ここ数年で、別荘の持ち方は大きく変わってきました。一棟を一人で所有する従来型の別荘だけでなく、複数人で所有するシェア別荘やホテルコンドなど、さまざまな商品が登場し、新たに市場へ参入する事業者も増えています。
弊社グループも「Grande」や「Residence Villa」といったシェア別荘を企画・販売しており、この市場を外から見ている立場ではありません。だからこそお伝えしたいのは、シェア別荘は購入した瞬間に価値が決まる商品ではないということです。建物は長く残り、管理や修繕、売却、相続といった課題が時間とともに出てきます。
この記事では、シェア別荘やリゾート不動産の購入を検討している方、そしてこれから商品を企画・販売する事業者の方に向けて、「出口」から考える判断基準を解説します。
シェア別荘は「何を期待して買うか」で見方が変わる

数千万円、場合によっては数億円する別荘を、複数人で費用を負担して利用する。個人では手の届かないグレードの建物や立地を利用できるという点で、シェア別荘は合理的な仕組みです。別荘は毎日使うものではないため、「年に数日から数十日の利用なら、一棟まるごと所有する必要はない」と考えるのも自然です。
つまり、「シェア別荘は良いのか、悪いのか」という二択で考えても、あまり意味がありません。大切なのは、何を期待して購入するのかです。
「利用するために買う」なら判断しやすい
家族で毎年旅行したい、気に入ったリゾート地へ繰り返し行きたい、ホテルよりも広い空間で過ごしたい。こうした目的であれば、購入価格や年間の維持費と、得られる利用価値を比べて判断できます。
期待が混ざると、確認すべき点が変わる
一方、購入の理由に次のような要素が大きく入ってくると、見方を変える必要があります。
● 将来、値上がりするかもしれない
● 使わない日は貸し出して収入を得られる
● 将来、中古市場で売却できる
● 不動産だから資産として残る
利用価値を買う商品として見るのか、収益商品として見るのか、値上がりを期待する不動産として見るのか。同じシェア別荘でも、目的によって確認すべきポイントは大きく変わります。
「所有権があるから安心」は半分正しい

シェア別荘の説明でよく注目されるのが、「所有権を登記できる」という点です。単なる利用権とは違い、運営事業者に何かあった場合でも、契約内容や所有形態によっては不動産に対する権利そのものが残ります。これは所有権型の商品のメリットです。
ただし、「権利が残ること」と「経済的な価値が残ること」は別の問題です。不動産の所有者になれば、権利と同時に次のような責任も発生します。
● 固定資産税
● 管理費と修繕費
● 建物の老朽化と大規模修繕
● 最終的な処分や相続
リゾート不動産は「売りたいときに売れる」とは限らない
一般的な住宅でも、すべての不動産が希望する価格ですぐに売れるわけではありません。リゾート不動産であれば、なおさらです。建物が古くなれば評価は大きく下がることがあり、築年数が進めば修繕や建て替え、場合によっては解体の費用まで考える必要があります。
その結果、「所有権は残っている。しかし希望する条件では売れない。それでも維持費は発生する」という状態になる可能性があります。これはシェア別荘だけでなく、別荘やリゾートマンションを含むリゾート不動産全般に共通する課題です。
価値を最後に支えるのは「使いたい人」がいるかどうか
リゾート不動産では、「将来値上がりするかもしれない」という話が出てくることがあります。実際に大きく値上がりする物件もあります。しかし、「値上がりする物件」と「値上がりを期待する人が買っている物件」は同じではありません。
本当に強い不動産には「実需」がある
わかりやすいのが、世界的なスキーリゾートにある、ゲレンデへ直接出入りできるスキーイン・スキーアウトの物件です。そうした立地は限られており、人気が出たからといって同じ条件の土地を増やすことはできません。そして世界には「高くても、ここに滞在したい」という人がいます。値上がり期待だけでなく、実際にその場所を使いたいという需要があるため、価格が上がっても買い手がいるのです。
「もっと上がるから買う人」ばかりだと危うい
一方で、リゾート地には、将来の値上がりを見込んで早い段階から不動産を取得する投資家もいます。自分で使うことが目的ではないため、取得後に手を入れずに保有するケースもあります。投資としては当然の行動ですが、こうした投資家は「値上がりしない」と判断すれば買いません。
値上がりを期待する人が次の購入者になり、その人もさらに次の値上がりを期待する。その間は価格が上がるかもしれません。しかし「もう上がらないのではないか」となったとき、最後に残るのは「本当にその物件を使いたい人がいるか」という問題です。
実需の有無で、リゾートマンションの明暗が分かれた
リゾートマンションを見ると、この違いがよくわかります。軽井沢や熱海には、別荘として使いたい、週末を過ごしたい、二拠点生活をしたい、温泉を楽しみたいといった実需があります。一方、越後湯沢ではバブル期にリゾートマンションが大量に供給され、需要に対して供給が大きく上回ったことで価格が下がった例として知られています。
「不動産だから価値が残る」のではなく、「欲しい人がいるから価値が残る」。これが基本です。
管理費と「つくりやすい商品」の将来

