「サウナを導入したら、売上は伸びますか?」
ヴィラやコテージ、貸別荘を運営されているオーナー様から、よくいただくご質問です。サウナメーカーや施工会社の導入事例は多くありますが、導入後に予約や売上がどう変わったのかを数字で示した事例は、意外と多くありません。
この記事では、弊社グループが京都・天橋立エリアで運営する一棟貸しの「オーベルジュヴィラ久遠(AUBERGE VILLA KUON)」を例に、サウナ導入前後の売上データと、売上を伸ばすために実際に見直したことをご紹介します。これからサウナ導入を検討しているヴィラ・コテージ・ホテルの事業者様の参考になれば幸いです。
オーベルジュヴィラ久遠とは

オーベルジュヴィラ久遠は、宮津湾を望む一棟貸しのオーベルジュヴィラです。一般的な貸別荘とは異なり、料理人がヴィラ内で料理を仕上げる「美食」をコンセプトにしています。
● 日本海を望む2種の客室温泉(金温泉・銀温泉)
● 夏季に利用できるプライベートプール
● 料理人付きディナー(実施日限定)が楽しめるオーシャンビューのダイニング
● 2026年に新設した2種のサウナ(サーモウッドの香りに包まれる「SAUNA OCEAN VIVA」と、銀温泉の蒸気を使うスチームサウナ)
設備だけを見れば、十分に魅力のある施設です。それでも、サウナ導入前の売上は伸び悩んでいました。
結果:サウナ導入後の売上推移【前年同月比】
まずは結果からご覧ください。サウナを導入した2026年4月以降の月別売上を、前年の同じ月と比べたものです。
| 月 | 2025年 | 2026年 | 前年同月比 | 主なできごと |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 576,900円 | 469,885円 | 81.4% | サウナ導入 |
| 5月 | 466,065円 | 1,271,500円 | 272.8% | Instagram広告を開始(5/10〜) |
| 6月 | 255,200円 | 1,098,391円 | 430.4% | 4名まで同一料金を開始 |
| 7月 | 1,374,100円 | 3,754,756円 | 273.3% | |
| 8月 | 2,438,237円 | 3,623,700円 | 148.6% | もともと売上の高い月 |
| 9月 | 868,380円 | 1,499,300円 | 172.7% | |
| 10月 | 353,142円 | 1,826,010円 | 517.1% |
サウナを導入した4月は前年を下回りましたが、5月以降は前年の1.5〜5倍ほどで推移しています。特に、閑散期にあたる6月や10月の伸びが大きいことがわかります。
ただし、最初にお伝えしておきたいことがあります。この伸び率は、もともとの売上が低かったからこそ大きく見えている部分もあります。また、売上が伸びた理由はサウナだけではありません。振り返ると、サウナ導入をきっかけに施設全体を見直したことが一番大きかったと感じています。
なぜ久遠に「てこ入れ」が必要だったのか

オーシャンフロント、2種の天然温泉、プライベートプール、料理人が目の前で仕上げる料理。弊社自身も「これなら売れる」と考えていました。ところが、現実はそう簡単ではありませんでした。
● 料理人の手配ができない日は、販売を止めてしまう
● 予約を取りにいくより、目の前の運営を回すことが優先になる
● いつの間にか、自社で販売するシェア別荘会員権の体験宿泊での利用が中心になっていた
施設が悪いのではなく、運営と販売の体制が施設の魅力に追いついていなかったのです。そこで2026年1月、施設全体を見直す中で、サウナの導入を決めました。
サウナ導入でつまずいたこと

導入を決めた当初は、「どのサウナを選ぶか」が一番大事だと考えていました。ところが実際には、機種選び以外のところに多くのハードルがありました。
設置場所の重さと補強
最初に問題になったのが設置場所です。サウナは見た目以上に重量があり、設置場所によっては補強工事が必要になります。特にウッドデッキの上に設置する場合は注意が必要です。
電気工事
次は電気工事でした。電源の容量を上げれば終わりではなく、配線やブレーカーまで考える必要があります。サウナを理解している電気工事会社かどうかで、話の進み方がかなり変わることを実感しました。
開業後のオペレーションづくり
完成してからも終わりではありません。ロウリュのご案内、チェックイン時の説明、清掃方法、メンテナンスなど、宿泊施設として安全に運営するためのオペレーションを一つずつつくる必要がありました。
弊社の場合はグループ内に建築会社があり、建築や設備に詳しいスタッフに相談しながら進めることができました。この体制がなければ、もっと遠回りしていたと思います。導入前に確認しておきたい設備面のポイントは、「ホテル・ヴィラのサウナ導入で後悔しない設備選び|見落としがちな20のチェックポイント」にまとめています。
売上を伸ばしたのは「サウナ+見せ方・料金・サービス」の見直し
サウナを導入して気づいたのは、サウナは「つくる」ことより「どう見せるか」が大事だということです。サウナの完成に合わせて、次のような見直しを行いました。
夜の写真を撮り直す

