着した瞬間から滞在を楽しめます。
目指したのは「価格を抑えた別荘」ではなく、個人では実現しにくいロケーションや設備、デザインを備えた別荘を、合理的な形で持てる選択肢です。シェア別荘を企画・購入する際の考え方は、「シェア別荘は資産になる?「出口」から考える3つの判断基準|値上がり・管理費・共同所有」や「シェア別荘事業に参入する前に|会員制リゾートの破綻事例から学ぶ「売った後」の運営設計」でも解説しています。
3つの事例から見える、開発で優先したいこと

● 収益効率より、周辺にない滞在価値を優先する(LAGO)
● 景色だけでなく、プライベート性や静けさといった「手に入りにくい条件」で土地を選ぶ(VISTA・CALM)
● 法規制や土地の形状が、建物の設計の自由度を決める(LAGO)
● リビングの広さや大開口など、長く過ごす場所に投資する(LAGO・CALM)
● 食事の課題まで含めて設計する(VISTA・CALM)
● 顧客の声から企画する(VISTA)
設備は、豪華さを競うためではなく、「またここへ帰ってきたい」と思える滞在を支えるために選ぶ。設備はいずれ他の施設も追いつきますが、土地の条件と、そこで過ごす時間の設計は簡単にはまねできません。ホテルや別荘のコンセプトづくりについては、「成功するホテルコンセプトの作り方|差別化できる戦略の基本」でも解説しています。
琵琶湖エリアの別荘・貸別荘の市場の変化と土地選びのポイントは「琵琶湖の別荘・貸別荘開発は今が好機?高島市で見えた市場の変化と土地選びの注意点」で解説しています。
まとめ ― 別荘・ヴィラは、完成した瞬間がゴールではない
一棟貸しヴィラや高級別荘の開発では、限られた予算をどこに投じるかが問われます。3つの事例で共通して優先したのは、利益を最大化する建物ではなく、何年経っても選ばれ続ける滞在価値でした。
別荘は、完成した瞬間がゴールではありません。何年先も「ここへ帰ってきたい」と思えることが、本当の価値です。
弊社グループでは、一棟貸しヴィラ、高級別荘、シェア別荘の企画・開発から運営までを自社で手がけています。土地選びやコンセプトづくり、事業計画のご相談は、お気軽にお問い合わせください。













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