安くつくったサウナ付き貸別荘は10年後も選ばれるか
最近は、中古別荘を安く取得してリノベーションし、サウナを付けて、運営の手間を抑えた貸別荘として販売・運用する商品も増えています。サウナには実際に集客効果があり、最初は魅力的に見えます。
しかし、サウナは他の施設も付けられます。周辺にサウナ付き貸別荘が増えれば、それだけで選ばれる理由にはなりません。さらに貸別荘はオフシーズンが課題です。夏は家族やグループで一棟を借りてBBQを楽しむ需要がありますが、オフシーズンは夫婦やカップルなど2人での旅行が増え、食事やサービスがきちんと提供される旅館・ホテルを選ぶ方も多くなります。インバウンド需要も、都市部や富士五湖など一部のエリアを除けば、すべての貸別荘が大きな恩恵を受けられるわけではありません。
「今、貸別荘として売上が出ている」だけでは足りません。10年後、中古になったその建物を、それでも使いたい人がいるのかまで考える必要があります。
高い管理費が、売却の足かせになる
実需が弱い物件ほど重くのしかかるのが管理費です。たとえば中古で5,000万円で売りに出しても買い手がつかず、3,000万円に下げても売れない。こうしたことが起きるのは、新しい購入者が物件価格だけでなく「購入後、毎年いくら払うのか」も見ているからです。
年間の管理費が高ければ、「3,000万円なら安い」ではなく、「3,000万円を払ったうえに、毎年この金額を払い続けるのか」と受け取られます。利用価値が高ければそれでも買う人はいますが、使いたい人が少ない物件で高額な管理費だけが残れば、売りたくても売れず、所有している限り費用がかかり続けます。
だからこそ、購入価格以上に「将来の利用価値と管理費が釣り合っているか」を見る必要があります。
共同所有ならではの「30年後」の問題

時間が経つと、所有者の事情はばらばらになる
シェア別荘には、個人所有の別荘にはない難しさもあります。複数の人が一つの不動産に関わっていることです。購入したばかりの頃は、建物も新しく、所有者全員が施設を使いたいと考えています。しかし10年、20年、30年と時間が経つと、それぞれの事情は変わります。
● 売却したい人と、まだ使い続けたい人
● 大規模修繕をしたい人と、追加費用を負担したくない人
● 所有者が亡くなり、一度も利用したことのない相続人
建物が古くなり、大規模なリニューアルや設備の全面交換、建て替えが必要になったとき、所有者全員が同じ考えとは限りません。新築時の建物を見るだけでなく、30年後、この建物と所有者たちはどうなっているのかを想像することが重要です。
「永久所有」は本当にメリットか
長く所有したい方や、子どもに相続したい方にとって、永久所有は魅力です。一方で、建物も設備も必ず古くなり、旅行者が求める過ごし方も変わります。現在の運営会社が50年後、100年後まで同じサービスを提供している保証もありません。そう考えると、最初から一定期間で終了する商品にも合理性があります。
どちらが正解という話ではありません。大切なのは、購入する時点で「いつまで所有するのか」「最後にどうなるのか」が理解できることです。リゾート不動産では、「永遠に自分のもの」であることが、「いつまでも処分の問題が残る」という意味に変わる可能性もあります。
購入前・商品企画のときに確認したい「出口」のチェックリスト

購入を検討する方はもちろん、商品を企画・販売する事業者にとっても、次の項目は最初に設計しておきたいポイントです。
☐ 値上がりしなくても、この物件を使いたいと思えるか
☐ 10年後、中古になっても「使いたくて買う人」がいる立地・商品か
☐ 将来の利用価値に対して、管理費は妥当な水準か
☐ 長期的に施設を管理するのは誰か
☐ 建物が古くなったとき、誰が修繕を決め、費用をどう負担するのか
☐ 売りたくなったとき、どのような方法があるのか
☐ 相続された場合はどうなるのか
☐ 最終的に、共同所有をどう終わらせるのか
シェア別荘という市場がこれから成熟していくためには、販売時の魅力だけでなく、建物が古くなったとき、所有者の状況が変わったとき、そして手放したくなったときまで考えて商品を設計することが欠かせません。販売後の運営を事業者側からどう設計するかは、「シェア別荘事業に参入する前に|会員制リゾートの破綻事例から学ぶ「売った後」の運営設計」で解説しています。
まとめ ― 夢と投資リターンを混ぜない
シェア別荘は、利用価値で買うなら非常にわかりやすい商品です。「この場所を毎年使いたい」「家族で何年も楽しみたい」「シェアすることで、自分では買えないグレードの別荘を利用したい」。10年、20年と使って家族との思い出ができ、最後に購入価格より安く売ったとしても「十分に楽しんだ」と思えるなら、それで良いはずです。
問題は、「値上がりすると思った」「貸せば儲かると思った」「最後は高く売れると思った」という期待を、利用価値と混ぜてしまうことです。シェア別荘を見るときは、次の3つを確認してください。
● 値上がりしなくても欲しいか
● 10年後、中古になっても本当に使いたい人がいる物件か
● その利用価値に対して、管理費は妥当か
最後に価格を支えるのは、値上がりを期待する人ではなく、その物件を本当に使いたい人です。夢を買うのであれば、その時間にどれだけの価値があるかを見る。投資として買うのであれば、値上がり期待ではなく、その価格を最後に支える実需があるかを見る。この2つを分けて考えるだけで、シェア別荘を見る目は大きく変わります。
弊社グループでは、シェア別荘や一棟貸しヴィラの企画・開発から、販売後の運営までを自社で手がけています。商品設計や事業計画のご相談は、お気軽にお問い合わせください。















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