特に意識したのは写真、なかでも夜の写真です。昼間の写真ももちろんきれいですが、サウナは夜になるとまったく違う表情になります。照明の当たり方や外気浴スペースの雰囲気で、「泊まってみたい」と感じていただけるかどうかが変わります。
Instagram広告とプレスリリース
5月からはInstagram広告を配信し、写真によって反応が大きく変わることを実感しました。サウナ導入に合わせてプレスリリースも配信し、写真を見直した結果、Yahoo!ニュースやdmenuニュース、VAGUE、CINDERELLA FITなどのメディアで取り上げていただく機会も増えました。
サウナは設備であると同時に、施設を知っていただくきっかけにもなります。
4名まで同一料金に
料金体系も見直しました。6月からは、4名まで同一料金としています。久遠には2つのベッドルームがあり、一棟貸しという特性を考えると、4名で利用しやすい料金の方が施設の価値を伝えやすいと考えたためです。
サウナに合わせた小さなサービス

サウナ体験をより楽しんでいただくために、細かなサービスも整えました。
● サウナ後のアイスクリームの無料サービス
● 冷蔵庫の中身をサウナに合わせて刷新
● サウナハットとサウナ着の貸し出し
● ハーブティーの無料サービス
● デトックスウォーターとほうじ茶(ほうじ茶はロウリュにも活用)
OTAを使わず、自社集客で検証
久遠は、OTAを利用せず、自社集客だけで運営しています。料理人付きのオーベルジュという少し特殊な施設だからこそ、自分たちの力でブランドを育て、どこまで集客できるのかを検証したいと考えました。広告も、写真も、プレスリリースも、すべて自分たちで試しながら改善を続けています。
サウナ付きの宿が予約につながる5つの理由

久遠をはじめ、複数の施設にサウナを導入するなかで、サウナが予約につながる理由も見えてきました。
1. 比較されたときに選ばれる理由になる
宿は、ほとんどの場合、料金や広さ、食事、温泉、景色、立地などを比較して選ばれます。そこに「サウナあり」という条件が一つ加わると、普段はサウナを目的に旅行しない方でも、「同じ条件ならあった方がいい」と考えます。
サウナ好きの方だけをターゲットにするのではなく、比較されたときに選ばれる理由を一つ増やす。これが、サウナ導入の最も大きな価値だと考えています。
2. 冬の落ち込みを和らげる
夏や連休は予約が動いても、寒い時期の平日は空室が増えがちです。サウナがあれば冬が埋まる、というほど単純ではありませんが、「寒いから出かけない」に対して「寒いからサウナに入りたい」という理由をつくれます。この違いは意外と大きいものです。
3. 単価を上げるより、単価を守る
予約が弱いと、どうしても値下げの方向に流れがちです。値下げを続けると、理想の価格帯に戻すことは少しずつ難しくなります。サウナは、値下げをしなくても比較の候補に残る理由になります。ADRを上げる前に、ADRを守る。この役割も大きいと考えています。
4. AI検索で探される条件が増える
最近は、AIで宿を探す方も増えてきました。「千葉で温泉があって、食事がおいしくて、サウナのある宿」といった探し方です。温泉、愛犬同伴、オーシャンビュー、部屋食などと同じように、サウナがあることでAIが候補を選ぶ条件が一つ増えます。
5. 「泊まって何をするの?」に答えやすい
オフシーズンの宿では、「泊まって何をするの?」という声が出てきます。観光を終えて夕方に戻ったとき、雨で外に出にくいとき、朝に同行者が起きるまでの時間。サウナは3セット入ればおよそ2時間、夜でも朝でも楽しめて、天気にも左右されにくい設備です。その宿でどう過ごすかを、予約前からイメージしやすいのも強みです。
まとめ ― サウナは「施設全体を見直すきっかけ」になる
オーベルジュヴィラ久遠では、サウナ導入後の売上が前年同月比で1.5〜5倍ほどに伸びています。ただし、その理由はサウナを設置したことだけではありません。
● 設置場所の補強や電気工事、開業後のオペレーションまで含めて準備した
● 夜の写真を撮り直し、Instagram広告やプレスリリースで見せ方を変えた
● 4名まで同一料金にするなど、料金体系を見直した
● サウナ体験に合わせて、小さなサービスを整えた
サウナは、比較で選ばれる理由をつくり、冬の集客や単価を支え、AI検索での見つかりやすさも高めてくれる設備です。そして何より、施設全体の価値を見直すきっかけになります。
弊社はサウナメーカーではなく、宿泊施設を運営している会社です。だからこそ、「どのサウナを入れるか」だけでなく、「どうすれば宿泊施設の商品価値を高められるか」という視点でご相談を承っています。サウナ導入や、導入後の集客・運営改善をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
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