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シェア別荘事業に参入する前に|会員制リゾートの破綻事例から学ぶ「売った後」の運営設計

最近、不動産会社の皆様から「シェア別荘の事業を始めたいので相談したい」というお問い合わせをいただく機会が増えています。お話を伺うと、かなりの確率で出てくるのが次のような計画です。

「販売は自社で行い、運営は他社に委託したい」

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、シェア別荘で本当に難しいのは、売ることよりも売った後です。

この記事では、これからシェア別荘事業への参入を検討している不動産会社・開発会社の皆様に向けて、販売後の運営で何が起きるのか、過去の会員制リゾートの破綻事例から何を学べるのか、そして長く続く事業にするための条件を解説します。

シェア別荘は「売った後」に何十年も仕事が続く

不動産会社が得意とするのは、土地を仕入れ、建物を企画し、商品として販売することです。シェア別荘も、販売するところまでは不動産事業に近いと言えます。

ところが、売った瞬間から、まったく違う仕事が始まります。

● 予約管理
● 清掃と顧客対応
● 建物管理と設備の修繕
● オーナーが使わない日を宿泊施設として販売するなら、その集客
● 5年、10年と経ったときの設備更新

設備が古くなったとき、誰がお金を出して更新するのか。建物をどうやって魅力的な状態に保つのか。ここまで考えて、初めてシェア別荘という商品は成立します。

運営を専門会社に任せること自体は問題ありません。問題は、運営を「販売後の付属業務」くらいに考えてしまうことです。運営委託の基本的な考え方や費用相場は、「オーナー必見チェックリスト付|ホテル運営委託のメリット・デメリットと費用相場」でも解説しています。

一つの施設から、全員が利益を得る余白はあるか

特に今は、建築費が大きく上がっています。土地を仕入れ、高くなった建築費を払い、そこに開発利益と販売利益を乗せ、その価格で小口化して販売する。

しかし、それで終わりではありません。一つの施設から、次のすべてを生み出す必要があります。

● 開発会社の利益
● 販売会社の利益
● 購入者にとっての利用価値(収益型の商品なら分配も)
● 運営会社の利益
● 将来の修繕・再投資の資金

本当に、全員が利益を得られるだけの余白があるのか。シェア別荘を事業として考えるなら、まずここを数字で検証する必要があります。「最近シェア別荘が売れているから、自社でもやってみよう」という理由だけで進めるのは危険です。

販売会社と運営会社では目的が違う

販売と運営を別の会社が担う場合、それぞれが求めるものが違うという難しさもあります。

販売会社はできるだけ高く売りたい。購入者は価格に見合う価値を得たい。運営会社は適正な運営報酬を確保したい。そして建物には、将来の修繕費が必要です。

販売時に利益を取りすぎれば、その後の運営に余裕がなくなります。運営費を削ればサービスの質が落ち、管理費を上げればオーナーの負担が増え、修繕を先送りすれば施設そのものが古くなります。どこかに無理を押しつけても、長くは続きません。

「使わない日はホテルとして貸す」も簡単ではない

もう一つよく伺うのが、「オーナーが使わない日はホテルとして貸せば収益になる」という考え方です。理屈としてはその通りですが、実際に収益を出せるかどうかは別の問題です。

宿泊施設は、建物をつくって予約サイトに載せればお客様が来る商売ではありません。集客し、価格を調整し、清掃し、口コミを積み上げ、競合を見ながら商品を改善する。これを毎日続ける必要があります。

特に貸別荘は供給が増えています。サウナやプール、BBQといった設備も、競合が同じ投資をすれば差は縮まります。販売時に魅力的に見える商品をつくることと、10年後も宿泊客から選ばれる施設をつくることは、同じではありません。

過去の会員制リゾートの破綻事例に共通する3つの問題

現在のシェア別荘と、かつてのリゾート会員権は、商品設計も所有形態も異なります。過去の事例をそのまま当てはめることはできません。一方で、「施設を販売し、その後長期間にわたって維持・運営していく」という点では、参考になる部分があります。

1. 新規販売に頼らないと既存施設を維持できない

会員制リゾートクラブ「四季の旅」を運営していたパルアクティブは、多くの会員を集めたものの、会員権の販売減少や施設利用客の減少などが重なり、2008年に民事再生法の適用を申請。その後、2011年に破産しています。

ここから見えるのは、新しい会員を獲得し続けなければ、既存施設を維持できない構造の危うさです。販売が好調な時期は、販売収入が次々と入ってくるため問題が表面化しにくくなります。しかし市場には限りがあり、広告費を増やしても販売が伸びなくなる時期は必ず来ます。そのとき本業の施設運営が黒字でなければ、一気に資金繰りが苦しくなります。

2. 販売が止まると固定費を払えない

全国に施設を持ち、約1万5,000人の会員を抱えていたサンダンス・リゾートは、会員権販売の低迷や東日本大震災の影響などで資金繰りが悪化し、2014年6月に民事再生法の適用を申請。同年10月に破産手続きが開始されました。

ここで問われるのは、「販売が止まっても、施設の運営だけで生き残れるのか」という点です。仮に明日から新規販売をすべてやめたとしても、既存施設の運営収入だけで事業を続けられるのか。何十年もの保有を前提とする商品であれば、この視点は欠かせません。

3. 預託金は「未来の借金」でもある

ホテルグリーンプラザなどを運営していたエメラルドグリーンクラブは、会員の減少に加え、預託金の返還が課題となり、2019年1月に民事再生法の適用を申請しました。

かつてのリゾート会員権やゴルフ会員権では、購入者からまとまった資金を預かり、一定期間後に返還する「預託金方式」が広く使われていました。入口では資金を集めやすい方法ですが、預かったお金は売上ではなく、将来返さなければならない負債です。新規販売が減り、返還時期を迎えると、資金は外へ出ていきます。そこに運営の赤字や建物の老朽化が重なれば、資金繰りは急速に厳しくなります。

今のシェア別荘は、昔の会員権と何が違うのか

返還義務がなくても「リスクの所在」が変わっただけ

現在の共同所有型の商品には、購入代金の返還を前提としないものも多くあります。そのため、「昔の会員権が破綻したから、今のシェア別荘も危険だ」と単純に結論づけることはできません。事業者側から見れば、返還義務を抱えないことで財務的に安定しやすくなった面もあります。

ただし、「事業者が破綻しにくい商品設計」と「購入者が長く安心できる商品」は同じではありません。持分を販売すれば、事業者は販売時に利益を確定できます。一方で購入者には、管理費、修繕費、中古価格、宿泊収益、相続、売却などの課題がその後も残ります。リスクがなくなったのではなく、リスクの所在が変わったと考える方が実態に近いでしょう。

「安く泊まれる」は長く続けられるか

過去の会員制リゾートでは、「会員になれば安く泊まれる」こと自体が大きな商品価値でした。しかし運営する側から見ると、人件費も光熱費も食材費も上がり、建物は年数とともに修繕が必要になります。利用料金だけを何十年も安く据え置けば、どこかに無理が生じます。

大切なのは「安いかどうか」ではなく、「その価格で持続的に運営できるか」です。

一番怖いのは、古くなった施設を改装できないこと

宿泊施設では、建物の寿命だけでなく「商品としての鮮度」も重要です。開業時には最新だった客室も、10年経てば普通になり、20年経てば古く見えてきます。その間にも、新しいホテルやヴィラが次々と開業します。過去の破綻事例を見ると、次のような負の循環が見えてきます。

● 運営が赤字になる
● 資金繰りが悪化する
● 施設への再投資ができない
● 商品力が落ち、売上が下がる
● さらに資金が足りなくなる

完成したばかりの施設を見るのは簡単です。本当に考えるべきなのは、「15年後、20年後に、この施設を誰のお金で改装するのか」です。

長く続くシェア別荘事業にするためのチェックリスト

ここまでの内容を、事業計画の段階で確認しておきたい項目にまとめました。

☐ 新規販売をやめても、既存施設の宿泊収入・管理収入で人件費や修繕費をまかなえるか
☐ 販売会社・運営会社・購入者・将来の修繕費の取り分を、数字で検証したか
☐ 運営会社がきちんと利益を出せる報酬設計になっているか
☐ 利用料金は、コスト上昇を見込んでも持続できる水準か
☐ 将来の修繕・大規模改装の資金をどう確保し、誰が判断するのか決めているか
☐ オーナーが使わない日の宿泊販売を担う集客力・運営力があるか
☐ 10年後も選ばれ続けるための商品改善の仕組みがあるか

すべてに自信を持って答えられれば、かなり強い事業モデルと言えます。逆に、新規販売の利益で既存施設の不足分を補う構造になっている場合は、販売が止まったときに問題が表面化する可能性があります。

まとめ ― シェア別荘は「売った後」まで設計する事業

シェア別荘は、不動産を小口化して売れば完成する商品ではありません。

● 販売後も、予約管理・清掃・修繕・集客が何十年も続く
● 一つの施設から、関係者全員の利益と将来の修繕費を生み出せるかを数字で検証する
● 過去の会員制リゾートの破綻は「新規販売への依存」「運営の赤字」「再投資できない」が共通点
● 返還義務のない商品でも、リスクの所在が購入者側に移っただけと考える
● 「売らなくても回るか」が、事業の強さを測る物差しになる

販売会社にとっては、売れた日が一つのゴールかもしれません。しかし購入者にとっては、その日から利用が始まります。シェア別荘は、売った瞬間より、売った後の10年、20年の方が長い。そこまで責任を持って設計できるかどうかが、最終的な事業の差になります。

弊社グループでは、箱根や淡路島などでシェア別荘を開発し、販売後の運営も自社で行っています。シェア別荘事業への参入や、販売後の運営設計についてご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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